Interview & Report

小川 哲史 Satoshi Ogawa

小川 哲史 Satoshi Ogawa FORSOMEONE(フォーサムワン)

FORSOMEONE DESIGNER

(株)LDHアパレルの代表であり、LDH JAPAN所属アーティストを中心としたステージ衣装やミュージックビデオ、映画、舞台などの衣装ディレクター兼デザイナーとしても活動し、2018年に「FORSOMEONE 」を立ち上げる。青年期より欧米の服飾文化や音楽・ストリートカルチャーに傾倒し、グラフィックデザインや建築設計などを経て、独学で服飾デザインを学び、国内外ブランドの企画に従事する。20代中盤よりアーティスト「EXILE」の衣装デザイナーとして活動を始める。その後、LDH JAPANの興行の衣装部門を統括し、子会社のLDHアパレルの代表に就任し、エンターテイメントと連動した独自のファッション事業を展開する。2018年秋冬コレクションより自身がデザイナーとして「FORSOMEONE 」を始動し、2020年春夏コレクションはパリにて展示会形式で発表、2020年秋冬コレクションでは初のランウェイショーをコロナ禍で急遽無観客配信に変更しJFWで発表した。衣装デザイナーとして表現者達の為に服を作り続けて来た経験を糧に活動するブランドとして、誰かの為に=FORSOMEONEと命名する。

2020秋冬コレクションで、ブランドとして初めてのランウェイショーを新型コロナウイルスの影響で無観客ショーに切り替え、デジタル発表したFORSOMEONE。来たる21秋冬コレクションでは、満を持して有観客でのランウェイショーをファッション・ウィーク東京で披露する。株式会社LDHアパレルの代表でもあり、FORSOMEONEを立ち上げ、デザイナーを務める小川哲史氏にショー開催に向けた意気込みやブランドの今後について、インタビューした。

 

− LDHアパレルの代表でありながら、小川さんがFORSOMEONEを立ち上げられた経緯を教えてください。

EXILE、三代目J SOUL BROTHERSなどLDH所属アーティストの衣装デザインを20代から手がけていて、現在もライブ、舞台などを中心にLDHアーティストの衣装統括をしています。ファッション性があった上で、激しいパフォーマンスをこなす彼らに見合った機能性と可動性を持つ衣装は、素材だけではなくパターンや仕様で動作性を向上させていて、既製服にも展開できる可能性があるのではと感じていました。衣装は基本的にオーダーメイドな製作となりますが、衣装で培った経験を活かして自分の周りの仲間たちに着て貰える服を作ろうと、デイリーウェアのブランドとして2018秋冬シーズンに「FORSOMEONE」を立ち上げました。

 

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− 2020春夏シーズンには海外で展示会もされていますね。

小木”Poggy”基史さんに誘われて、パリで展示会をしました。このブランドは、良い意味でLDHらしくない、パーソナルなブランディングをしたいと思っていて。ブランドとして表現していきたいものと、LDHファンの方々が求めるものにはどうしても乖離があるので、ブランドのことを本当に好きになってくれた方に洋服が届くようにしたいと考えていて。海外では先入観なくブランドを見てもらえるので、そういう場で勝負して、ブランドの戦略を考えるきっかけにしたいと出展しました。その後はコロナの影響もあり海外で発表する機会がないですが、目標は常にグローバルであり、世界で認められるブランドになりたいと考えています。

 

− プレゼンテーションという意味では、2020秋冬コレクションで初めてファッション・ウィーク東京に参加されました。今振り返ってみて初参加はいかがでしたか?

当時はショーそのものをやるべきかどうかも迷いましたが、無観客でのショー配信に急遽変更し開催しました。コロナの影響で展示会も思うように出来ず卸販売には影響が出ましたが、ショーをやったことでブランドの認知度が上がり、店舗やオンラインでのD2Cも好調だったので、利益は落とさずに済みました。

 

− コロナ禍で、クリエイションやブランディングに何か変化はありましたか?

クリエイションのインスピレーションとなるライブやダンス、クラブといったストリートカルチャーとの接点が失われてしまいました。また、弊社でもリモートや在宅勤務が増え、家族と一緒に過ごす時間も増えました。そうした流れから、それまでブランドが目指していたカッコよさ、強さのある方向性が現実的ではなくなった感じがしました。お客様の洋服を着るシーンや用途も変化したので、21春夏シーズンからはそれまでの黒基調からアースカラーにトーンを変更し、今のライフスタイルにフィットし、共存できるコレクションとして展開しています。家族と一緒にいるときに着用できるアイテムや、アウトドアのシーンに対応するアイテムだったり。次回発表する21秋冬コレクションも、21春夏シーズンの延長線上にあり、春夏アイテムもミックスして見せていく予定です。

 

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− 実際のコレクションを拝見するのが楽しみです。有観客では初めてのショーとなりますが、意気込みを聞かせてください。

コロナ禍が続く中で、自分達なりに未来へ向かうべきタイミングだなと思って、2020年の年末にショーで参加させていただくことを決めました。暗い世の中で、先が見えない状況ではありますが、少しでも希望のもてるショーに出来ればと思います。ファッション・ウィークで多くの人に見てもらえたら嬉しいですね。また、今回のショーでは様々なコラボレーションも発表しますのでこちらも楽しみにしていただければ。

 

− ショーの構想についても教えていただけますか?

ブランド名にもあるように、「FORSOMEONE」は限定的なターゲットではなく、多様な人にフィットするブランドでありたいので、ダイバーシティなモデルを起用しています。ヒッピー文化にインスパイアされたショーの構想です。奇抜なショーでは決してありませんが、人々の気持ちに残るようなショーにしたいと考えています。今の暮らしに必要な洋服として、希望や自由、優しさを感じてもらえたら嬉しいです。ショーはTOKYO FASHION FILMでLIVE配信しますし、ショー終了後はYouTube、SNS等で編集した映像を配信する予定です。

 

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− 最後に、今後のブランドの展望について聞かせてください。

ショーに関しては、出来る限り今後も身の丈にあった内容で続けていきたいと考えています。ものづくりとしては、1シーズンで消費されてしまうものではなく、様々なシチュエーションや長い期間に亘って着用できる、洋服を生み出していきたい。また、LDH自体がそうであるように、ブランドとしても海外進出を進めていくつもりです。様々な文化、人種の人々に着てもらえるようなブランドを目指していますね。

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