Interview & Report

Joga Naoto / Tamaki Hiroto

Joga Naoto / Tamaki Hiroto 城賀 直人 / 玉置 博人

et momonakia

et momonakiaは、LANVINにてアルベールエルバスに師事した城賀と、BALENCIAGAでコレクションチームアシスタントの経験を持つ玉置によって、2008-09年秋冬よりスタート。コンセプトは「遊び」と「エレガンス」の境界線。

Brand詳細を見る

先シーズンのファッション・ウィーク期間中に、ランウェイショーのバックステージをテーマにしたインスタレーションを発表し、注目を集めたet momonakia(エモモナキア)。
ともにフランスの一流ブランドでアシスタント経験を持つデザイナーの城賀直人、玉置博人両氏が創り出す、確かなセンスと技術に裏打ちされたドレススタイルに、独特の遊び心が加えられたコレクションは、幅広い層の女性から支持を集めている。2013年春夏シーズンのファッション・ウィークでは、メルセデス・ベンツ プレゼンツ デザイナーに選出され、ますます注目を集めている彼らに話を伺った。

今回、メルセデス・ベンツ プレゼンツ デザイナーに選ばれましたが、まずは率直な感想を聞かせてください。

玉置:選んで頂いて光栄です。見てくれる人はこれまでよりも多くなるだろうし、やりがいがありますね。前回のプレゼンテーションを評価して頂けた結果だと思っているし、今回はさらなるステップアップの機会になるので、うれしいです。

城賀:うちにとっては、こういう機会に外部の人たちと大きく何かをやるというのは初めての試みになるので、うまく協力しながら良い世界観を作っていきたいなと思っています。

コレクションはどんな内容になりそうですか?

玉置:作る洋服自体はこれまでと変えるつもりはなく、見せ方の部分で、会場となるメルセデス・ベンツ コネクションの空間を使って、何か良いプレゼンテーションをしたいなと考えているところです。

先シーズンは、ランウェイショーのバックステージをテーマにしたインスタレーションでしたが、今回もランウェイショーはしないのですね。

城賀:今、自分たちがランウェイショーをするとしても、中途半端なものしかできないので、まだやらなくていいのかなと思っています。

玉置:前回、バックステージをテーマにして、「将来、ランウェイショーをやりたいんです!」というメッセージを発信したばかりで、今回いきなりショーをしてしまったら、ちょっと早すぎませんか(笑)? やるからには、ブランドとしてもっと経験を積んで、すべてがしっかりしてからやりたいですからね。

et momonakia 2012-13 A/W collection

毎シーズンのコレクションは、どのように考えているのですか?

玉置:いつも最初に、丸を紙にたくさん書いて、そこに穴埋め式に言葉を当てはめていくんです。

城賀:例えば、「コート×3」とか、「ワンピース×2」といった感じで、各アイテムの数を最初に書いていきます。そうやって全体の見え方を確認しながら、必要なものを足したり、不要なものを削ったりして、ひとつのコレクションを作っていくんです。

玉置:最初に理屈っぽいコンセプトやテーマを決めることはしたくないんです。毎回、(山口)百恵ちゃんか(中森)明菜ちゃんの曲名をテーマにしているので、そこになんとなく合わせていくという程度ですね。

城賀:そのテーマは後付けになることもあるし、インパクトの強い曲名の時はそれを元にモチーフを考えていくこともありますが、うちのアイテムはドレスがメインなので、テーマやスタイリング云々ということではなく、単体で成立するものが多いんですね。だから、特定の女性に似合う服ではなく、各アイテムに対して似合う女性像というのがそれぞれ異なると思います。

今、お話に出た山口百恵さん、中森明菜さんの名前が、ブランド名の由来になっているんですよね。

玉置:もともと城賀が大好きだったんですよ。どちらかと言うと僕は、親を通して間接的に明菜ちゃんの曲を聴いていて、それが入り口ですね。

城賀:明菜ちゃんは小学校の頃からリアルタイムで見ていて、ステージ衣装が好きだったんです。80年代の王道アイドルの衣装ですね。でも、90年代後半にパフィーなどが出てきた頃から、女性アーティストはカジュアルであるべきという風潮が強まって、ステージ衣装が徐々に少なくなってきてしまって…。ただ、最近はAKB48などに火がついて、徐々に80年代アイドル全盛期に近いステージ衣装を見る機会が増えてきたので、久しぶりに楽しくなってきたなと(笑)。

玉置:そうしたステージ衣装や一点物の衣装のエッセンスを取り入れているのが、うちのブランドの特徴だと思います。

ブランド設立当初は、どんなヴィジョンを持っていましたか?

城賀:日本で最初のラグジュアリーブランドをやれたらいいなという、今考えたら甘い考えで始めたんです(笑)。海外には、プラダやディオール、ランバンなど色々あるけれど、日本には若者に人気のあるブランドはたくさんあっても、おしゃれな大人が着るようなラグジュアリーブランドがないですよね。そういうものを作りたいなという思いがありました。

玉置:別にカジュアルが嫌いというわけではないんですけど、日本にはそういうものが飽和していると感じていたんです。例えば、365日のうちの大半はジーンズを穿いていてもいいと思います。ただ、もう少しワンピースやドレスを着る日を増やしてくれてもいいかなと。日本でドレスと言うと、結婚式の二次会くらいにしか着ていけないものというイメージが植え付けられていますよね。でも、うちではサテンのドレスだけを作っているわけではなく、デイリーに着ていけるものも作っているし、そういう洋服を着る機会がもっと増えてもいいんじゃないかなと思っているんです。

日本人のファッションスタイルを変えていきたいという意識もあるのですか?

城賀:そんな大それたことを思っているわけではないんです。洋服だから、やっぱり単純に自分たちが素敵だなと思えるものを作っていきたいし、要はそれを受け入れてもらえるかどうかということなんだと思っています。何を選ぶかはお客さんの自由ですからね。その中で僕らも何かしらの提案はしますし、うちの服を着てくれたらキレイになると思って作ってはいますが、それを強要することはしたくない。コンセプトを決めないということも同じで、哲学や文学ならわかるけど、洋服のコンセプトを着る人に押し付けるというのは、自分たちにとってはちょっと違うかなと。

玉置:そういうアプローチもひとつのブランドのあり方だとは思いますが、自分たちとしては、とにかく女性に一目惚れしてもらえる洋服を作っていきたいんです。そこをお互いに共有しているので、普段は本当に洋服の話は一切しないのですが、それでもこうして続けられているんだろうと思います。

城賀:最近はキレイになるための服ではなく、自分の体型を覆い隠すような洋服を着る人も多いじゃないですか。でも、すべてがカジュアルじゃなくてもいいと思うし、遊びにしても仕事にしても、うちの服を着てキレイになって、楽しんでもらいたいなという思いが強いですね。

「遊びとエレガンスの境界線」というテーマも掲げていますね。

城賀:これはコンセプトとかではないのですが、常にブランドの指針になっているテーマです。「エレガンス」だけだと年齢層が高くなりすぎてしまうし、「遊び」だけだと今度は若い子ばかりになると思うので、ちょうどその中間を狙って、どんな人でも着られる服作りをしていきたいと思っています。

玉置:そのバランスを考えながら作っていくのは楽しいですし、遊び心というのは気軽に付け加えていけるものですからね。たまにやりすぎてしまうこともあるのですが、それも僕ららしくていいかなと思っています。シーズン毎に明確なテーマを決めるわけでもなく、「遊びとエレガンスの境界線」ということを常に重視して作っているだけなんですが、その時々の気分が入ってきて、毎回違うものになっているところがありますね。

トレンドなどを意識することはあまりないのですか?

玉置:意識しないですね。今年の流行色とかそういうことも全然知らないし、他のブランドが作っている洋服とかも見ないですね。

城賀:シャネルとか自分たちの好きなブランドは見るけど、それもあくまでもファンとして見ているだけですね(笑)。今、着られる洋服は、10年後でも10年前でも着られると思って作っています。

エモモナキアと競合する東京のブランドというのはあまり思い当たりませんし、京都を活動拠点にしていることも含め、独自の道を進んでいる感じがありますね。

玉置:競合、ないですよね(笑)。カジュアルでカワイイものというのが、いわゆる東京ブランドの一般的なイメージとしてあったと思うんですけど、その括りに入れられたり、イメージに引っ張られてしまうのがイヤだったというのはありますね。

城賀:東京にはヤングシーンというイメージが強かったけど、自分たちはもっと大人っぽいイメージでいきたかったんです。

玉置:とはいえ、東京にいないことのデメリットもたくさんあります。例えば、うちはまだブランド単体でやっていくのは厳しいところもあるので、外部との仕事もしながら、それをブランドに還元していくという形を取る必要があると思っているんですが、やっぱりそれをやりやすいのは東京なんですよね。

城賀:大阪でもそういう機会がないことはないんですけど、基本僕らがあまり動かなくて…(笑)。

玉置:だからこそ、メルセデス・ベンツ プレゼンツ デザイナーとしてのプレゼンテーションを多くの人に見て頂き、声をかけてくれるところがあったらいいなと。そういう期待も含め、今回はとても良いきっかけを頂けたと思っています。まずは、日本でもう少し土台を築いていきたいですからね。

城賀:日本でもっと人気が出たら海外、特に中国や台湾などにも展開していけたらいいかなと思っています。

INTERVIEW by Yuki Harada

Go to Top