INTERVIEW 03/15/2025

MIDWEST 大澤武徳氏×繊研新聞 小笠原拓郎氏 RakutenFWT 25AWの注目ブランドは?

株式会社ファッションコア ミッドウエスト 代表取締役社長 / 繊研新聞社 編集委員

MIDWEST 大澤武徳氏×繊研新聞 小笠原拓郎氏 RakutenFWT 25AWの注目ブランドは?

国内外のファッション・ウィークを飛び回り日本を代表するファッションジャーナリスト、小笠原拓郎氏。独自の選美眼、イベントで国内ブランドを取り扱い、熱狂的なファンを抱える老舗セレクトショップ MIDWEST を率いる大澤武徳氏。それぞれの立場でファッション・ウィークに携わるファッション業界のレジェンド二人にRakuten Fashion Week TOKYO 25AWの見所についてパリでインタビュー。

お二人はどれくらいの頻度で海外のファッション・ウィークに参戦されていますか?

小笠原氏:毎シーズン、メンズ、ウィメンズどちらも観ています。25AWでいうとミラノ、パリです。今日はこの後、Hodakovaのショーを見て、The rowの展示会を回る予定です。

大澤氏:僕はパンデミック前は欠かさず25年くらい来ていましたが、今年の1月、3月がパンデミック後久々のパリです。今回は60ブランド程度回ります。

25AWシーズンのショーで、特に印象に残っているブランドは?

小笠原氏:国内外問わずという前提で、僕はリハーサルで観た KIDILL です。LOUIS VUITTONと KIDILL が同時間のショーだったので、リハーサルで見せてもらったんです。とにかくエモーショナル。自分が作りたいものにずっと注力しているところが本当に好き。ラグジュアリーブランドのショーが富裕層、ヒエラルキーの象徴みたいになってしまって、見せびらかしたい人やインスタでアップしたい人が大勢で。マーケティングの場にショーがなってしまっている状況で、エモーショナルに服を作っているブランドこそ、ファッションの本当に大事なものを見せてくれるように思います。日本も含めて、若いデザイナーのコレクションが今とても良いから一生懸命見ようとしてます。
ウィメンズでは、ここ数シーズンVAQUERAが好きです。ガーリーでやんちゃな服に、ストリートのニュアンスが含まれていて、今回のパリ初日のショーもとても良かった。

大澤氏:MIHARAYASUHIRO に驚きました。ブランド初期から取扱いさせてもらっていますが、びっくりするくらい広い会場で、海外バイヤーも大勢来ていて、すごいなーって思いました。パリで発表し始めた頃の日本ブランドのフロントローはどうしても日本人が中心になりますが、doublet もそうで今は海外の方が多い。付き合いが長くて、商売の良いとき悪いときも知っていて、一緒に商売をしてきた身として純粋に嬉しかったですね。

東京でコレクションを発表するブランドで注目株は?

小笠原氏:去年の25年春夏のコレクション全体を見て、日本ブランドで跳ねるかもしれないと思ったブランドが3つあります。ひとつはDRIES VAN NOTTENで経験を積んだ TELMATELMA はプロダクトクオリティが高い。ふたつめは Chika Kisada。強さを感じる女性像がとてもよかった。そして、パリの TOKYO FASHION AWARD ショールームにも参加している mister it.mister it. はクラフトマンシップを背景にした、デザイナーのセンスが秀逸です。見るべきショップが見たら、海外でもオーダーがしっかり付くのではないかと思いますね。

大澤氏:日本のバイヤーは、TOKYO FASHION AWARD で選ばれたブランドを注目していると思います。MIDWESTでも受賞ブランドを実際多く取り扱っていますし。今回の受賞ブランドではRIV NOBUHIKO を次シーズンから展開しますし、FUMIE=TANAKAVIVIANOTAAKdoublet、20以上の受賞ブランドを買い付けています。
TFAショールームは当初から見ていますが、ブランドとしての強さに加えて、商売として売れるためのメニュー組みがあるかどうかの視点を大切にしています。mister it.も取り扱っていて、彼の良い素材を使ったブランドらしさのあるクラフト感に、新しいお客様も買いたくなるような提案が少しずつ加わるようになっていったらと、これからが本当に楽しみなブランドです。

2025aw

VIVIANO 2025 S/S collection

MIDWESTで今伸びているブランドは?

大澤氏:レディースだとChika Kisada。メンズだとDAIRIKUKAMIYAM A S U。30歳を迎えたくらいのデザイナーたちが次のジェネレーションとして伸びています。

2025aw

KAMIYA 2025 S/S collection

インバウンド比率はどれくらいなのでしょうか?

大澤氏:インバウンドは20%程度で多くありません。国内のリピーター様で売上立たせてもらっています。もっと増やせると周囲から良く言われますが、国内のお客様を大事にしたいですね。

Rakuten Fashion Week TOKYO 25AW会期で期待しているブランドは?

小笠原氏:TELMAChika Kisada、ネパール帰りの yoshiokubo に注目しています。彼がヒマラヤで仕込んできたものをどう見せてくれるのか、デザイナー自身が「めっちゃ楽しいショーです」と話してくれたこともあり、楽しみにしています。

大澤氏:FETICOVIVIANO、今回初めてショーを行う Tamme です。 Tamme はルックで見るより動いて見せた方が良いブランド。デビュー当時から取り扱っていて楽しみにしています。sacai出身のデザイナーで千登勢さんがとても可愛がっていました。25AW会期のフィナーレのショーですし、小笠原さんも是非見てください!

ショーの魅力は?

大澤氏:僕はファッションショーを見るのが好きです。バイヤーでもショーを重視する方、ショーは見ないで展示会周りメインの方がいますが、パリでも僕は早めに入ってショーをたくさん見ますね。
ショーは、コレクションに向き合ってきた想いやデザイナーが魂込めてきた半年間を感じられる数分間ですよね。ショーの空気感を通して、ブランドの盛り上がりやムードを感じられるのが好きです。バイヤーとして、新しいものが出てるな、新しいバランスになったな等、売れるか売れないかの視点でももちろん見ていますし、それをいち早く見たいとも思っています。展示会はものと価格のバランスをシビアに見ますが、ショーはブランドの将来性を見るバロメーターに自分の中ではなっている気がしています。



Photography by Kazumi Miyamae
Interview by Tomoko Kawasaki

Takenori Osawa / Takuro Ogasawara

大澤 武徳 / 小笠原 拓郎
大澤 武徳
株式会社ファッションコア ミッドウエスト 代表取締役社長
1968年5月10日生まれ。
創業48年を迎えるセレクトショップMIDWESTの2代目。
東京、名古屋、大阪に店舗を構え国内外のバイイングやデザイナーとの交流による独自の別注やイベントを行なってきた。

小笠原 拓郎
1966年、愛知県生まれ。92年にファッションビジネス業界紙の繊研新聞社に入社。95年から欧州メンズコレクションを取材する。2002年から欧州とニューヨークのウィメンズコレクションの取材も担当するなど、30年近くにわたり世界中のファッション事情を考察し執筆している。これまで見てきたファッションショーの数は1万5000を超え、まさに日本で一番たくさんのファッションショーを見てきたファッションジャーナリスト。そのキャリアを通じて培った審美眼から生まれる批評が、読者からの高い信頼を得ている。