山岸 慎平 Shinpei Yamagishi BED j.w. FORD(ベッドフォード)
TOKYO FASHION AWARD 2017受賞デザイナー
2010年7月株式会社バースリー設立。ブランドBED j.w. FORDを立ち上げる。2011S/Sより展示会形式にてコレクションを発表。2017S/SよりAmazon Fashion Week TOKYOにてランウェイ型式でコレクションを発表し、2016年にTOKYO FASHION AWARDを受賞。2017 A/Wはパリで開催されるshowroom.tokyoにてコレクションを発表する。"着飾る"をコンセプトに毎シーズンテーマを設けコレクションを発表している。
[ Website ] http://www.bedjudewillford.com/
[ Instagram ] https://www.instagram.com/bed_j.w._ford/
[ Facebook ] https://www.facebook.com/BedJ.w.Ford/
リアルクローズが主流を占める近年のファッションシーンにおいて、“着飾る”ための洋服をコンセプトに掲げ、ミニマルでありながら、随所に独創的なアイデアが散りばめられたアイテムの数々で人気を集めているBED j.w. FORD。2017春夏シーズンよりファッション・ウィークに参加し、ランウェイショーを行うとともに、TOKYO FASHION AWARD 2017の受賞デザイナーとして、2017年1月と6月、2シーズンにわたってパリでのショールームにも参加した山岸慎平氏に、ブランド立ち上げの経緯から、ブランドのコンセプト、海外を見据えた今後の展望などを伺った。
ブランド立ち上げの経緯を教えてください。
もともと僕はファッションデザイナーになりたいと考えていたわけではないのですが、洋服は好きで、高校卒業後に上京して古着屋で働くようになりました。そこで地元では出会えなかったような人たちと知り合うようになり、ある日、下北沢の居酒屋で、今の会社の代表である高坂圭輔からバンドを組むようなノリで、ブランドをやらないかと誘われたことがきっかけです。そうした経緯のため、ファッションの専門的な勉強もしていませんでしたし、海外の有名ブランドなどで修行したという経験などもありません。
ブランドのコンセプトなども高坂さんと一緒に考えたのですか?
その辺はすべて自分に任せてもらいました。もともと高坂もデザイナーとして仕事をしていたのですが、ブランドを始めるにあたり、クリエーションに関わることはすべて任せたいと言ってくれたんです。当時はお互いにまだ20代半ばで、一番自分勝手に生きている時じゃないですか。そんな時期に人に委ねるといった決断をするのは、なかなかできないことですし、純粋にうれしかったです。今も僕がデザインに集中できるように、営業や経営面などデザイン以外の部分をすべて見てくれている高坂は、自分が持っていないものをすべて持っている人間だと思っています。
「着飾る」という言葉をブランドコンセプトに掲げられていますが、そこにはどんな思いがあるのでしょうか?
女性は「着飾る」ということがすごくナチュラルにできると思いますが、男性だと「カッコつけている」とか「ナルシスト」などネガティブにとられることが多い気がします。でも、せっかくお金を払って洋服を買うわけですし、「素敵な服だね」と言われたい気持ちは性別問わず必ずあるはずです。ブランドの方向性を考えている時期に、人気がある男性有名人の名前を書き出してみたことがありましたが、そのほとんどがナルシストやロマンチストなんじゃないかと気づきました。少し照れくさいイメージがある言葉ですが、そもそも自分に酔っているくらいじゃないと周りの人を惹き付けることはできないだろうし、洋服にしてもそれは同じなのではないかと思います。
毎シーズンのテーマはどのように決めていくのですか?
日常の生活や友達と交わした会話などから得た漠然としたイメージをもとに、生地をつくったり、デザインをする中でテーマが明確になっていくことが多いです。僕は仕事場から自宅まで40分くらいかけて歩いて帰ることが多いのですが、この時間が自分には一番大切で、歩くことで自分の頭の中にある様々な考えを擦り合わせることができます。導き出したテーマに納得する儀式のような時間かもしれません。僕は、自分が何もできないということを人一倍自覚していますので、自分の思いつきなどにしても、本当にそれでいいのかと一度疑うようにしています。服づくりにおいても、そうやって自分のことを疑ったり、分析していくことからイメージを固めていくようにしています。
そのイメージを洋服に落とし込む段階ではどんなことを大切にしていますか?
大切にしているのは、色と生地です。視覚情報の中で最も直接的なものは色と形だと思いますが、メンズウエアにおいて形というのは大きく変わることがないからこそ、色については他の人たちよりも一歩踏み込みたいという思いが強く、雑誌の切り抜きからチョコレートの包装紙まで、自分が惹かれた色をストックするようにしています。生地に関しては、9割はオリジナルでつくっています。僕らの屋台骨である全国の機屋さんや工場さん、パタンナーさんと密にコミュニケーションを取っていく中で、みなさんが自分たちが頼んでいないものまで提案してくれるようになり、こうした関係性を築けたことでブランドが強くなれたと感じていますし、とても感謝しています。
2017年1月にパリで行われたTOKYO FASHION AWARD「showroom.tokyo A/W 2017」の様子
先日、TOKYO FASHION AWARD 2017 の受賞ブランドとして、2シーズンにわたってパリのショールームに出展されましたが、海外への意識についてもお聞かせください。
以前から海外でショーをすることをブランドの目標にしてきました。ただ、それを実現するために何をすべきなのかが具体的にわからないところがありましたが、今回初めて海外を経験したことで、自分たちができること、できないことがそれぞれ明確になり、海外でのショー発表への道すじが明確になったと感じています。
海外の経験は、ご自身のクリエーションにも影響を与えそうですか?
現地では、この街の風景にはどんな色が合うだろうとか、今後のものづくりについて考えられる時間が多かったです。また、ロケーションと洋服の関係性というのは重要なテーマだと思うので、自分の知らない土地を歩くということはやはり刺激になります。その刺激が自分にどう活きてくるか自分でもまだわかりませんが、今後もブランドの核は変えずに、より磨きをかけていくことが大切なのだと改めて感じています。
Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto