Interview & Report

小松 雄二郎 Yujiro Komatsu

小松 雄二郎 Yujiro Komatsu blackmeans(ブラックミーンズ)

blackmeans Designer

2005年、岐阜県の皮革衣料の縫製工場東京営業所立ち上げという形で、小松雄二郎、有賀貴友、有賀晶友の3人により製品加工チームとして、OEMの営業業務に携わり、2008年、ファクトリーブランドとして、blackmeansをスタート。その後、2011年、工場から独立。2019年、有賀貴友が退社し、現在では小松雄二郎、有賀晶友によってデザインが行われている。

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Rakuten Fashion Week TOKYO 2022 A/Wで初の単独ランウェイショーを行う「ブラックミーンズ」。自身のルーツであるパンク、モーターサイクル、民族、ハードコア、モードなどの要素が統合されたコレクションを展開しているが、そのデザインは刺激的かつ前衛的でありながら日本古来の文化が漂う“独特な和”を感じさせる。今回のランウェイショーは、古代から続く「日本の美」を国内外へ発信し、次世代に伝えることで、更なる未来の創生を目指す「日本博」(*)の一環として実施される。「ブラックミーンズ」はまさにそのコンセプトに相応しいブランドと言えるかもしれない。本ブランドのデザイナーであり代表も務める小松雄二郎氏に、今回のランウェイショーに向けた思いやものづくり、展望などを伺った。

(*)主催:文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構)/共催:経済産業省、国立新美術館、SHIBUYA TSUTAYA、渋谷PARCO

Rakuten Fashion Week TOKYO初参加で、「ブラックミーンズ」としても初の単独ランウェイショーとなります。どのような経緯があって参加されることになったのでしょうか。

以前「LEATHER JAPAN」という日本の皮革製品を海外に発信・プロモートするプロジェクトに参加していて、JFWとはご縁がありました。10年程前になりますが、このプロジェクトでNYで合同ショーを行ったことがあります。日本のレザーやファッションだけでなく日本の文化そのものを見せられるようなショーをしたいと考え、ロックやパンクの影響を受けつつも日本やアジアというエッセンスを取り入れた独特の音楽をやっているタートルアイランドというバンドにもショーに参加してもらいました。僕たちのレザーとタートルアイランドの音楽をセットで見せることで、日本のレザーやファッションがより伝わりやすくなるのではないかという狙いがありました。いつか東京でもやりたいとずっと思っていたところに、JFWから今回のお話をいただき、またとないチャンスだと思い参加を決意しました。内容は全く違っても僕の中ではNYの続きという意識もあって、「ブラックミーンズ」というブランドの歴史の一部としてすごく重要な意味を持つショーになるのではないかと思っています。

今回のショーは「日本博」の一環として行われるそうですが、その点はどう感じられましたか。

日本の文化としてのファッションを発表することが企画の趣旨であり、僕たちに期待されていることだと思いました。ファッションはもともと海外のものですが、日本人の表現力や技術力で日本独自の文化に昇華させてきたということを見せるには、僕らのコレクションだけでなく、より強い表現をするためにはタートルアイランドの音楽が不可欠だと考えています。今回のショーでは、日本の古くからある服飾や音楽という文化を、今を生きる僕たちが今の解釈で表現した形で見せたいと思っています。

通常は展示会でコレクション発表されていますが、今回はランウェイショーでの発表ということで意識されていることはありますか。

僕含めうちのスタッフはコレクションブランド出身者が多いこともあり、普段からリアルクローズから逸脱した服を作っているため、今回のショーではいつもやっていることをさらに強く見せられたらと思っています。 これまでの「ブラックミーンズ」ではイギリスやロック、パンクに日本的な要素をプラスするという感じで、襟や袖をキモノのようなデザインにしてみたり和のモチーフの鋲を付けたり、ストレートに和を感じさせるデザインが多かったかもしれませんが、今シーズン(2022年秋冬)のコレクションでは、和の要素をこれまでと少し違った落とし込み方にしようと考えています。

創作活動についてお伺いしたいのですが、小松さんがレザーでものづくりを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

もともとDIYやカスタムが得意でしたが、パンク系のショップ店員をやっていた頃に「革ジャンを作りたい」と思ったことがきっかけです。服飾の勉強をするために文化服装学院に入り、卒業後は「20471120」と「アンダーカバー」でレザー担当として経験を積みました。実はその時は「革ジャンを作りたい」という思いを忘れていて、ショップ店員時代に培った革の知識があったことと、革製品は生産管理が難しく敬遠されがちですが僕は喜んでやっていたので(笑)、レザー担当を任されていた感じでした。

その後、どのような経緯で「ブラックミーンズ」を立ち上げられたのでしょうか。

「アンダーカバー」で革製品を委託していた工場が、東京支社を立ち上げるということで、僕に声を掛けてくれたんです。岐阜県にある皮革衣料の縫製工場で、営業ツールとして様々な革製品のサンプルが必要ですが、委託されて作ったものは社外に出せないため、営業で使えるサンプルを自社で作らなければならず、革の扱いに慣れている僕に声を掛けてくれたそうです。サンプルはデザイナーが革製品を作るために参考にするものなので、革の可能性を最大限に見せるために、極端なくらいにテクニカルで凝った加工や幅広いカラーバリエーションを揃える必要があり、その延長線上にファクトリーブランドを立ち上げるという会社としての意向もありました。それで2005年に東京支社を立ち上げ、ファクトリーブランドとして2008年秋冬シーズンに「ブラックミーンズ」をスタートさせました。

デザインのインスピレーション源はどこにありますか。また、シーズンテーマなどはどのように決めているのでしょうか。

僕はデザイナーでありながら、他の業界の方々と比べたら、あまりファッションに精通しているとはいえないような人間です。服そのものよりも、作ることが好きなのかもしれません。楽器など人の手によって生み出されたものに興味があって、そういったものが服づくりのインスピレーション源になっています。シーズンテーマも意識して設定していませんが、ここ最近は “スポーティ”という大きなテーマがあります。「ブラックミーンズ」のブランドイメージから敢えてかけ離れた要素を足すことで新鮮さだったり、ちょっとしたユーモアを感じてもらえるのではないかと思っています。

ファッション業界ではSDGs を標榜する企業が増え、Rakuten Fashion Week TOKYOでもSDGsに関する企画やイベントを実施しています。「ブラックミーンズ」ではヴィーガンレザーの商品を展開されましたが、いかがでしたか。

コラボレーション商品でヴィーガンレザーのアイテムを製作しました。ヴィーガンレザーはまだまだ進化の余地があると思っています。実は身近にヴィーガンの人がいて、それを表明すると周りの人に気を遣わせてしまい申し訳ないという気持ちから隠しています。今後、ヴィーガンを志向する人たちは確実に増えていくと思うので、ヴィーガンとそうでない人たちが分かり合えることが大切だと思っています。今は皮革製品メインでやっていますが、“0か100”という考え方ではなく、僕自身もヴィーガンについて理解を深めながら、ものづくりをしていきたいと思っています。

今後の展望をお聞かせください。

これまで様々なコラボレーションをやってきましたが、今後は“一点もの”のコラボレーションアイテムを展開していきたいと思っています。コラボレーションなので普段自社のブランドで作っているものから外れても良いですし、別のブランドの要素や発想が入ることで新鮮な商品を生み出すことができると考えています。昨年、試験的に行った「th」とのコラボレーションがその良い例です。
もし、“自分の好きなものをすべて作り終えた”と感じたら、“自分の好きなもの”という枠の中でやっていたということになると思っています。その枠を超えられるのが一点もののコラボレーションで、これまで以上に解放されたものづくりができるようになるのではないかと思っています。

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