Interview & Report

久保 嘉男 Yoshio Kubo

久保 嘉男 Yoshio Kubo yoshiokubo(ヨシオクボ)

yoshiokubo Designer

2000年Philadelphia University’s school of Textile & Scienceファッションデザイン学科卒業後、オートクチュールデザイナー Robert Dane氏のもと4年間ニューヨークでクチュールの全てのコレクションを氏と共に作製に携わる。帰国後 yoshio kubo 05年S/Sよりコレクションを発表。

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2022SSコレクションを昨年5年ぶりに東京で発表した「yoshiokubo」。続く、楽天ファッション・ウィーク東京22AWではブランドとして初めてデジタルドレスの発表を伴うコレクションを披露するという。先日パリメンズファッションウィークでは凧上げを着想源とした日本の古き良き文化を感じさせるコレクションを発表したばかりの「yoshiokubo」が、最先端の技術を使用した取り組みによって東京で次はどんなファッションを見せてくれるのか、デザイナーの久保嘉男氏に話を伺った。

前回のコレクションは、東京で5年ぶりの発表となりましたね。東京でランウェイショーとしての発表に至ったのにはどのような理由があったのでしょうか?

数シーズンパリでデジタル発表を続けていたのですが、デジタル形式の発表はリアルなファッションショーをまだ超えられていないなという感覚があって。映像で雰囲気だけ見せることはできるけど、1着1着の生地感や動いたときの表情が見せられていないという思いが続いていたので、東京でフィジカルなショーとして開催することにしました。

1月にパリメンズファッションウィークで22秋冬コレクションを発表されていましたが、次の東京ではデジタルドレスを含むコレクションを発表されると伺いました。

パリで発表したコレクションは、小さく折りたたんだ帽子がワンタッチでボーンと大きくなる、ポケモンのようなイメージの帽子を僕が小さい頃に母親が使っていて、その記憶が今回のテーマである凧揚げにつながった面白いコレクションに仕上がりました。自分が日本を代表しているリーダーだなんて思っていないですが、日本のそういう古き良き文化をテーマにした洋服づくりは面白いと思っています。東京ではそのコレクションの続きをハイブリッド化し、デジタルドレスの発表を含めて新しいコレクションとして行う予定です。

今回なぜデジタルドレスに取り組むことになったのでしょうか?

デジタルな世界に大きな可能性を感じましたし、とにかく僕は新しいことに挑戦するのが好きなんです。現在デジタルドレスとして世に出回っているものを、リアルに洋服を作っている立場から考えると、より細部にまでこだわった洋服の提案ができるのではないかと思いました。また、いつも1シーズンのコレクションでは通常30〜35のルック数を想定してデザインしますが、数を絞って自分のクリエイティビティを凝縮し1点に集中してピースを作り上げる経験ってこれまでになかった。1点でコレクションをダイナミックに表せる洋服を作るという行為を面白いと感じたのでやってみようと思いました。

リアルな洋服を生業にしているデザイナーにとって、実際に人が着用できないデジタルなファッションをどう捉えていますか?

デジタルで着用する洋服について毎日考えている中で、本当に可能性が無限大だなと感じていて。僕は洋服を考えるときにまず縫い代や縫製のことを考えるのですが、そういう制限が全くないので、服作りのプロセスに対して自分がすごく固定概念を持っていたなと気づきましたね。着心地にこだわり続けて洋服を作っていて、そこに自信があるのも確かですが、着心地を考えないでいい洋服は想像のままで作り続けることができるので、クリエイティビティを拡張できるような感覚があります。デザインとしてはコスチューム作りに近いですね。

今回の挑戦は、久保さんの服作りにどんな影響がありそうですか?ブランドとしての今後についても、聞かせてください。

今後も服作りの方向性が変わることはないですが、デジタルファッションの世界は今想像しているよりもはるかに拡大すると思っているので、名前を隠した上でデジタル上のコンペティションをやったときでも評価してもらえるような表現に挑戦していきたいと考えています。
リアルな服としては、より多くの方に着てもらえるように実直に服作りを続けていきたい。大企業と協業して、より多くの人に着てもらったり使ってもらえるようなものを作ってみたい想いはあります。あと、制服を作りたいんです。毎日着てもらえたり、誰かの記憶に残るような洋服を作りたい。

最後に、東京での発表をご覧になるお客さま、ファッション関係者の皆さまにメッセージをお願いします。

母親が縫い子だったこともあって、ファッションデザイナーになることを目指し始めた小さな頃から47歳の今までずっとファッションを探求し続けてきた感覚があります。それでも、いつもコレクションを発表する頃には、もっとこうすればよかった、もっとこんなことをしてみたいと、次はこうしたら面白いんじゃないかと、ずっと考え続けていて。今回の発表では、こんなことも「yoshiokubo」は出来るのかと驚いて欲しいし、これからの可能性も感じてもらえたらと思います。

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