Interview & Report

高橋 悠介 Yusuke Takahashi

高橋 悠介 Yusuke Takahashi CFCL(シーエフシーエル)

CFCL FOUNDER & CREATIVE DIRECTOR

1985年生まれ、東京都出身。文化ファッション大学院大学修了後、2010年株式会社三宅デザイン事務所入社。2013年にISSEY MIYAKE MENのデザイナーに就任し、6年にわたりチームを率いる。2020年同社を退社後、CFCLを設立。
2021年第39回毎日ファッション大賞 新人賞・資生堂奨励賞及びFASHION PRIZE OF TOKYO 2022を受賞。

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FASHION PRIZE OF TOKYO 2022を受賞し、パリ・ファッションウィーク公式スケジュールにてVOL.4(22秋冬)コレクション、VOL.5(23春夏)コレクションを発表したCFCL。国内でも日本ブランドとして初めてB Corpを取得し、旗艦店を表参道にオープンするなど、2022年に最も躍進したブランドと言っても過言ではない。そんなCFCLを率いる代表兼クリエイティブディレクターの高橋悠介氏に現状の率直な気持ちについて話を伺った。

FASHION PRIZE OF TOKYO 2022受賞者として、2シーズンにわたってパリでコレクションを発表されました。この1年、プレゼンテーションに対してどのような意識で臨まれましたか?

3月のパリではデジタルで、9月はフィジカルでプレゼンテーションを行いました。この1年はまず海外市場に対して初めましてという意味合いでのプレゼンテーションを意識し、今後継続して発表を続けることが大切だと感じています。
見せ方の点では、現地の文化に対してチューニングを行えるよう、ベルギーのスタイリストにフィジカルプレゼンテーションへ参加してもらいました。シックでエレガントな装いと捉えてもらえるよう、現地の美意識に合わせてスタイリングを整えましたね。また、これまでのコレクションはポリエステルのポップでカラフルな表現に注力していましたが、今回のVOL.5に関しては黒、グレーを基調に赤、グリーン、ターコイズを使う程度に留めています。2度のプレゼンテーションで手応えを感じており、今後ランウェイショーが開催出来るようになるまでのステップは踏めているかなというところです。

CFCL VOL.5 Collection ©CFCL Inc.

パリの公式スケジュールに参加されてみて、率直に感じたことを聞かせてください。

自分たちのブランドがフランス国益を生み出すような経済的ベネフィットを提供できなければ、パリ・ファッションウィークに公式で参加し続けることは出来ないとパリが持つ敷居の高さを感じましたし、参加し続けるにはパリコレの文化発展に貢献できるブランドであることが求められていることを再確認しました。なぜ日本ブランドがパリで発表をするのかという問いや、グローバル市場における日本ブランドの強みに対して向き合う必要も改めて感じています。

高橋さんが日本ブランドの強み、武器になると考えている点はどこでしょうか?

例えば、コンピュータープログラミングニットで3Dプリンターのように生産しているなど、テクノロジーにおいて先進的なイメージを持たれていることでしょうか。スタイルブランドとは異なる、プロダクトを全面に出しているような、ものづくりを押し出したブランドとしてのあり方は優位かなと。また、やはり西洋的ではない、エキゾチックな美の価値観も武器になると思っています。

今後の海外展開で必要だと感じてらっしゃる点を教えてください。

国内とはマーケットが異なるので、グローバルに対応できる品番を増やす必要があります。エリアのオケージョンに合わせた洋服を検討しなければと。CFCLの洋服は1着で全てのオケージョンをカバーできることを目指していますが、仕事帰りに19時から始まるパーティに参加する日本と違って、仕事帰りに一度自宅に戻り21時からのパーティに備えてドレスに着替えるといった文化を持つフランスの人々にとっては今のブランドの見せ方だとピンと来ない可能性がありますし、ブランドメッセージのあり方や、国内・海外におけるオケージョンやドレスのあり方を整理する必要がありそうです。パリではルーセント素材を使用したポッタリードレスも提案し、これは実際職場で着るには難易度が高いのですが、コンピュータープログラミングニットで可能になった透け感ある表現がフランスの美意識に通じていて面白いと評価してもらえる点でもありましたね。

パリで1年間のプレゼンテーションを終えて、ビジネスの具体的な変化はいかがでしょうか?

2022年11月現在で、海外含めて210ドア程度のお取引先がある状況です。VOL.4から来年1月に卸すVOL.5で、国内は約10店舗、海外は約40店舗増えて、取引額でも海外が国内を上回りました。海外ではアメリカ、中国、イギリス、韓国市場の取引額が大きく、シーズンを経るごとにオーダー金額も増やしていただいています。コロナ禍においてVOL.1からVOL.4までは基本的にデジタルショールームだったのが、6月のプレコレ含めてフィジカルで見ていただけるようになったことが大きいですね。
商品としては、洗濯機で洗えたり、シワになりにくい服であることや、ニットのストレッチ性で海外市場に多いプラスサイズ体型もカバーできている点などが受け入れられている要因にもなっています。

今後、ブランドとしてどのようなビジネス展開をイメージしていますか?

国内はドア数としては現時点で最大値に近いと考えています。卸は利益率が低いですが、お客様に新商品に触れてもらう場として重要なので、ブランドのラックをしっかり構成してくださる店舗さんと戦略的にパートナーシップを組んで注力して今後は展開していきたいですね。海外に関しては今ようやくスタートラインに立てた感覚で、着実に売上を伸ばしたいと考えています。
また、表参道に今年直営店をオープンし、来年は八重洲にオープンを控えていて、いずれ関西エリアに出店したいと考えています。併せて直営のEC、越境ECも運営しています。表参道では、今時点で円安メリットも相まってインバウンド客の取り込みも出来ており、今後中国の方々が戻って来たらさらに伸ばせそうです。

ブランドとして海外戦略に大きくシフトしていくタイミングを迎えていますね。

もちろん国内でファンを増やすことも重要ですし、東京に拠点を置く会社として国内の店舗とだから出来る企画やプロモーションもあるので、そのあたりはしっかり取り組んでいきたいですね。
ただ、縮小していく国内市場だけだと売上規模の天井が見えてしまうので、グローバル市場で成長していくことが必至です。スケールアップするためには、最初から海外展開を踏まえなければならない。そして、B Corp認証の過程でも問われたことですが、洋服を作る目的が収益だけではなく、CFCLとしての会社理念を守ることも成長と同時に忘れてはならない。例えば、パリのオケージョンに合わせてイヴニングドレスの品番を増やすことがあっても、そのコストを抑えるために地域コミュニティから離れた場所で生産することを許容はしてはいけない。会社として社員も増えて来たので、理念の共有にも注力しているタイミングでもあります。

FASHION PRIZE OF TOKYOを受賞され、サポートを受けて活動されたことはブランドにとってどのような経験になりましたか?

プレゼンテーションに対して資金的に十分な援助をいただけたことが助かりました、ありがとう御座いました。一方で、パリのコミュニティにどのように参加していくか、ルート開拓は今後自分たちで継続して行かなければならない。賞に恥じない大きな期待を背負って、海外への片道切符をいただくという緊張感ある賞に選んでいただいたと感じていますね。

ブランド、デザイナーとして今後の展望を聞かせてください。

ブランド設立当初からグローバルでビジネスをすることを念頭に置いていたので、その構想においてまず必要だった「直営店のオープン」「B Corp取得」「PFWへの参加」が今年実現し、グローバル展開するブランドとしてのスタート地点に今立てたという感覚です。ここからまたイチからスタートする気持ちで、初心を忘れずブランドのことを知っていただく方を増やしていきたいですね。デザイナーとしては、様々な領域の方、企業から声をかけていただくことも増えたので、世界中の面白い方々とフレキシブルなコラボレーションを模索し続けていきたいと考えています。

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