Interview & Report

森川 マサノリ Masanori Morikawa

森川 マサノリ Masanori Morikawa BASICKS(ベイシックス)

BASICKS Designer

1984年生まれ。
2010年 「CHRISTIAN DADA」を設立
2013年 DHLデザイナーアワード受賞
2015年 毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞を受賞
同年 シンガポール「D'league Group/Richard Mille」とのM&A 子会社化を発表
2016年 パリコレクション公式スケジュールにてランウェイショーを行う
パリ・クチュール組合への加入は日本人では最年少での参加となった
2017年 香港にて「10Asian Designers to watch」の10人に選出される
2020年1月「CHRISTIAN DADA」活動休止を発表
2021年3月「BASICKS(ベイシックス)」を設立

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東京、パリで発表を続け、世界中で熱狂的なファンを生んだ「CHRISTIAN DADA」を休止後、2021年に新ブランド「BASICKS」を立ち上げた森川マサノリ氏。 この23SSシーズン、「CHRISTIAN DADA」とは異なるアプローチで話題を集めるブランド「BASICKS」の世界初ランウェイショーを今季東京で開催するという。久々に東京で見られるランウェイ発表に大きな期待を寄せつつ、森川氏に現在の心境を伺った。

BASICKSのブランドコンセプトやものづくりで大切にされていることを教えてください。

循環する日常着をコンセプトにし、トレンドに左右されないファッションを提案しています。僕自身が好きで集めていた古着をリファインして、コンフォートでリラックスした今の気分に合うものを作っていますね。白のステッチで洋服の輪郭を取ったり、ハートのステッチを入れることで、アイテムが変わっても一目でBASICKSと分かるものにしていて、トレンドやシーズンは変われども長く着てもらえるようなブランドを目指しています。ショーで次々に発表を行う最先端のあり方とは真逆のファッションがあってもいいかなと。
また、リサイクルポリエステルやオーガニックコットンなど、製品の90%は環境に配慮した素材を使用しています。SDGsは意識していますが、ブランドとして無理のない範囲で出来る限りのことをするスタンスであり、まずは着てくれる方が嬉しいと思ってくれる洋服であることを優先してものづくりを行っています。

CHRISTIAN DADA からはものづくりが大きく転換された印象を持ちますが、きっかけは何だったのでしょうか?

CHRISTIAN DADAはトレンドの走りを追求するブランドで、発表もパリで行っていました。資本主義の流れに沿っていて、とても面白いあり方なのですが、少し疲れてしまったところも正直あって。一度立ち止まってみて、自分が出来る等身大のブランドを始めてみようかなと思ったことがきっかけですね。自分自身も年齢を重ねたこともあって、DADAを自分が着ることもなくなってきていて、自分自身のプライベートを反映させたブランドをやりたいなと思ったんです。

現在はどういった事柄がクリエイションのインスピレーション源になっていますか?

友人の着ている洋服だったり、本当に僕自身の日常からですね。DADAの頃は毎シーズン、明確なテーマを定めていたのですが、今はシーズンテーマは設けず多様な要素を取り込んでいます。

現在のビジネス状況も教えてください。

都内で6、7店舗、国内で20数店舗に卸しています。コロナでデリバリーが安定しないので攻めづらいのですが、1年後くらいにはグローバル展開していきたいと思っています。

4年振りとなる森川さんが手がける東京でのランウェイショーを、期待されている方は多いと思います!お話いただける範囲で、ショーの構想についても聞かせてください。

今回のショーは「消費」をテーマにしています。BASICKSは、新しいものを次々に生み出し届けるという感覚のブランドではないので、ショーにおいてもアップサイクルのアイテムやこれまでのコレクションのアーカイブウェアを発表したりします。従来のファッションショーとは異なるプレゼンテーションの形を考えています。
また、CO2削減やe-bike、太陽光発電などサステナブルを推進されているDHLさんからサポートを受けて今回開催するのですが、常に「消費」が繰り返されている最前線でもあるデリバリーセンターをショー会場に選ばせていただきました。こうした場所でショーをするのは国内外でも初めての試みでしょうし、廃棄物からまた新しい価値観が生まれる演出も考えています。自分自身がDADAで長くショーをやってきて、いざやらなくなったときに、自分だったらこういうショーがやりたいと改めて思った、「消費」の問題定義ができるショーを具現化しています。

森川さんにとって、ショーとはどのような価値を持っていますか?

ファッションブランドがやるショーは、見てくださる方を楽しませてなんぼですよ。見ていてこの洋服欲しいと思ったり、ブランドのメッセージを感じて、楽しんでもらいたい。今回のショーも最後までストーリーがあって演出を考えているので、最初から最後まで飽きずにご覧いただければと思っています。

パリでの発表と、東京での発表は、意識に違いがありますか?

場所は関係ないですね。パリでやる意味があるブランドはパリでやればいいし、今はSNSもありますし、東京のファッション・ウィークも面白くなって来ているので、東京で面白いことができるブランドは東京で発表したら良いと思います。パリでショーをやるのにはゼロが一つ違うくらいお金がかかるので、今の僕だったらその1000万分で有名フォトグラファーにルック撮ってもらうことに使いたいですね笑。

東京でのショーを楽しみにしてくださっている方へ、今の想いを聞かせてください。

久々のショーなので、とにかく楽しんでもらえたら嬉しいです。今回はBASICKSとしてのエキシビジョンマッチのような、ブランドとしての特別編のショーに近い感覚なんです。洋服としては普遍的で普通な服ですが、普通な服ほど、スタイリングで変わるから、それを踏まえてショーとして見ていただけたらと。BASICKSとしてショーが成立する瞬間を楽しんでほしいですね。

デザイナーとして、今後の展望も聞かせてください。

現在もBASICKSをやりながら、海外ブランドも含めて他ブランドのコンサルティングもクライアントワークとして実はやっていて。そのあたりの仕事ともバランスを取りながら、自身のやりたいブランドとして、ブランドを大きくしていきたいですね。
僕の中ではBASICKSは、バラード的、ラブソング的な立ち位置なのですが、今後はハードロック的な新しい挑戦も並行して行ってみようかなとも思っています。また、ファッションは作ること自体がサステナブルではないけど、それを変えられるようなメッセージを持ったブランドにも挑戦してみたいですね。

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