Interview & Report

池内 啓太/森 美穂子 Keita Ikeuchi / Mihoko Mori

池内 啓太/森 美穂子 Keita Ikeuchi / Mihoko Mori and wander(アンドワンダー)

TOKYO FASHION AWARD 2016 受賞デザイナー

池内 啓太:神奈川県出身。多摩美術大学卒業後、ISSEY MIYAKE MENデザインチームにてアパレル、雑貨の企画、開発を行う。
森 美穂子:東京都出身。エスモードジャポン東京校卒業後、ISSEY MIYAKEデザインチームに所属後フリーランスで活動。
池内と森で2011年春夏に「and wander」をスタート。自然に触れることに魅せられて山を楽しみ、パリコレクションブランドで培った企画力と山で感じた肌の感覚をもって、アウトドアウエアとギアを提案している。

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自然の中で遊ぶ楽しさに魅せられたイッセイミヤケ出身の池内啓太と森美穂子が2011年に起ち上げたアウトドアブランドand wander(アンドワンダー)。山の中で得た肌感覚とデザイナーズブランドで培った経験を融合させた唯一無二のアウトドアウエアやギアが高く評価され、TOKYO FASHION AWARD 2016を受賞したデザイナーのふたりに、ブランド起ち上げの経緯から今後の展望までさまざまな話を伺った。

おふたりはそれぞれイッセイミヤケで働かれていたそうですが、どのような経緯でアウトドアブランドを起ち上げることになったのですか。

池内:イッセイミヤケにいた頃に、アウトドアの遊びが好きな同僚にキャンプに誘われたりしているうちに、自分ものめり込んでいったことがきっかけです。当時はちょうどアウトドアが流行り始めていた時期だったのですが、いざ必要なウエアを買おうとアウトドアショップに行っても、お金を出して買いたいと思えるものがなく、それなら自分たちでつくれないかと考えるようになりました。そこから数年が経ち、会社を辞めて独立しようというタイミングで森に声をかけ、一緒にブランドを起ち上げました。

森:その頃私はすでにイッセイミヤケを辞めていて、フリーランスのデザイナーとして仕事をしていました。池内が言うように、当時は自分たちがほしいと思えるアウトドアウエアがなく、レディスのアウターと言えば派手なピンクやパープルでウエストがしぼられているようなものばかり。アウトドアウエアというのは性別関係なく、どうしてもスペックを売りにしたものが多いのですが、私たちは6000m級の山に登りたいわけではなく、あくまでも東京をベースにしながら休日に行ける範囲内で遊ぶことが基本。そうした自分たちの感覚に合うウエアがほとんどありませんでした。

池内:ブランド名に使っている“wander”という言葉には“さまよい歩く”という意味合いがあるように、ピークを目指すハードな登山ではなく、もう少しゆるい感覚でアウトドアを楽しみたいという感覚がありました。そうした楽しみを生活の中に取り入れてもらいたいという思いが、“and wander”というブランド名の由来になっています。

パリで行われたshowroom.tokyoの様子
上2枚:2016年1月開催/下2枚:2016年6月開催

and wanderのコレクションにはタウンウエアとしても使えるアイテムが多いように感じますが、どんな人たちに着られているのでしょうか。

森:もちろん街中で着ている方もいらっしゃいますし、アンドワンダーのウエアを着て山に登っている写真をInstagramに上げてくれている方も多いように、登山の時にもよく使っていただいています。各アイテムの下札には山のアイコンを付けていて、このアイコンが3つのものは山で使っても問題がない素材やカッティングがされているウエアで、逆にアイコンがひとつになると天然繊維とテクニカルな繊維を混ぜたものなども多く、日常の延長で使っていただくようなイメージです。もともとアウトドアウエアというのはコンパクトにまとめられるので携帯にも便利ですし、突然の雨に遭ってもすぐに乾くので、街中で使うにしても非常に便利なんです。

池内:and wanderのアイテムは基本的にはアウトドアウエアなので、素材などにしても実際に山を歩いて比較しながら検証していて、そうしてつくられたウエアを街でも着てもらえたらという意識で続けています。そのため、シーズンごとにテーマを設定して新しいコレクションを発表していくというよりも、実際に自分たちで着て山に入り、気になる部分などを少しずつアップデートしていくようなものづくりが多いです。

イッセイミヤケのようなデザイナーズブランドと、アウトドアブランドの違いはどんなところに感じますか。

森:大きな違いは素材の仕込みです。特に機能素材はリードタイムが非常に長く、開発だけで3~4ヶ月かかります。素材に関しては、毎シーズン何かしら新しいものをつくっていますが、良いものを追求していくと、結果として国産になるケースが多いです。もちろん自分たちは日本人なので、ずっと国内でものをつくっていけるのであれば、そうしていきたいと考えています。

池内:アウトドアウエアというのは、肌に近いインナーは速乾性がある素材、ミドルには保温性があるもの、そしてアウターには防水性が高いものというようにレイヤリングのルールが決まっていて、こうした制約の中でつくっていくところに難しさがあり、逆に面白い部分でもあります。そのルールの中にきれいに収まりすぎても面白くないので、山の中で成立する範囲で、違和感があるものをつくるということは常に心がけていて、そこにファッションの要素を持ち込んでいくアプローチには、デザイナーズブランドでの経験が活かされていると思います。

TOKYO FASHON AWARD 2016を受賞するなど、近年は海外での展開にも力を入れているようですが、今後の展望について教えて下さい。

森:海外に関しては、自分たちのブランドの存在を伝えるための努力をもっとしていく必要があると考えています。また、私たちは友人、知人を山に連れていくような機会もあるのですが、ゆくゆくはこうした山ツアーのようなものをand wanderを着てくれているファンの方たちともしていきたいですし、自然の中で遊ぶことの楽しさをもっと伝えていきたいと思っています。

池内:国内ではこれまでしてきたことを継続させながら、直営のお店を開きたいという思いも持っていて、それが自然の中で遊ぶことの魅力を伝えるチャネルにもなると考えています。僕たちは、多くの人たちにとってアウトドアへの導入になるようなブランドを目指していて、この服を着て自然の中を歩いてみたい、キャンプに行ってみたいと感じていただけるようなものをこれからもつくっていきたいと考えています。

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

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