Interview & Report

堀畑 裕之/関口 真希子 Hiroyuki Horihata / Makiko Sekiguchi

堀畑 裕之/関口 真希子 Hiroyuki Horihata / Makiko Sekiguchi まとふ

matohu Designer

[ブランド創設年] 2005年

2005年 matohu ブランドスタート
2006年 JFWに参加。以後東京コレクションで発表。
2008年 スペインサラゴサ万博日本館制服をデザイン。
2009年 毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞を受賞。
同年 アジアファッション連合会ベトナム・ハノイ大会で講演。
2011年 「matohu慶長の美」展をスパイラルで開催。
2012年 「matohu 日本の眼ー日常にひそむ美を見つける」展を金沢21世紀美術館デザインギャラリーにて開催。
2013年 インターナショナル・ウールマーク賞 日本代表に選出。
2020年 「matohu 日本の眼」展をスパイラルにて開催。

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ファッションデザイナーを目指したきっかけから、ブランドを立ち上げられるまでの経緯を教えてください。

自分たちの手で服を作り、それが人々にまとってもらえることの喜びが原点です。そのためまずは企業でパターンナーから二人ともキャリアをスタートしました。5年ほど勤めた後、まだ誰も継続して取り組んだことのがないテーマが見つかり、自分たちでやってみようと決めて独立しました。退社後にロンドンに移住し、1年ほどロンドンコレクションのブランドで仕事をした後帰国。「日本の美意識が通底する新しい服の創造」をめざして、服飾ブランドmatohuを立ち上げました。

ブランドのコンセプトや服作りを通して伝えたいこと、提案したい男性像・女性像などがあれば教えてください。

洋服という言葉が示すように、「西洋」の民族服から発展した服が、いま世界のスタンダードになっています。しかし同時にそれぞれの国には、長い年月をかけてつちかってきた歴史や美意識、手仕事があったはずです。それらを忘れているのは日本だけではないと思います。もう一度足元を見直し、手遅れにならないうちに、それらの貴重な遺産を未来に繋げることが、本当の意味での「サスティナビリティー(持続性)」だと思います。古いものを今にあった新しい形でデザインし、多くの人とシェアする。そこには、単なる流行の消費にはない手応えがあり、自分も歴史に参加する希望が生まれると思います。

デザイナーご自身がファッションで影響を受けたブランド、デザイナー、スタイル、カルチャーなどはありますでしょうか。

デザイナーを志したときに影響を受けたブランドは、ヨウジ・ヤマモト、コム・デ・ギャルソン、イッセイ・ミヤケです。その後、関口は山本耀司さんに、堀畑は川久保玲さんに直接デザインの方法論や仕事のあり方をコレクションの制作を通して教えていただきました。

今回、2019A/W以来のRakuten FWT の参加になるかと思いますが、どうして今シーズン参加をされようと思ったのでしょうか。

コロナ以後は主にオンラインで新作を発表してきましたが、それ以前の2018年からランウェイのファッションショーはやめて、「手のひらの旅」というショートムービーで、物作りを通して土地ごとの歴史や風土、人々を丁寧に伝える方法論に変えていました。そのためコロナ禍でも発表のあり方に変わりはありませんでした。今回が「手のひらの旅」が10回目になり、ぜひネット上だけでなく、服と映像をリアルで観ていただけたらと思い参加しました。加えてmatohuの創作を5年かけて追ったドキュメンタリー映画「うつろいの時をまとう」が3月25日から公開されることになり、そのプレスもかねて同じ会場で特別先行試写会を行う予定です。

また今回3月25日にドキュメンタリー映画が公開され、その映像が先んじてRakuten FWT 会期期間中にも放映されるとのことですが、どういった映画なのでしょうか。

はい、これはドキュメンタリー映画の監督である三宅流氏が、ぜひmatohuを通して日本の美意識をテーマにした映画が作りたいとオファーがあり、お受けしたものです。コロナ禍もあり、5年間という長い制作期間を経て、この春公開になります。matohuで7年間展開した17コレクション「日本の眼」を、丁寧に取り上げつつ、私たちの創作の現場に分け入って、matohuの仕事を余すことなく捉えてくださっています。ファッションに興味がある人以外にも、アートや歴史、哲学に関心があるすべての人に響くような映画になっていると思います。また、つい先ほど受けたニュースですが、第41回モントリオール国際芸術映画祭の公式作品に選定されました。カナダのモントリオールが日本に先立って世界初上映(ワールドプレミア)となる予定です。世界中の人がどういった感想をくださるか、ほんとうに楽しみです!

今シーズンのショーもしくはインスタレーション構想や是非見ていただきたいポイント等あればお願いいたします。

今回の「手のひらの旅」の目的地は島根県松江市です。神話の時代から長い歴史をもつ城下町です。茶の湯文化が盛んですし、近代には民藝運動から生まれた窯元や和紙工房などがいまも素敵なものをつくっています。さらに英文学者のラフカディオ・ハーン、日本名は小泉八雲ですが、明治時代にこの松江に住み、すばらしい文章を書いています。それを踏まえた映像と服作りになっていますのでぜひご期待ください。

ブランドとしての展望、目標などがあれば教えてください。

映画も映像などもそうですが、作ったものが世界に向けて自然と広がっていくことが展望ですね。無理をするのではなく、ありうべき流れの中で、世界中の人と服や考え方がつながっていけたらと思います。以前は「東コレを卒業したらパリコレへ」みたいなサクセスストーリーが長くありましたが、もう時代はどんどん変わっていっていると思います。大切なのは手から手へ、人から人へ、真に価値あるものが持続して、それ自体として伝わっていくことであり、メディアで有名になったり大量に売れたりすることではないはずです。

SDGsへの取り組みとしてブランド、もしくは個人での取り組みや挑戦したいことがあれば教えてください。

この6月に新しいブランドを立ち上げます。人間国宝の草木染めの染織家 志村ふくみさんのお弟子さんの工房 atelier shimuraと「hikariwomatou 光をまとう」というシナジェティック・ブランド(synergetic brand)を始めます。お互いのポテンシャルを最大限に組み合わせた「相乗作用から生まれるブランド」です。光から生まれた天然の植物の透き通るような色と、手織ならではの繊細な工藝の布が、matohuの長着やジャケットなどのアイテムになって、実際にまとうことができる。東京、名古屋、京都、上海、パリで展示会の予定です。

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