センスの良い人に実際に愛用しているブランドは？と聞くと必ず名前が挙がるブランド「INSCRIRE」。デザイナーの岡ゆみか氏が2017AWシーズンにスタートし、ワードローブに持ち続けたいと思わせるエターナルなものづくりに定評がある。メンズライン、スポーツラインと手がけるカテゴリーも広がり、今後の更なる動向が気になるブランドについて、岡氏に話を伺った。

ご自身でブランドを立ち上げるまでの経緯について聞かせてください。

高校卒業後、実はスタイリストになりたくて専門学校に通っていました。元々メンズウェアが好きで、他の子たちがDCブランドを買い漁っていた専門学校時代も私は古着を買っていて、卒業後はネペンテスで販売企画を経験するという時代のムードとは違う動きをしていました。その後、ベイクルーズに転職しドゥーズイエムクラスに10年在籍して様々な企画やバイイングを担当しました。結婚、出産を経て服作りをもう一度学びたいとドゥロワーへ異動し、素材やディテールにこだわる上質なものづくりに携わりました。欧州ブランドの輸入販売を手がけるアマンからオリジナルブランドを作りたいからとお声がけをいただき、独立するという形でINSCRIREを立ち上げました。

ファッション業界での様々な経験を経て、どのようなブランドを目指しているのでしょうか？

自分が好きなメンズやユニフォームの要素を取り入れて遊びやユニークさを出しながら着心地の良いベーシックなものを作り、お客様のクローゼットでワードローブになるようなブランドにしたいとスタートしました。女性がメンズウェアを着たときに表出するセクシーさや大人らしさを提案できたらと思っています。

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クリエイションのインスピレーションは何から得ていますか？

自宅にたくさん保有しているミニタリーやデニムの図鑑を見たり、古着屋に足を運んだりして、その時々の自分の気分にマッチするシルエットやディテールをチョイスしていく感じですね。自分が欲しい、自分が着たいと思うものをとにかく描くことから始めて、その後にコーディネートを考えバランス取りつつ引き算していきコレクションを仕上げています。

シーズンのテーマはどのように決めていますか？

テーマはあるようでないんです笑。23AWシーズンはミリタリーを意識したシーズンでしたが、24SSはスポーツを重視したコレクションに仕上げました。どちらの要素もブランドとして毎シーズン取り入れていますが、シーズンによってフューチャー度合いが異なります。24SSはスポーツウェアを街着としてどうおしゃれに着こなせるかというテーマで、タイトなセットアップや巻きスカート仕様のプリーツだったり、大人世代が似合うジャージー素材のこなしやスタイリングなどを提案しています。リーバイスも時代ごとにデザインが異なっているように、その時代にあった「らしさ」を自分なりに出していけたらと思っています。

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ものづくりにおいて大切にしているポイントを教えてください。

自分が着てフィッティングし動いたときの見え方やワードローブと合わせたときのスタイリングの可能性に納得できるかどうかを重視しています。お客様のワードローブに毎シーズン１点ずつINSCRIREが加わっていくのを想定して作っているので、お客様のワードローブにその１点が加わったときどんなスタイリングが可能になるか、昔買った洋服とどんなスタイリングになるのか、様々なアイテムと試して実験して完成させていきます。

メンズラインやスポーツラインはどういった背景からスタートされたのでしょうか？

お客様からメンズ展開を望む声をいただいたことがきっかけです。メンズを始めるに当たって、フックになる打ち出しとしてワードローブ内に必ずあるアイテムであるカットソーを軸にしたスポーツラインを先に展開した流れです。これらに加えて、冬には上質で遊びのあるカシミヤのニットコレクションを20型程度で発売しています。

現在のビジネス概況はいかがでしょうか？

少しずつ増えて現在は国内で45〜47の取引先があります。海外はまだこれからの状況ですが韓国で3アカウントあります。韓国ではデニムのコレクションが反応良くて、好きな日本ブランドにINSCRIREを上げてくださる方も多く、問い合わせも増えています。

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TOKYO FASHION AWARDを受賞されて2023年にはブランド初のショーを経験されました。今振り返ってみてショーはいかがでしたか？

舞台を作ってくださる方、音楽を作ってくださる方など様々な意見を聞きながら共に作り上げていくという過程も含めてとても楽しかったですね。取引先を増やす目的ではなくて、現在の取引先店舗に送客することや、どういうスタイルを持つ世界観なのか直接届けたいという想いから、自分でスタイリングを組み一般のお客様を招待して行いました。いろんな人のクローゼットでありたいと考えているブランドなので、洋服を着ている人のパーソナリティを感じられる演出としました。

ショーの反響はいかがでしたか？

取引先やお客様からスタイリングを褒めていただけることが出来て、嬉しかったです。また、ショーを通して若い層やインスタグラマー的な方々にもブランドを認知してもらうことができ、お客様の広がりを感じています。

今後の展望を聞かせてください。

ブランドの世界観やスタイルを伝えていきたいのでとにかく店舗を出したいですね。お客様と会話をしながら盛り上がっていく洋服だと思っているので、伝える場を持ちたい。また、海外も今は韓国だけですが、アメリカ、ヨーロッパにも広げていきたいと考えています。具体的な構想ではまだありませんが、海外のアワードにも挑戦してブランドの知名度を上げていきたいとも思っています。

デザイナーとして挑戦してみたいことはありますか？

ジュエリーをやりたくて実は今専門学校を調べているところなんです。ちゃんと全部を自分で習得して進めないと嫌な性格みたいで、勉強して理解した上で自分の範囲内で完結できるものとしてジュエリーを手がけてみたいと思っています。