Interview & Report

橋本 祐樹 Yuki Hashimoto

橋本 祐樹 Yuki Hashimoto YUKI HASHIMOTO (ユウキ ハシモト)

TOKYO FASHION AWARD 2020受賞デザイナー

京都造形芸術大学を卒業後、アントワープ王立アカデミーに進学。
学士課程修了後、パリ、アントワープにて「RAF SIMONS」「MAISON MARGIELA」などのメゾンにてデザインアシスタントとして経験を積む。
その後、ブランド立ち上げを見据え、ブランド創りの基礎を再度学ぶため、修士課程へ進学。2018年7月、自身のブランド、YUKI HASHIMOTOを立ち上げ、 2019 SPRING/SUMMER COLLECTION “BAD DAY CAMP” を発表。

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アントワープ王立アカデミーでファッションを学び、在学中にヨーロッパのトップメゾンでデザインアシスタントを経験した後、自らのブランド「YUKI HASHIMOTO」を立ち上げた橋本祐樹氏。2018年のブランド設立からわずか1年足らずで応募したTOKYO FASHION AWARD 2020を見事受賞するなど、今後のシーンを牽引し得る存在として期待が寄せられている。10月に行われたRakuten Fashion Week TOKYO 2021 S/Sではブランド初のランウェイショーを披露し、「宇宙での活動服」をイメージしたコレクションで注目を集めた新星に話を聞いた。

橋本さんがファッションの世界で働こうと考えるようになったのはいつ頃からですか?

20歳前後の頃だったと思います。特段デザイナーになりたいという思いが強かったわけではないのですが、実家が洋服屋だったこともあって芸術大学の服飾科に進学したんです。そして、授業を通じてアントワープ王立芸術アカデミーのことを知り、大学卒業後に留学したことがデザイナーを志す決め手になりました。

アントワープではどんなことを学んだのですか?

日本の大学では洋服の構造やつくり方を順序立てて学んだのですが、一方のアントワープでは、服づくりの前段階にあるコンセプトなどをしっかり考えることに重きが置かれていました。アントワープで学んだことで、良いデザイン、悪いデザインを測るものさしを見つけることができたと思いますし、いま振り返ると、まったく異なるタイプの教育を受けられたことはとても良かったと感じます。

留学中には、クリス・ヴァン・アッシュやラフシモンズ、メゾンマルジェラでアシスタントも経験されたそうですね。

はい。世界のトップデザイナーのもとで働けたことはとても良い経験になりました。洋服をつくるプロセスは三者三様でしたが、皆でものを考え、行動するというチームのあり方は共通していて、将来自分がブランドを立ち上げる時も、一人ひとりがトラブルシューティングをして課題を解決していけるようなチームをつくりたいと考えるようになりました。

ご自身のブランドを立ち上げるまでの経緯を教えてください。

アントワープを卒業した後、ヨーロッパに残って働き続けるという選択肢もありました。ただ、自分のブランドを始めるなら、30歳前後だった当時のタイミングを逃すと、次のチャンスは10~15年後くらいになってしまうのではないかと思ったんです。ちょうどアントワープの最終学年を終える頃に中国の会社から仕事のオファーがあったこともあり、それを機に日本に戻り、自分のブランドを立ち上げることにしました。

ブランドコンセプトに掲げている「NEW ORDER」について、詳しく聞かせてください。

もともと、洋服が持つ重要なディテールや機能は残しつつ、現代に合わせてそれらを進化させていくような服づくりをしたいという考えがありました。着心地だけにとらわれず、時にビジュアル面なども含めて新しいチャレンジをしていきたいという思いもあったので、「新しい秩序」という意味合いを持ち、力強さもあるこの言葉が、コンセプトを示すものとしてピッタリだったんです。

YUKI HASHIMOTO 2021 S/S collection runway show

毎シーズンのテーマはどのように決めていますか?

自分を取り巻く環境や時代の流れの中で感じたこと、その都度気になっているものなどをテーマをすることが多いです。例えば、10月に東京でショーを行った2021年春夏シーズンでは宇宙を題材にしているのですが、コロナ禍に自分たちが置かれている状況というものが理解不能になっていると感じていたので、自分が経験したことのない非日常の場所として「宇宙」に着目しました。

このコレクションは、アーティストのオラファー・エリアソンから着想を得ているそうですが、アートへの関心も強いのですか?

はい。もともとアートは好きなのですが、自分のブランドでアーティストのような表現をするのは難しいですし、一方で、ビジネスの面にばかり目を向けてしまうと、本来自分がつくりたいものからは離れていってしまう。自分の中には、良くも悪くもアーティストにはなれないというジレンマがあるのですが、だからこそアートに惹かれるところがあり、今回のようにインスピレーションソースになることも多いんです。また、アートは自分だけではなく、周りの人がどう感じたかということを聞けるのも面白いと思っています。チームのみんなで美術館に足を運び、各々の感想を話している中でクリエーションのヒントが見えてくることもあります。

2020年は、新型コロナウイルスの影響で業界にも大きな変化があった1年でしたが、ファッションに対する意識や服づくりの考え方などで変わった部分はありますか?

外出制限によってこれまでのようにリサーチに行けなくなったり、オンラインでコレクションを発表したりと、ブランドの運営やデザインのプロセスにおいて変わらざるを得ないことは少なからずありました。一方で自分たちは、コンセプトなどブランドの根底の部分は保ちながら、アウトプットの形は時代とともに変化していくべきだと考えてきたところがあるので、服づくりのスタンス自体は変わっていません。これからも自分たちが信じているものをつくり続けていくつもりですが、それを純度を下げずに伝えていくためのプレゼンテーション方法については、改めて考えていく必要があると強く感じています。

今後のブランドの展望についても聞かせてください。

いまのところ、いつまでに何を実現したいといった具体的なイメージはなく、まずはいま見えている課題の解決にチームであたりながら、ブランドの運営を続けたいと考えています。これからオンラインツールなどはますます普及し、コミュニケーションの形は変わっていくはずです。そうした時代に集まってものづくりをしている以上、いかに一人ひとりがしっかり物事を考え、全体にフィードバックしていけるのかということが大きな課題になりますし、そこが最も面白いポイントなのかなと感じています。

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

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