Interview & Report

林 陸也 Rikuya Hayashi

林 陸也 Rikuya Hayashi SUGARHILL(シュガーヒル)

SUGARHILL Designer

林陸也、1995年生まれ、東京都出身。文化学園大学、ここのがっこうを経て、ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)を修了。その後、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科を2019年に首席卒業。FIT在学中にブランド設立。
ワークウェアやミリタリーウェアをソースに、素材の開発、色味の置き換え、風合いの研究、シルエットの再考といったプロセスを織り交ぜコレクションに反映させる。

Brand詳細を見る

デザイナーの林陸也氏が大学在学中の2016年からスタートした「SUGARHILL」。ミリタリー、ワークといった無骨さを、独自開発する素材やパターンメイキングによって上質なウェアに昇華させるコレクションで若年層を中心に人気を集めている。
昨年度には26歳の若さで、TOKYO FASHION AWARD 2022を受賞。海外進出への一歩を踏み出し、今後の活躍が大きく期待されるブランドについて、林氏に話を伺った。

ブランドを立ち上げるまでの経緯を聞かせてください 。

大学時代にニューヨークファッション工科大学に編入し、メンズのパターンメイキングとテイラーリングを学びました。NYでの在学中にインターンを経験し、日本へ帰国するタイミングで「SUGARHILL」を立ち上げました。ブランドとしてショールームと契約しビジネスを始めながら、アパレルだけでなく多様な面からデザインを学びたいと思って、帰国後は武蔵野美術大学で空間演出デザインを専攻し、並行して学業も続けました。23SSシーズンで11シーズン目となります。
汚れてもかっこよく見えるものであってほしいと思いながら、洋服を提案しています。まっさらなものより、傷ついても長く愛着を持って使えるようなものを目指しています。

これまでブランドとしてターニングポイントになった出来事はありますか?

シーズンを経る度にブランドとして変化していると思っています。良い意味で毎シーズン新しい課題が生まれて、それをひとつひとつ着実にクリアして成長している感覚ですね。

23SSシーズンではどのような課題に取り組まれたのでしょうか?

今季、自分の中での課題は色のバランスでした。一から開発した素材にどのような色を当て込むかを、制作課題として取り組みましたね。SUGARHILLは、素材作りから構成して形にして見せ方を考えるという流れでコレクションを制作しています。毎シーズン大事にしている素材開発では、工場へ出向いて技術を学んだり、過去シーズンでの取組から見えてくる可能性について工場とコミュニケーションすることで、新しい素材を生み出しています。異なった技術で生まれたそれぞれの素材の色をどう合わせて行くかという点を今季は意識して制作しました。
ブランドとしては、マーケットが海外に大きく変わるという点に対して、僕自身の好みをガチガチに当て込んで見せるという今までの表現から、新しいマーケットにフィットする見せ方に挑戦しています。より広い間口に受け入れられるように、スタイリングに隙を持たせたり、日本人が理解できるローカルな背景文化に頼るのではなく、グローバルに伝わるファッションカルチャーとしての提案を意識しました。

デザイナーとしてこれまで影響を受けたブランドやデザイナーはいますか?

特定のデザイナーとしては挙げられないですね。たくさんのデザイナーの作品を見てきましたし、様々なところで影響を受けていると思います。

現在のビジネス概況を教えてください。

今は国内で約30アカウントとお取引があります。海外に関してはアカウントも以前ありましたが、展示会としては今回のパリ出展が初めてです。

パリでの初出展、手応えはいかがですか?

SUGARHILLは国内だとデニムにフューチャーされることが多いのですが、海外だと先入観なくフラットにブランドを見て評価してもらえ、いくつか海外アカウントを獲得できる見込みです。インスタレーション的な会場構成とし、ブランドのことを知らないバイヤーに足を留めてもらうこともできて、初回の展示会としては満足していますね。直接コミュニケーションを取って、人となりを伝えることが出来た点も良かった。パーソナリティを伝えることは、ブランドの魅力を深化させることだと思っているので。

展示会に来場されたバイヤー、ジャーナリストからはどのような反応がありましたか?

レザーアイテムやレーヨン素材のチェック柄アイテムなど、今までに見たことのないアイテムだと高い評価を得られました。ただ、マーケットで見ても他にないブランドなので、困惑されたような印象もあります。アメリカブランドっぽいけど、アジアンなテイストだし、見たことのない技術が使われているし・・・という。服の文脈を海外マーケットに刺さるように正しくコミュニケーションする必要性をここでは感じました。お互いを深く知れるように言語面や文化理解も含めて、僕らしいコミュニケーション方法を身につけて次のパリには臨みたいと強く思っています。

今年3月にはファッション・ウィーク東京にTFA受賞者として参加されました。東京でのプレゼンテーションはいかがでしたか?

とにかく楽しかったですね。開催したショーは、22AWコレクション発表という位置付けよりも、これまでのシーズンコレクションをミックスして構成し、国内の顧客に向けたプレゼンテーションとしました。ショーを開催したことで、メディアにも多く露出でき展示会のアポイントも増え、ブランドとしてステップアップ出来たように感じています。

ブランドとして、デザイナーとしてこれから挑戦してみたいことを聞かせてください。

広い視野でモノづくりを続けていきたいので、海外向けのコラボレーションや店舗別注など、言葉や国境の壁を超えて取り組みたいですね。ビジネスとしては毎シーズン150%増で売上を伸ばし、セルアウトせず継続して行くことが重要だと考えています。

Go to Top