Interview & Report

有働 幸司 Koji Udo

有働 幸司 Koji Udo 「FACTOTUM(ファクトタム)」デザイナー

TOKYO FASHION AWARD 2015 受賞デザイナー

1971年生まれ。東京モード学園卒業後、(株)BEAMS 入社。退社後、ロンドンに留学し帰国後、国内ブランドの立ち上げに参加。その後、独立しFACTOTUMをスタートさせる。

2004年のブランド設立以来、モードとリアルクローズを融合させたコレクションを展開し、東京を代表するメンズブランドとして高い評価を得てきた FACTOTUM(ファクトタム)。 2014年には、TOKYO FASHION AWARD(以下、TFA)受賞デザイナーに選出され、2シーズンにわたってパリで作品を発表するなど、海外進出に向けて本格的に始動したファクトタムのデザイナー、有働幸司にインタビューを行った。

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パリで行われたshowroom.tokyoの様子
上2枚:2015年1月/下2枚:2015年6月

TFAを受賞し、2シーズンにわたってパリのショールームでコレクションを発表されましたが、今回TFAに応募しようと考えた理由を教えて下さい。

ブランドとしては、5年ほど前に単独でニューヨークのショールームと合同展に初めて参加しましたが、そこではいくつかの取引先が決まり、海外進出に向け、順調な滑り出しができたかのように思えました。ただ、自分たちが勉強不足だったこともあり、継続的にビジネスを展開していくことができず、その後しばらくは、改めて日本をベースにコレクションを発表するようになりました。その間も、海外進出への思いは持ち続けていて、今回のTFAに応募することにしました。

 

海外での発表にあたり、クリエーション面でこれまでと変えた部分はありましたか。

日本らしい技術である染めや刺繍などを取り入れたアイテムを意識的に展開しました。海外で発表するからと言って、シンプルでベーシックなリアルクローズというブランドのベースを変えるつもりはなかったのですが、よりインパクトが強いアイテムが必要だというアドバイスを受け、自分たちなりのアプローチでそれを表現しました。

 

先日発表された2016 S/Sコレクションのテーマを教えて下さい。

今回は、屋久島の詩人・山尾三省さんにインスパイアされたコレクションを発表しました。実際に屋久島と奄美大島に足を運び、山尾さんにゆかりのある場所を周り、そこで自分が感じたことや、現地の絞り染めの技法などをコレクションに落とし込みました。

 

ファクトタムにとって、旅は重要なインスピレーションソースになっているようですね。

はい。自分が興味を持った作家や作品に関わる場所に足を運び、そこで体感したものをクリエーションに反映させるというのが、ファクトタムの服づくりのスタイルになっています。旅にインスパイアされた服づくりをしているデザイナーは他にもたくさんいますが、自分の場合はそれを直接的に表現するのではなく、あくまでも裏テーマとして反映させることが多いです。それゆえに理解されにくい場合もありますが、後からジワッと伝わっていく方が個人的には好きなので、そういうアプローチは大切にしつつ、先ほどお話したように海外の人にも理解されやすいインパクトという部分とのバランスを図っていきたいと考えています。

ファクトタムでは、一貫してデニムという素材を大切にされてきていますが、どんなところに魅力を感じているのでしょうか。

デニムは、究極の日常着だと捉えています。どんな素材、アイテムにも合うデニムは、ある種の余白を持った素材だと言え、提案次第でどんどん表情が変わっていくところに可能性を感じています。デニムという限定された枠組みの中で、自分なりの表現を追求していくことにもやり甲斐を感じますし、常に新しい素材や加工、シルエットを取り入れるなど、すぐには気づかれにくい細かい部分にも非常にこだわっています。高校の頃から洋服が好きで、リーバイスのジーンズにヘインズのTシャツ、コンバースのスニーカーというスタイルから入っている自分にとって、デニムは象徴的なアイテムなんです。

FACTOTUM 2015-16 A/Wコレクション

有働さんはセレクトショップのビームスのスタッフとして働かれていたそうですが、そこからファクトタム設立までにはどんな経緯があったのですか。

もともとビームスのカジュアルセクションで販売員をしていて、その後ロンドンに留学をしました。その当時は、もう洋服の仕事は辞めようと考えていたのですが、海外に出て、ひとりで色々なことを考える時間が増えた時に、やはりファッションの仕事がしたいと強く感じ、ビームスに戻ってテーラードのセクションで接客を担当するようになりました。その頃はまだデザイナーになるつもりはなかったのですが、その後、専門学校時代の友人と原宿に「ラウンジリザード」というショップをつくることになり、オリジナルラインのデザインをするようになりました。そこで得たノウハウを活かして立ち上げたのがファクトタムです。

ファクトタムの洋服をどんな人たちに届けたいと考えていますか。

自分のスタイルを持っている方たちに着ていただけるとうれしいですね。もともと自分のスタイルのベースにデニムがあるからか、ファクトタムの洋服をトータルでコーディネートしてほしいという意識はあまりなく、デニムに合わせるようなイメージで、シャツなりカットソーなりをアイテムごとにピックアップしていただき、自分のスタイルに取り入れてもらえればと思っています。

ブランドとしての今後の展望を教えて下さい。

ブランド設立からすでに10年が経ち、定番アイテムを求められるブランドスタート時からのお客さまと、インパクトの強いアイテムを好まれる若いお客さまに分かれてきている印象があります。その中で昨年、ブランドが築き上げてきた定番のシャツやジャケット、スラックスなどトラッドなアイテムをベースにした「ヴァリス バイ ファクトタム」を立ち上げました。一方で、ファクトタムの方は、毎シーズンのテーマにもとづき、新しい素材やパターンを提案していく意識をより強めて、海外にも積極的に展開していければと考えています。

 

 

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

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