テキスタイルラボ introduced by DISCOVERED
THIS IS MY PARTNER
岐阜市は毛織物の産地である一宮市や津島市から生地を仕入れ、東京・大阪に並ぶ問屋街として栄えてきた地域。
現在も多くの工場があり、テキスタイルラボは産地内の職人たちと連携し、多種多様なクリエイションを発信している。
有限会社テキスタイルラボ
Textile Labo co.,LTD
岐阜県岐阜市/創業:2003年/事業内容:ウール、綿、麻、絹などの織物製造・卸他/従業員数:5名
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テキスタイルデザイン
量産体制のもと、分業化、効率化が進み、同じものづくりの円の中にいる職人とデザイナーに距離ができるようになった。ブランドが新たな生地を作り出すときには、デザイナーの意思を汲み取り、工場へと最終イメージを橋渡しする翻訳家のような存在が重要となる。
今、この翻訳家がより求められる一方で、能力のある翻訳家が不足してきたという。
テキスタイルラボ 代表取締役の早野氏は日本を代表する数々のデザイナーから、絶大なる信頼を得るテキスタイルクリエイターである。
岐阜市内のテキスタイル会社を経て、2003年に有限会社テキスタイルラボを設立。早野氏のもとには新しいテキスタイルデザインの相談が次々に舞い込み、尾州産地を中心に各工場の職人との間で新しい生地が作られていく。
ゼロからのクリエーション
事務所内にはアーカイブの生地が所狭しと並び、これまでの歴史を物語っている。
生地もデザインもクリエイションする。「クリエイション」こそが早野氏と各ブランドの共通項となっている。2008年から始まる、テキスタイルラボとDISCOVEREDの協業は、理想の関係をつくってきた。
「DISCOVEREDさんは生地値より、こだわりを優先して作りたい生地を依頼してくれる」と早野氏は言う。事務所内でひと際目を引く入り口のマネキンが着ているウールのコートは、DISCOVEREDの2013秋冬の商品で、デザイナーの木村氏が最も印象深いという縮絨加工の製品である。通常なら効率性を優先し、同時に大量の製品が縮絨機に入れられるが、こちらは職人のもとで1点1点縮絨をかけることによって、製品ムラのない丁寧な仕上がりになるという。
「昔は、デザイナーさんはクリエイトする存在だったけれど、今は新しい生地を作るより、有り生地を使うケースが多くなった。デザイナーさんには、時には難しいオーダーを投げて欲しい」と早野氏は語る。
難しい生地作りに挑戦することで、早野氏も現場の職人もスキルアップにつながると言う。
尾州の工場
テキスタイルラボの協力工場で使われているシャトル織機は手織りに近い旧型の低速機械で、高速織機が1日に数百メートル織ることができるのに対し、十数メートルのみと生産性は低い。しかし、シャトル織機でしか織れない素材や組織があり、早野氏の作るテキスタイルには欠かすことはできない。
こういった手作業が多く入り、生産性が上がらないものづくりは、その分コストに反映するため、年々受注量が減ってきているのも事実である。
工場を見学させてもらった時、ちょうど生地を織る前の経糸づくりをしていた。
こだわりの重なり
「絶妙なニュアンスを汲み取っていただける早野さんのセンスを信頼している」とデザイナーの木村氏は言う。綿、ウール、シルク、麻などの異素材を巧みに使い、産地の各工場と連携してデザイナーのシーズンごとのイメージをテキスタイルに落とし込んでいく早野氏。
編集的なものづくりではなく、ゼロからクリエイトする。互いにリスペクトし合った関係にある、テキスタイルラボとDISCOVERED。
どんな生地で、新しいファッションが創られていくか、これからも目が離せない。
Interview&Text:Shinya Miyaura (Secori Gallery)
Photography:Yohey Goto