Interview & Report

倉橋 直実 Naomi Kurahashi

倉橋 直実 Naomi Kurahashi THE RERACS(ザ・リラクス)

THE RERACS デザイナー

デザイナーは、倉橋直実(Naomi Kurahashi)。1981年、静岡県生まれ。大学卒業後、セレクトショップで販売職として働く。在籍中にパターンメイキングとテキスタイルを学び、2010年3月にザ・リラクス(THE RERACS)としてのブランド活動をスタート。

倉橋直行(Naoyuki Kurahashi)。アパレル企業で新規ブランドの立ち上げ、マーケティングを経験。コレクションブランド及びSPAブランドでマーチャンダイジングとバイヤーを経験。2011年秋冬シーズンよりザ・リラクスのディレクションを担当。

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2010年に倉橋直実氏が立ち上げ、その後、夫の直行氏が加わり現在は共同でクリエイションを行う「THE RERACS」。スクラップ&ビルドをコンセプトとした確かなものづくりにより着実な成長を続けるブランドは、Rakuten Fashion WEEK TOKYOに直近3シーズン映像での参加を続けている。今後更なる活躍が期待されるブランドとして、コレクション発表後の心境や今後のブランド展開について、倉橋夫妻に話を伺った。

3回目のファッションウィーク参加となりましたが、今回の発表はいかがでしたか?

これまで参加した中での反省点を踏まえながら、映像配信で3回目も参加しました。コレクションの発表は、洋服を見せることで洋服が語り、マーケットに訴求するべきものと私たちは位置付けているので、ランウェイ形式で発表しました。音楽と映像のバランスが取れた今の形式は日本でできる発表としては理想の形だと思っています。フィジカルなショーも良いと思っていたいのですが、クリエイションとしての限界点も感じていて。ブランドのプロモーションとして、生産を担ってくださる工場さんやお取引先さんが潤って行く手法として、刻々と変わる状況を見ながらフィジカルであれ、デジタルであれ、適切に判断して発表するべきだと思っています。

21AWコレクションのテーマを教えてください。

今季はアイテム、映像の見せ方としても「インパルスデザイン」をテーマとしました。ブランドの几帳面で構築的なイメージは崩さず、衝動的、衝撃といった感情的で主観的な要素を加えています。「デザイン」や「デザイナー」は日本では「アーティスト」としての意味合いが強い言葉ですが、私たちは持続可能なブランドとして「設計者」であることを意識してものづくりを行っています。

コレクションのテーマはどのように決めてらっしゃるのでしょうか?

サウンドマイニングによって決めていくことが多いですね。毎日多くの音に触れる中で、私たちがピックしている音には傾向があり、意味が生じています。その意味を読み解き、映像やデザインに落としてコンセプトを作っているケースが多いです。

THE RERACS 2021 A/W Collection runway show

ブランドとして新型コロナウイルスの影響はありましたか?

デザイン面では影響はありませんが、協力していただいている生産工場さんにはキャパ低下など影響があったので、売上自体は落とさないようにしながら、納期、生産工程を変更したり、品番数を調整したりはしました。ビジネスとしては、こうした状況下でも、ウィメンズ、メンズ共に売上は伸びていて、21AWシーズンではメンズ比率が高まり、現時点で1.5倍ほど伸びそうです。

売上が低迷するブランドも多い中、売上が伸びている理由をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか?

新規のお取引先が増えているというより、既存のお取引先の消化率が良くて着々と次に繋がって伸びていますね。メンズに関しては既存店での取扱いが平均して増えていますし。また、映像に対する反響がとても大きく、ウェブやSNSなどにアップした映像で掲載した商品が即日完売したり、公開後3週間でオンラインストア半期分の売上を達成するなど、コアなお客様に訴求できている感覚があります。

2017年にショールミングストア「THE RERACS FITTING HOUSE」を開設され、今年に入ってからカスタマイズに対応するオーダーメイドシステムをローンチされるなど、クリエイションだけでなくビジネス展開にも注目が集まっていますね。

フィッティングハウスはフルコレクションが揃う場所でブランドの全体像をお客様に見てもらって、世界観、強みを知ってもらった上で1型、2型を選んでもらえたらいう想いで始めました。コロナ禍でも客数は伸びていてビジネスモデルとしても好調です。お客様はその場でオーダーされる方もいますし、帰宅後にオンラインからご購入されたり取引先店にてご購入される方もいます。 オーダーメイドシステムは、生産背景を担ってくださる取引先さんとの持続可能な関係を築くためにスタートしました。日本の生産背景は稼働率が落ち、職人や管理者の欠損が起きています。現在の多品種少量生産から少品種適正ロット生産に移行しなければ継続したものづくりを行うことが出来ないと考え、その解決に向けた一つのモデルとして位置付けています。

現在のビジネス状況についても聞かせてください。

現在アカウント数としては国内50社と取引があり、私たちのことを深く理解してくださる取引先ばかりです。海外は以前パリで展示会に出展しており、大手アカウントとも取引していました。出展していた際の反応はとても良かったのですが、海外デリバリーと日本の生産背景のスケジュールが全く合わないことや現地マーケットの厳しい状況、社内体制を考慮して、今はアジアマーケットに限ってお取引をしていますが、THE RERACSは海外市場に非常にマッチすると考えていますし、海外ショールームからお声がけも多いので、今後また出ていきたいとは思っていますね。

ブランドの今後の展望について聞かせてください。

目の前にいてくださるお客様や協力してくださっている取引先、生産背景の方々が幸せになれるものづくりをしていきたい。今見えているものから目を逸らさず、作るものに嘘をつかない設計者でありたいと日々思っています。 また、メゾンブランドを私たちは目指しています。現状の基本的なアイテムやファッションは欧米の歴史の上に成立しています。THE RERACSが提案しているニューモダンクラシックは、その歴史を進化させた日本人にしか出来ないクラシックであり、世界に必要なファッションだと思っています。

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