西村 浩平 Kohei Nishimura DIGAWEL(ディガウェル)
TOKYO FASHION AWARD 2018受賞デザイナー
大学卒業後、雑貨屋にて販売、企画などを経験。2006年に独立しDIGAWELを立ち上げる。
[ Website ] http://www.digawel.com/
[ Instagram ] https://www.instagram.com/digawel_official/
2006年のショップオープンと同時にスタートし、洗練されたシンプルなデザインを基調に、リラックス感のあるシルエットや遊び心のあるディテールなどで人気を集めてきたブランドDIGAWEL(ディガウェル)。設立からすでに10年を超え、多くのファンを抱えている同ブランドは、先日TOKYO FASHION AWARDを受賞し、2シーズンにわたるヨーロッパでのショールーム展示、さらに東京でブランド初となるランウェイショーを行った。これまでに築いてきた評価や地位に甘んじず、新たなフェーズに向かおうとしている同ブランドのデザイナー、西村浩平氏にインタビューした。
ファッションデザイナーを志すようになった経緯を教えてください。
僕はファッションの専門的な勉強をしてきたわけではないですし、デザイナーになりたいという思いも特にありませんでした。今はファッションデザインというものをしているのかもしれませんが、自分がデザイナーだという自覚はあまり持っていないんです(笑)。もともとブランドよりもお店をやりたいと思っていて、自分のお店を構えるにあたって2、3型洋服をつくったことによって、結果的にブランドがスタートしたという感覚です。
当時は、なぜお店をつくりたいと思っていたのですか?
例えば、アパレル企業や大手セレクトショップなど会社の中で仕事をする場合、当然周りの色々な人たちの考えもある中で、自分がカッコ良いと思うものを全部が全部できるわけではないと思っていました。それなら、自分が良いと思えるものを100%表現できるお店を自分でつくった方が早いだろうと。そんな考えから、自分がつくった洋服2、3型のほか、革小物や古い文房具などを仕入れてお店をスタートすることになりました。
その後、服づくりに本腰を入れるようになったきっかけは何かあったのですか?
最初のシーズンにつくった洋服を色々なところで評価していただき、地方のセレクトショップなどからも卸してほしいという依頼がありましたが、もともとファッションの世界の人間ではなかった自分にとって、「そもそも卸すってどうすればいいの?」というところからのスタートで、当時は委託と買取の違いもよくわかっていませんでした(笑)。しかし、周囲からのさまざまな声を自分たちができる範囲の中でカタチにしていこうと考えるようになり、それを続けてきた結果、現在に至っています。
服づくりの知識や技術は、独学で習得していったのですか?
そうですね。だから、やはり当初はできることとできないことがありました。何でもやろうと思えばできないことはないのかもしれませんが、自分が求めているクオリティに達するための技術や知識というものが足りなかった。でも、最近はようやくある程度まではできるようになってきたかなと思っています。
西村さんにとって、洋服をつくることと、ショップという空間をつくることにはどんな共通点や違いがありますか?
どちらも空間を把握する能力が求められるという点では共通しているように感じます。一方、違いとしては、お店は極端な話、自分の他に施工業者が一人いればつくることができますが、洋服の場合は多くの人が関わることでしょうか。アパレルの世界にはデザインをする人以外にもパタンナーや工場が必要で、その先にはセールスやプレスがいたり、ショーをするなら演出家も入ってきます。一連のプロセスの中で色々なアイデアや考え方が入ってきて、時に思わぬ方向に進んでいくことがファッションの面白さだと感じています。
西村さんがこれまでに影響を受けてきたものについても教えてください。
音楽や芸術、映画など、色々なものから影響を受けてきました。そして、それは常に変化していくもので、かつて影響を受けてきたものと、今、影響を受けているものは全く違いますし、来年、再来年とそれも変わっていくのだろうと思っています。
そうしたものはブランドのクリエーションにも反映されていますか?
どうなんでしょう・・・日々の生活を含めたすべての事象が服づくりに影響を及ぼしているとも言えるし、自分としてはその時々でやりたいことをカタチにしていくのが楽しいからやっているだけなんです。ファッションデザインと言うと何かすごいことをしているように思われがちですが、特にそんなこともないと思うし、たかだか洋服ですからね(笑)。僕は、服づくりを通じて自分を表現しようという気もないですし、洋服を着ることによってその人のパーソナリティが表現できるとも思っていません。だから、DIGAWELらしさみたいなものも自分ではよくわかりません。ただ、自分たちの洋服が何かを考えてもらうきっかけになるといいなと思うことはあります。
TOKYO FASHION AWARD 2018の受賞者として、ヨーロッパでの2シーズンにわたる展示、さらにAmazon Fashion Week TOKYOでショーをされましたが、これらはブランドにとってどんな経験になりましたか。
まず、ブランドを10年以上続けてきて、長くいるスタッフが多いということもあって、外部からの刺激を求めてTOKYO FASHION AWARDに応募したところがありました。やはり海外での展示やショーをするということが決まっていると、そこに向けて動いていくしかない状況になるので、ブランドに推進力が生まれるんです。ショーに関しては一度はやってみたかったので、このタイミングでできて良かったと思いますし、海外での展示を経験したことも含め、これを機に考え方が変わった部分もありました。これまでブランドを続けてきて、それなりに売上もついてくる中で、今後は次のフェーズとして、もうひとつ外側の円に向けてアプローチしていけるようなやり方にシフトしていくつもりです。好きな人だけが買ってくれれば良いという考えは持っていないし、より多くの人たちに好きになってもらえるブランドになりたいので、今後も海外での発表は継続していきたいと考えています。
Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto(インタビュー撮影)