Interview & Report

寺田 典夫 Norio Terada

寺田 典夫 Norio Terada YOKE(ヨーク)

YOKE Designer

文化服装学院 デザイン専攻科卒業後、ドメスティックブランドやセレクトショップなど数社でデザインテ、生産管理を経験。2016年に独立し、2018AWよりブランドをスタートさせる。

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「TOKYO FASHION AWARD 2022(以下、TFA)」にて、第7回アワードを受賞した「YOKE」。凱旋イベントとして参加したRakuten Fashion Week TOKYO 2022 A/W では、会場を「1時間だけの美術館」に見立て、アメリカの画家クリフォード・スティルをテーマに独自の世界観を表現。コレクションを身に纏ったモデルがベンチに座って作品鑑賞をしたり、立ち止まって作品を眺めたりと、これまでにないウォーキングで話題を集めた。アーティストの世界観とシンクロしながらも、自身の感性を斬新なテイストでコレクションに落とし込むデザイナーの寺田典夫氏に、毎シーズンのテーマ設定や今後の展望について話を伺った。

前回のコレクションで、ブランド初となるランウェイを経験されました。どのような気持ちで挑まれたのでしょう。

ランウェイは学生時代から憧れていたので、まさか自分ができるとは思っていませんでした。実は、ショーができることが、TFAに応募した理由の一つでもあります。なので気合はかなり入っていましたね。演出の方と何度も話し合いをしていく中で、YOKEだったら美術館みたいな演出ができたらいいねって話になって。だったらショーのように同じモデルが2回ステージに上がるのは不自然なので、全て違うモデルで、人種も年齢もバラバラで行こうと。美術館に来ている人ならイスに座ったり、作品を眺めたり、気になった作品をもう一度見直したりしますよね。それをストレートに表現することで、印象に残せるランウェイにしたいという思いがありました。

会場には、これまでYOKEと一緒にブランド作りをしてきたアーティストの作品も展示されていました。YOKEのブランド名に込められた「 繋ぐ」「絆」といった想いも込められていたのでしょうか。

そうですね。これまでルックを撮影してくださっている方など多くの人に携わってもらっているので、せっかくショーをやるのであれば、そうした繋がりも表現できたらと。ショーの内容が決まってから声をかけたのでギリギリのスケジュールになってしまったんですが、みなさん快く引き受けてくださって嬉しかったですね。いろんな方の力を借りて、今できる全力のランウェイができて本当に良かったと思っています。

毎シーズンのテーマはどのように決められているのでしょうか。

ブランド名には「繋ぐ」という意味があるんですが、不思議とずっと連動してるんですよね。2019 AWのコレクションでは、テキスタイルデザイナーのアンニ・アルバースをテーマにして、その次は彼女の夫であるアーティストのヨゼフ・アルバースがテーマで。そうやって関わりのある人を調べていると、その時の気分や作品のカラーがSSっぽくて今っぽいなと思ったり、タイミング的にリンクする人をテーマにしていくという感じですね。YOKEの服は作品という意味合いも込めて一点ずつシリアルナンバーを付けているので、そういったところもアートとうまく連動していけたらいいなと思っています。

テーマにされる人物に画家が多いのは、理由があるのでしょうか。

文化服装学院に入学する前に美術の大学に通っていたので、小さなころから絵は好きでしたね。学生時代は自分で描くことが好きだったんですが、アーティスト自身について調べるようになったのは服を作り出してからです。自分なりの服へのアプローチの仕方を模索して、その時にアーティストの作風や色味などをコレクションに落とし込めるんじゃないかと思ったのがきっかけかもしれません。何となく自分っぽくていいなって。

寺田さんはさまざまなブランドを経てYOKEを立ち上げた経歴を持っていらっしゃいますが、ブランドのものづくりにおいて、これまで影響を受けたクリエイターはいますか。

ブランドを立ち上げる前に勤めていた会社のデザイナーですね。そこには5、6年いましたが、ものづくりのクオリティが圧倒的に高く、素材へのこだわりがすごかったので。メンズの服はハンガー面がしっかり綺麗に見えて、服としての美しさがあることが大切だと教わりました。それから、素材へのこだわり、デザインのバランスについても勉強させてもらいました。YOKEでは、それらをいかしながら、ちょっとしたデザイン性や遊びを取り入れて、自分なりのアプローチを加えていけるものづくりをしたいと思っています。

今、積極的にSDGsに取り組むブランドが増えています。YOKEではSDGsについてどのように意識していますか。

あえてサスティナブルな素材を取り入れるというよりも、在庫が残らないように、必要な量を必要な人に届けることを大切にしています。サスティナブルはできるだけ意識はしていますが、自分なりのモノづくりが嘘っぽくならないような提案をしたいなと。今はオーガニックコットンなど、身近なところで本当にいいと思った素材を使っていくのがいいなと思っています。素材にはこだわっていますが、ある意味ウンチクを語らないと伝わらないものより、服を手にした人が触っただけでわかる、この素材なんだろうって感じてもらえる良質な素材を選んでいます。それが、結果サスティナブルなものっていう自然な流れで取り入れられたらいいですね。

最後に、今後のブランドの展開や展望についてお聞かせください。

TFAに参加してパリでの展示会で海外の方の反応を知ることができたので、今後はよりグローバルに展開できればと思っています。日本ではどちらかというとベージュ、オリーブ、ブラックのような色が好まれますが、ヨーロッパでは華やかな色合いに興味を持っていただいたので、今後はカラーも強みにしていきたいなと。あとはパリでランウェイをやりたいですね。海外ではある程度のブランドバリューがないとまず見てもらえないってことをすごく痛感したので、ランウェイで見てもらえるチャンスがあるなら挑戦したいなと。年内にやってみたいと考えているのは、アトリエを限定解放して、直接お客さまにコレクションを見てもらえるようにしたいですね。対面することでいろんな話を聞くことができるし、作り手の想いを伝えることもできる。そんな空間を作っていきたいなと思っています。

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