Interview & Report

山根 敏史/山根 麻美 Satoshi Yamane / Asami Yamane

山根 敏史/山根 麻美 Satoshi Yamane / Asami Yamane F/CE.®(エフシーイー)

TOKYO FASHION AWARD 2018受賞デザイナー

山根 敏史:1975年 愛知県生まれ
1997-2003 メンズビギのデザイナーを務める
2003-2007 クロックス日本支社創立に参画、セールスマネージャー、マーケティングマネージャーを兼務
2007-2009 クロックスグローバルプロダクトアパレルラインマネージャー、アジアクリエイティブチームチーフデザイナーを歴任
2009 オープンユアアイズ株式会社を設立
2010 フィクチュール(現エフ シーイー)を立ち上げる
2016 ブランド名をエフ シーイーへ

山根 麻美:1977年 大阪府生まれ
2000-2013 パルグループ、チャオパニックのバイヤー、ウィメンズPR を歴任
2013 オープンユアアイズ株式会社へ参画、同社内にてウィメンズデザイナーを務める

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2010年にficouture(フィクチュール)としてブランドをスタートし、毎年ひとつの国を旅し、そこで得たインスピレーションをバッグやダウンなどのトラベルギアに落とし込んできたデザイナーの山根敏史、麻美夫妻。2016年にはブランド名をF/CE.®(エフシーイー)に変更し、新たにクロージングラインをスタートするなど、従来から大切にしてきたスペックや機能などプロダクトとしての完成度は維持しつつ、ブランドとしての世界観をより強く発信していく方向性に舵を切ろうとしている。TOKYO FASHION AWARDを受賞し、ブランドの進化を国内外にアピールした二人にインタビューを行った。

 

ブランドを立ち上げるまでの経緯を教えてください。

山根敏史(以下、敏史): もともと僕はアパレル企業でデザイナーをしていて、その後アメリカのシューズメーカーの日本支社で7年ほど働いた後、2010年にフィクチュールという名前で自分のブランドを始めました。以前から旅をすることが好きでしたが、その時に使える良いバッグがなくて、自分でつくり始めたことがブランド立ち上げのきっかけになりました。

 

その時々に訪れた国が、シーズンテーマになっているそうですね。

敏史: はい。旅で訪れた国をテーマに2シーズンにわたってコレクションを展開するケースが多いです。国のチョイスは、映画や音楽、本などがきっかけになりますが、実際にその国を訪れてみると、アートや音楽などのカルチャー、あるいは歴史などさまざまな領域にたくさんの興味深いものがあるんです。だから、実際に自分たちが足を運び、そこで目にしたもの、体験したものを掘り下げてものをつくるということにこだわっています。

山根麻美(以下、麻美): ただ、私たちの場合はちょっと変わっていて、前回のテーマはフランスでしたが、フランスと聞いて多くの人がイメージするようなものとはかけ離れたところにフォーカスしていると思います(笑)。あえてそれを狙っているわけではなく、現地を旅してまわる中で発見したものがテーマになっていくことがほとんどです。「バスク地方のフィッシャーマン」という今回のテーマも、現地に行って触れた可愛らしい町並みや、自治地区ならではの文化に触れたことから着想したものでした。旅先にいる時の方が、日本にいる時よりも多くのアイデアが出てくるんです。

 

異国の地から得たインスピレーションをコレクションに落とし込むというクリエーション自体は珍しくないですが、F/CE.®では、それを洋服やプロダクトの機能面に落とし込んでいる点がユニークですね。

敏史: ちょっと変ですよね(笑)。でも、実際に旅をしていると機能やスペックが非常に重要になるし、もともと自分は道具が好きなので機能をデザインするという意識が強いんです。ただ、ひと目見てすぐに分かる機能よりも、説明されて初めてわかるようなウォータープルーフのシャツなど、気の利いた機能をデザインしたいと考えています。

麻美: 旅に出る時は毎回自分たちがつくったバッグや洋服を使うようにしていて、現地で使いにくかった点などをアップデートしていくことも多いです。また、例えば毎日雨ばかり降る国に行った時は、旅の写真がどれもレインコートを着たものばかりだったので、もっとカッコ良いレインコートがあったらなと思い、それをコレクションに落とし込んだりもしました。

 

敏史さんは、デザイナーと並行してバンド活動もされていますが、ご自身のクリエーションにおいて音楽からの影響はありますか?

敏史: あまり考えたことはありませんが、もともとブランドを立ち上げた理由のひとつとして、会社員をしているとバンド活動が自由にできないということがあって。どちらも良いものを追求するという点は共通していますが、自分にとって音楽は仕事に関係なく自由にやれるもので、一方でブランドはビジネスとして成立しないと存続できないので、自分の中では棲み分けがされています。

 

F/CE.®

Amazon Fashion Week TOKYO 2018 A/Wでのショーの様子(ヒカリエホール Aにて)

先日、TOKYO FASHION AWARD 2018の受賞ブランドとして、初のランウェイショーをAmazon Fashion Week TOKYOで行いましたが、こちらについてはいかがでしたか?

敏史: これまで僕らは、バッグなどのギアを単品で売っていくようなブランドでしたが、今後は世界観をトータルで伝えていく方向にシフトしたいという思いがあり、アワードの受賞はその良い機会になると考えていました。その中で、これまでより型数を増やすなどさまざまな新しい試みを行いましたが、ショーに関してもこれまでにはないチャレンジになりました。ブランドの認知という点において大きなプラスになりましたし、ショーのようにひとつのゴールに向かって一丸となる機会は他にないので、スタッフのモチベーションもとても高まりました。

麻美: たくさんのモデルさんが自分たちの洋服を着てくれるので、フィッティングの段階からかなりテンションが上がりましたね(笑)。また、今回はショーをするという前提があったので、モデルさんが歩いたら良く見えるだろうという観点から服づくりに取り組んだところもあり、その辺は良くも悪くも普段のクリエーションとは異なる部分だったように感じます。

 

今後のブランドの展望についてお聞かせください。

敏史: 今後はバッグやダウンなどブランドのルーツとなるギアカテゴリーをもっと海外に流通させたいと考えています。最近は海外の取引先とのやり取りが得意なスタッフも新たに入るなど、海外で売っていく環境が整いつつあり、結果も伴ってきています。ただ、本格的に海外に展開する上では物流などの拠点を現地に置く必要があり、それが今後の課題です。もしアメリカとヨーロッパに拠点ができれば関税などの課題もクリアできるし、世界中を旅しながらものづくりをする自分たちにとっては、クリエーション面でもプラスに働くことがあるのではないかと思っています。

F/CE.® showroom19ss
F/CE.® showroom19ss
F/CE.® showroom19ss

2018年6月にパリで行われたTOKYO FASHION AWARD「showroom.tokyo S/S 2019」の様子

 

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2018年1月にパリで行われたTOKYO FASHION AWARD「showroom.tokyo A/W 2018」の様子

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto(インタビュー撮影)

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