Interview & Report

Hiroaki Shitano

Hiroaki Shitano 下野 宏明

WHIZ LIMITED

1976年東京出身。LUMP co.,ltd.代表、WHIZ LIMITEDデザイナー。Finest Classics(最高の定番)をコンセプトとしたA.W.Aも手掛ける。

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THE CONTEMPORARY FIX・吉井雄一氏のプロデュースのもと、「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2012 S/S」最終日に、一般のファンにも開放して開催されたメインイベント「VERSUS TOKYO」。その舞台において初のランウェイショーながら、10年を超えるキャリアを持つブランドらしさを表現してみせたのが、下野宏明氏率いる WHIZ LIMITED だ。
モードとストリートの壁を超えた東京ならではのスタイルをいち早く提案し、自らが欲しいと思うものを作ることにこだわる、ある意味、消費者としての視点も持つ。絶大な支持を得てきた下野氏が、ショーの舞台裏やブランドのスタンスなどについて語ってくれた。

ブランド初の試みとなった、昨年10月のショーの感想から聞かせてください。

下野:吉井(雄一)さんに誘って頂いたのがきっかけです。吉井さんとは、2010年、ブランド10周年として、過去のアーカイブをリニューアルしたコレクションを発表した時の展示会に来て頂き、そこからお付き合いをするようになりました。今までは、ショーというのは限られた人たちのためのもので、僕らのような小さなブランドができるような場所ではないと思っていたのですが、今回吉井さんに誘って頂き、参加することになりました。やったことのないことを完全に一から行う感じだったので、ブランドを立ち上げた当時に戻ったようで、とても新鮮でした。

ショーに合わせて、服作りやスタイリングなど、普段と変えた部分はありましたか?

下野:(VERSUS TOKYOの)話があった時にはすでにデザインは進めていましたし、あくまで、これまでの延長でやろうと思っていたので、大きく変えた部分はありません。これまでもカタログやプレゼンテーション映像などのスタイリングは自分でやっていて、当初ランウェイショーということを少し意識して見せていこうかと考えていました。ただ、会場を視察すると、屋外の割と普通な風景の場所だったので、あまり作り込みすぎても気持ち悪いかなと思い、演出担当の方と流れなどを確認しながら、普段通り見せることにしました。

2012 S/Sコレクションのテーマについて教えて下さい。

下野:テーマは「UNITE」にしました。3.11以降、東京でもデモなどを目にする機会が増えましたが、そうした怒りの感情がインスピレーションソースになっています。自分が体感した気持ちのようなものを洋服に落とし込んでいきました。基本的に僕は、洋服はあくまでも洋服として捉えていて、自分の気持ちや趣味などはあまり反映させないようにしているのですが、今回はちょっと特別でしたね。

WHIZ LIMITED 2012 S/S

ショーの後、周りからの反応はどうでしたか?

下野:洋服だけではなく、音楽をはじめプラスアルファで入れていける要素が色々あるのでイメージを伝えやすいし、これまで展示会やカタログ、映像などで見せていた時にはなかった反応もあったので、ショーを見に来てくれた人たちにとっても新鮮なものになったんじゃないかと思います。あの環境にいた人だけが体感できるものがあったはずだし、また次もやってみたいなと思いましたね。

先日、フィレンツェのピッティ・イマジネ・ウォモで開催された「TOKYO FASHION WEEK in ITALY」の「VURSUS TOKYO」でもスペシャルアイテムを出されていますね。

下野:最近のアーカイブの中から生地を変えて作り直したものを2点、だいぶ前に刺し子でデニムパンツを作ったことがあるのですが、それをGジャンにしたものを1点出しています。刺し子は日本らしいものでもあるので、少し意識して入れてみました。まだ詳しい反応はわからないのですが、現地に行っていたファセッタズムの落合(宏理)くんから良かったという話を聞きました。これからどんな反応があるか楽しみですね。

ピッティ・イマジネ・ウォモで開催された「TOKYO FASHION WEEK in ITALY」に出展したアイテム

そのファセッタズムをはじめ、「VERSUS TOKYO」に参加していた他のブランドのデザイナーとは、もともと面識があったのでしょうか?

下野:知り合いの方はいなかったのですが、それぞれのブランドの活動はなんとなく知っていました。今回色々話をしてみて、僕らが当たり前だと思っていたことが、彼らにとってはありえないことだったりすることも多く、やり方やスタンスが全然僕らと違うということがわかりました。例えば、うちは新作の発表を、お店に並ぶ1週間くらい前までやりたくないと思っていますが、逆に彼らはショーなどでいち早く発表したいと考えていたりする。あまり早くメディアなどに出てしまうと瞬発力がなくなってしまうと思うので、あえて情報を出さなかったりするのですが、そういう話をするとみんなに驚かれますね(笑)。

下野さんがファッションデザイナーになるまでの経緯を教えてください。

下野:僕が通っていた高校は私服だったのですが、当時からファッションがすごく好きで、雑誌もよく読んでいて、洋服やレコードをたくさん買っていました。その頃は将来スタイリストになりたいと思っていたのですが、「こういうもの(スタイリストの仕事)って学校で教えてもらうようなことなのかな?」という疑問があったので、専門学校には行かずに洋服屋でアルバイトをするようになりました。高校卒業後はすぐにMacを買って、Tシャツをデザインして自分で刷って売るようになったんです。それが徐々にキャップやスタジャン、ジャケットなどに広がって、24歳の時に100万円で作れる分だけのサンプルを作って、ブランドをスタートさせました。

ブランド立ち上げ時のビジョンなどはありましたか?

下野:あまり考えてなかったですね。当時は裏原ブランドの最盛期で、もうこれ以上ないものはないんじゃないかというくらい色々なものがあったので、自分は自分で好きなものを作って発表していこうと思っていました。業界のコネなども特になかったので、とにかく洋服を作って、いつでも人に見せられるように大きなバッグにサンプルを入れて持ち歩いていましたね。友達が雑誌の人と話していたら、その場でサンプルを広げて見てもらう、ということもしていました。よく業界の人に、「君たちは誰の知り合いで、どうやって出てきたんだ?」と聞かれたりもしましたが、基本的に自分が欲しいと思うものを作ることにこだわっていて、ある意味、お客さんと同じ視点でやってきているので、それが今もベースになっています。

消費者とのコミュンケーションにおいて大切にしていることはありますか?

下野:シーズンの立ち上げ時などには自分もショップに出てお客さんと話すようにしています。あと、年に1度だけ全国のWHIZファンの人たちが東京に集まるイベントがあるんです。メディアなどを通して告知をするわけではなく、知っているお客さんだけが集まってくれるという感じで、毎年シーズンの立ち上げに先行して新作の映像を見せたりする交流の場になっています。WHIZの洋服が好きという共通項があるので、みんなすぐに仲良くなれるんです。ブランドを始めてから10年以上、基本的には毎年同じことを繰り返しているとも言えるので、こうしたお客さんとのコミュニケーションが大きなモチベーションになるし、とても救われているところがありますね。

やはり消費者との関係性がブランドを支えていく最大の基盤になっているようですね。

下野:表現をしている人はみんな同じだと思うんですけど、全員に気に入ってもらうものを作ることは絶対にできないですよね。周りの評価は後からついてくるものだし、理解してくれない業界の人たちもいると思いますけど、後ろを振り返れば自分たちの服を買ってくれる人たちがいるというのはとても心強いです。ブランドを始めた時からずっと同じ気持ちなのですが、周りの反応はあまり意識せず、自分がいいと思ったことをフラストレーションをためずにしっかり出していくということを、これからも継続していければと思っています。

次回もショー形式のコレクション発表になるということで、そちらもとても楽しみです。

下野:ショーだからといって特に気負うことなく、いつでもどこでも着られるような自分たちの洋服を発表していこうと考えています。うちみたいなブランドが2、3回ショーをやることで、隣にいるブランドも「うちもやってみよう」と考えてくれるんじゃないかなと思うんです。もちろんブランドによって向き不向きはありますけど、単純に僕も友達のブランドのショーをもっと見てみたい(笑)。そんなに構えなくてもいいんじゃないかなと思うので、どんどん壁を乗り越えて、ショーをやってみてほしいなと思いますね。

INTERVIEW by Yuki Harada

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