INTERVIEW 09/01/2025

ブランド設立35周年!7年ぶりのショーをRakutenFWT 26SSで開催する津森 千里氏にインタビュー

TSUMORI CHISATO デザイナー

ブランド設立35周年!7年ぶりのショーをRakutenFWT 26SSで開催する津森 千里氏にインタビュー

ブランド設立35周年を迎え、Rakuten Fashion Week TOKYO 26SSに初参加するTSUMORI CHISATO。心から洋服が好きで、多くの方による支えがあったからここまで継続できたと語るデザイナーの津森千里氏。国内外含めて7年ぶり、業界内外から注目されるショーを間近に控えた現在の心境についてインタビューした。

7年ぶりのショー開催として、Rakuten Fashion Week TOKYOに参加することになった理由を聞かせてください

お話するか迷ったのですが、実は私大病を患っていたんです。本当に大変な病気だったので、去年あたりから体調が良くなって以降は私は生かされていると感じることが強くなりました。人間、いつどうなるかわからないじゃないですか。 そういうこともあって、今までブランドに携わってくださった方、助けてくださった方、全ての物事に感謝したい、そういう気持ちから今回ファッション・ウィークに参加して、皆様に感謝を伝えるためにショー形式にて発表させていただくことにしました。

発表される26SSコレクションのテーマは?

コレクションのテーマ自体も「感謝」です。ブランドを35年も続けることができたのは、皆さんに色々支えてもらえてきたから。そうした皆さんに対する感謝をテーマにしていて、地球や太陽、虹、水など人類が大きな恵みを感じ得る万物を登場させています。通常のコレクションのテーマの置き方と今回は異なっているので、どのようにまとめるか悩みながら現在も製作を進めています。

ショーの構想についても教えてください

ご来場いただける方々が喜んでくださるような、TSUMORI CHISATOらしい楽しいショーにしたい。このショップを会場として、肩肘張らずやりたいと思っています。大きなランウェイはたくさんやって来ましたから、今の私の気持ちに沿う形で、この建物の構造を活かした見せ方をするつもりです。2019年にエイネットを独立してから、サステナブルなものづくりを心がけていて、コレクションは受注生産としています。顧客の方に向けたオートクチュールを毎回作っているような感覚ですね。今回のショーは当日複数行い、実際の顧客様をお呼びする回もあり、ショー終了後にはオンラインで受注会(※1)も行います。全てのものに私らしい感謝の想いを込めていますが、見る方の自由に受けとめてもらえたらと思います。

35年間TSUMORI CHISATOらしいものづくりを続けることは難しくなかったのでしょうか?

私のものづくりは本当に変わっていない。ものづくり、絵を描くことがずっと好き。色を使うこと、難しいことに挑戦し続けることも好き。だからずっと変わらないんです。渋谷ヒカリエで35周年の展示イベント(※2)を行うので、過去のコレクションピースを掘り出しているのですが、今作っているものと並べても全く違和感がないですし、今も着たいと思えるようなものばかりです。おもちゃ箱をひっくり返したような作風と言われて来ましたが、その通りだと思いますね。当時のピースは、現代では出来ないような凝ったディテールがすごく多くて。展示では35年間のアーカイブを170体程度並べる予定なのですが、本当にこんなこと出来ていたの?と思うような手の込んだものづくりをしていて、その辺りも是非見ていただきたいですね。機屋さん、ニッターさん、縫製工場さんもどんどん減ってしまってとても寂しいのですが、こんな技術を持っていた工場があったことを知ってもらえる機会になればと思います。

【35周年 TSUMORI CHISATO ♡♡ 感謝 ♡♡】ツモリチサトの35年のモノづくりがつまった特別展示イベントの様子

ものづくりに対するモチベーションも変化ないのでしょうか?

色々なものに興味を持っていて、いつも何か面白いものないかなって探してるタイプなんです。面白い古着やテクニック、配色を見つけたら、自分なりの解釈を加えてもっと面白いものに変えてみようと思い考え続けています。

津森さんがファッションを通して伝えたいメッセージはありますか?

今の若い世代は推しにはお金を使うんだけど、自分にお金を使っていないところがあるじゃないですか。私からすると、自分をまず推しにしたら良いのにって思いますね。私が若い頃は、今もそうですが、取っ替え引っ替え洋服を着ていました。色々な洋服を着ることはとても面白いから、洋服を通して楽しい経験を増やしてほしいなと思います。

ファッション業界を志す若い世代に伝えたいことはありますか?

ファッションデザイナーは大変な仕事だと思う。今はAIとかでデザインできちゃうし、洋服なんてみんなと同じでいいやと思ったら作らなくていい。自分がやりたいことをのびのびとやってほしいですね。自分らしさを大切にして、アーティストとして洋服に関わっていくのも面白いと思います。
私の趣味ってほとんど仕事だったけれど、旅行も良く行っていて、旅先で面白いものを見つけてはそれを自分のものづくりに落とし込み洋服として発表することがとても好きでした。これからの人も、自分のどういう感性で落とし込んでいくことが出来るか、その観点を大切にしてほしいと思います。
また、時代別のルックやデザイナー名が分からない方も多いから、ファッションの歴史は勉強した方が良いかもしれません。歴史を学ぶことで、テクニックの言葉だったり作風だったりを覚えられますし、古きを訪ねて新しきを知ることは大事だと思います。昔のものや色々なものを自分の目でたくさん見て吸収する経験をしてほしいですね。

(※1) TSUMORI CHISATO 2026年春夏コレクションのオンライン受注会
9月5日(金)〜12日(金)12時まで / https://tsumorichisato.shop-pro.jp/ 
(※2) 【35周年 TSUMORI CHISATO ♡♡ 感謝 ♡♡】
ツモリチサトの35年のモノづくりがつまった特別展示イベント
9月1日(月)~9月6日(土)渋谷ヒカリエ8F 8/COURTおよび 8/CUBE1,2,3

Chisato Tsumori

津森 千里
埼玉県狭山市生まれ
1976. 文化服装学院卒業
1977. イッセイミヤケインターナショナル入社『ISSEY SPORTS』のデザイナーとなる。
1983. 『ISSEY SPORTS』のブランド名を『I.S. chisato tsumori design』に変更、
チーフデザイナーとなる。
1985. 第3回毎日ファッション大賞新人賞受賞。
1990. 『TSUMORI CHISATO』ブランド設立。東京コレクションに参加する(1990年秋冬)。
1995. TSUMORI CHISATO青山店オープン。
1999. パリのマレ地区にTSUMORI CHISATOパリ店オープン。
2002. 第20回毎日ファッション大賞大賞受賞。
2003. コレクション発表の場をパリに移す(2004年春夏)。
2008. TSUMORI CHISATO GINZA GOLD店オープン。
2017. ニューヨーク・シティ・バレエ『Fashion Fall GALA』に衣装デザインを提供。
2018. 書籍『TSUMORI CHISATO』を米RIZZOLI社より刊行。
2018. 六本木ミッドタウン内21_21 DESIGN SIGHT Gallery3にて、初の展覧会
『WAKU WORK-津森千里の仕事展』を開催
2022. 東京 表参道にTC HOUSE オープン