Interview & Report

高橋 悠介 Yusuke Takahashi

高橋 悠介 Yusuke Takahashi CFCL(シーエフシーエル)

CFCL FOUNDER & CREATIVE DIRECTOR

1985年生まれ、東京都出身。文化ファッション大学院大学修了後、2010年株式会社三宅デザイン事務所入社。2013年にISSEY MIYAKE MENのデザイナーに就任し、6年にわたりチームを率いる。2020年同社を退社後、CFCLを設立。
2021年第39回毎日ファッション大賞 新人賞・資生堂奨励賞及びFASHION PRIZE OF TOKYO 2022を受賞。

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2021SSコレクションでのデビュー以降、パンデミック最中にも関わらずグローバルで取引先数を伸ばし、業界内外でもブランドの理念やクリエイションが高い評価を得て、FASHION PRIZE OF TOKYO 2022を受賞した「CFCL」。先日パリ・ファッションウィーク公式スケジュールにてVOL.4(22秋冬)コレクションを発表し、東京でも凱旋イベントを3月17日に控えている。今後の活躍が大いに期待されるブランドの現況について、デザイナーの高橋悠介氏に話を伺った。

楽天ファッション・ウィーク東京として初めてお話を聞かせていただきますので、まずはブランドのプロフィールを聞かせてください。

「Clothing For Contemporary Life」の頭文字を取ったブランド名の通り、現代生活のための衣服をコンセプトとして2020年に立ち上げました。パーソナルな位置付けの洋服というより、ブランドの理念や美意識に一人でも多くの共感者を増やして社会の基盤となるような洋服を届けられたらと思っています。

ものづくりの上で大切にされていることは何でしょうか?

CFCLでは、「ソフィスティケーション」「コンフォート&イージーケア」「コンシャスネス」の3要素を重視しています。1点目のソフィスティケーションでは、カジュアルな素材として捉えられがちなニットで構成しているブランドですが、生活様式や服装に対する価値観が大きく変化する現代に生きる人々に対して、仕事、家事、ドレスシーンなど多様なTPOに対応でき、1日の暮らしを1着で完結できるウェアを提案しています。コンフォート&イージーケアでは、ウールや冬用のアウター、キャップなど一部商品を除いては家庭の洗濯機で洗えてシワにならない素材を使用しています。3つ目のコンシャスネスでは、ブランドとして社会的責任を全うすることを目指していて、「B Corporation」という国際的な認証制度の取得を進めています。昨年5月に認証に向けた申請を行い現在最終審査の段階にあります。CFCLが取得となると、日本で7社目、アパレルでは初めての認証となります。
この3要素を満たすことが現代生活のための衣服であると考えています。

B Corporationの取得に向けた具体的なアクションはどういったものでしょうか?

B corpからの質問項目はSDGsの17のゴールに則した形で300に達し、それぞれをエビデンスを持って答えていく必要があります。全ては難しいので「環境」分野の代表的なアクションを3つご紹介します。1点目は、日本政府が目指す2050年までのカーボンニュートラル達成目標を踏まえ、原材料の調達から、生産、流通、廃棄・リサイクルに至るまでの環境影響を数値化するLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施しています。この算出の過程でトレーサビリティも追跡し、2025年までに全型をLCA実施対象範囲をとすることを目指しています。 2点目は、商品に使用する素材は、地球環境や基本的人権への責任が認証されたGRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)などの国際基準を満たした再生素材を選択し、その使用率を公表しています。Vol.2のコレクションでは全生産量に対して58.84%でした。2030年までに100%とすることを目標にしています。
3点目では、SDGsパフォーマンスガイドラインを作成し、サプライヤー13社に対してアンケートを実施ました。現状を把握した上で、生産を担ってくれている中小企業と共に生産業務のみならず、電力会社の切り替えや人事待遇など含めて改善に取り組んでいます。

そうした姿勢はFashion Prize of TOKYO 2022の審査においても大きく評価された点だと伺っています。高橋さんは、CFCLをどんな立ち位置のブランドにしたいと考えていらっしゃいますか?

これだけ世の中に服が溢れている中で、僕がCFCLとして洋服を作る意味は、より多くの人がCFCLの服を着ることで社会が良くなるということだと思うんです。「ニット×モード×コンシャスネス」なブランドは世界に存在していない、ブルーオーシャンなマーケットですし。従来のニットドレスといえばフォークロアが一般的で、CFCLのようなモードなニットアイテムを提案するファッションブランドは本当に限られていて、プロダクトとしての将来性も非常に高いと思っています。例えば電気自動車といえばテスラ、ニットといえばCFCLのようなイメージで、アパレル産業の中でもフレキシブルな存在として、唯一無二の価値を作り出していきたいですね。

Fashion Prize of TOKYO 2022を受賞されて、パリでまずコレクションを発表されました。発表にあたっての心境をお聞かせください。

受賞による支援を受けてパリ・ファッションウィークの公式スケジュールでコレクションを発表するので、これまで以上にブランドがグローバルな矢面に立たされ、日本企業としての責任が大きくなると感じています。
今回は、デジタル発表のほか、パリのギャラリーペロタンで展示会も開催しました。海外で展示会を行ったことは今までないのですが、この1年間で商品、ルック写真とスワッチだけで海外からの発注は随分増えました。写真でわかりやすい、アイコニックな物が売れていく印象です。今回はそうした海外バイヤー、ジャーナリストに初めて実際にコレクションを見ていただける機会なので、ブランド紹介を兼ねたインスタレーションと共にご覧いただきました。
店頭では、シーズンが終了した途端に商品の価値が下がり、近くの棚に置かれる新商品と名を打つ類似品が価値を持つのが近年のファッション産業です。コロナは本当に「新しいモノが価値なのか」という問い私たちに突き付けたと感じています。新しいモノを常に発表し続けることで価値を保ってきたパリ・ファッションウィークですが、その問い自体が新しい価値観であり潮流だとするのならば、パリで発表する事は挑戦であるし、パリでそれ自体を問う事がCFCLにとって大切な事だと捉えています。

東京ではどのような発表を予定されていますか?ご覧いただく皆様へメッセージをお願いします。

パリで発表した映像をアレンジして、CFCLの世界観を体感していただくインスタレーションを3月17日に表参道ヒルズB3 スペースOで予定しています。パリで発表した映像はポストプロダクションなどを最大限活用し、リアルとバーチャルを行き来し、溶け合うアウトラインを表現しています。男と女や、子供と大人、様々な二元的な考えが見直される時代に、必要なのは柔軟な視点です。東京でのインスタレーションも、コロナを機に議論された「デジタルかフィジカルか」というコレクションの二元論的な思考に対して、その中間である映像や音響のインスタレーションという、フィジカルでしか体感できないデジタル作品の提案となっています。

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