Interview & Report

中島 篤 Atsushi Nakashima

中島 篤 Atsushi Nakashima ATSUSHI NAKASHIMA (アツシ ナカシマ)

ATSUSHI NAKASHIMA DESIGNER

2001年 名古屋ファッション専門学校 ファッションスペシャリスト課を卒業後、(株)ニューリードへ入社。
在職中に第20回 オンワードファッション大賞でグランプリを受賞。
ジャンポールゴルチェにスカウトされ2004年に渡仏し、ジャンポールゴルチェ直属のアシスタントデザイナーに就任。
2009年よりディフュージョンラインのヘッドデザイナーを務め、2011年に帰国後自身のブランドを立ち上げる。
2013年「ジル・サンダー ネイビー」バッグライン ディレクター就任。
2015年 DHL Exported 第2期 日本人初受賞

国内外で多様な経験を積み、数々のアワードを受賞してきた「ATSUSHI NAKASHIMA」。2011年のデビューコレクションを東京で発表して以来、5年ぶりにファッション・ウィーク東京に参加し2021秋冬コレクションをショー形式にて発表する。ミラノコレクションでも日本古来の和文化を発想源としたコレクションが高く評価されてきたブランドが、今回東京でどのような姿を見せてくれるのか、デザイナーの中島篤氏にインタビューを行った。

 

− 2012年3月に東京でデビューコレクションを発表されて以来、久々の東京でのショー発表となりますね。まずは今の心境を教えてください。

新型コロナウイルスの影響により2021秋冬シーズンはショー前日夜にミラノ市全てのイベント中止の要請が発表され、モデルオーデションやコーディネートなどのすべての準備が終了後突然の中止となりました。2021春夏シーズンもミラノでの発表を急遽取りやめ、東京・増上寺でショー動画を撮影して、ミラノコレクションで映像にて公開しました。幸運な形で、ファッション・ウィーク東京から機会をもらえたデビューコレクションは、パリから帰国してすぐということもあり制作面で大変苦労しましたが、今回はクオリティの高いショーを皆さんにご覧いただけると思っています。

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− パリではジャンポールゴルチェと長くお仕事されていたんですよね。ご自身でブランドを立ち上げるまで、様々な経験をなさっているとお聞きしました。

2003年に第20回オンワードファッション大賞のグランプリをいただいたのですが、その時の審査員がゴルチェでした。シンプルな作品だったのですが、見る人が見れば分かる技術が詰まっていて、縫製、パターンができるデザイナーとして認めていただきました。その後ゴルチェに誘われてパリのゴルチェアトリエで5年ほど働きましたね。パリのオートクチュール職人さんたちは伝統的な技術は高いのですが、デザインを形にすることが苦手な方が多く、アイデアを形に出来る僕のことを買ってもらえるようになり、バッグのディレクターやゴルチェブランドのカジュアルラインのトップを務めました。自分のデザインしたモノがランウェイに出ていくことで最初は満足していましたが、自分のブランドをやりたいという欲が徐々に強くなり、帰国してブランドを立ち上げました。

 

− ファッションの道に進まれたきっかけは何だったのでしょう?

曽祖父が画家で私自身も絵が得意だったこともあり、小さい頃は画家になりたいと思っていました。中学生の頃、ファッション誌を読んで洋服に興味を持ち始めて、高校生の頃にファッションデザイナーになりたいと思うようになり、自分でお金を貯めてファッションの専門学校に通いました。専門学校時代に「ファッションは絵じゃない、洋服であって形あるモノじゃなければならない」と多数のコンテストに応募する中で思うようになり、卒業後すぐにデザイナーの道には進まず、縫製やパタンナーとして働き経験を積み、ものづくりが出来るデザイナーを目指しましたね。熱中する性格なので、ファッションを始めてから今に至るまでずっとファッションのことを考え続けてファッションにのめり込んでいる感覚です。

 

− コレクションのテーマやデザインのインスピレーション源はありますか?

日々変わっていく時代を見て、人の持っている感覚を大事にしながら今はデザインしています。いかに美しいものを作るか、クリエーションやテクニックを競っていた時代から、自然や人の持つ感性に響くモノが求められる時代になっていると思っています。

 

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− ブランドのビジネス状況についても教えてください。

新型コロナウイルスの影響で支払いが滞ったこともあり、2シーズン前からブランドとしての卸販売をストップし、自社販売に切り替えています。今は時代の転換期にあり、古い商流から脱却し新しいビジネスが生まれる、ファッションビジネスが変われるチャンスじゃないでしょうか。古いままの商流では、規模の小さいブランドは勝てないですし、同じやり方が今後通用するとは思えません。ブランドとして個の影響力を高めて、本当に欲しいと思ってくれる方のために生産して販売していきたい。売り方含めて、新しいやり方にチャレンジしているところです。

 

− ビジネスを変革されている中で、今回のショーはどのような位置付けなのでしょうか?

ファッションショーにはその場でしか味わえないピリピリした感覚や感動があります。そのライブ感を通して洋服を美しく見せたい。良い洋服を作って、感動してもらいたい。ブランドとして個を高め、評価を上げるために、世の中にニュースを与える役割として考えています。

 

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− 今回のコレクションのテーマについて聞かせてください。

秋冬コレクションのテーマは、冒頭にもお話しました曽祖父の名前から取って「楚水」としました。日本の和文化から着想を得たコレクションで、曽祖父の絵を使用したプリントなどがあります。洗練された日本の文化をシンプルに、クリーンに表現しようと考えています。ショー終了後には、一般のお客様向けにオンラインにて展示会も実施する予定です。

 

− ショー、期待していますね!最後に、ブランドとして、デザイナーとして今後の展望をお聞かせください。

昔と違って、今現在、世の中にないものを生み出すのは、物理的な限界が来ていて、何を提案しても飽和しているように感じます。だから僕たちはこれまでとは異なる方法でファッションをやっていきたい。多くの人々にとって洋服の必要性が減っていく時代に対して、別の領域のカテゴリーも結びつけてファッションをやっていこうと考えています。

 

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