Interview & Report

田中 大資 Daisuke Tanaka

田中 大資 Daisuke Tanaka tanakadaisuke(タナカダイスケ)

tanakadaisuke Designer

大阪文化服装学院卒業後、ケイタマルヤマ入社。
独立後衣装制作や、刺繍作家として活動中。
2021年、コレクションブランド「tanakadaisuke」としてデビューし、不定期で作品を発表中。

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刺繍アーティストでもある田中大資氏のデザイナーブランド「tanakadaisuke」。コンセプトは「自分の中にいる、まだ見ぬ自分と出会えますように。」デザイナー自身が得意とする刺繍や装飾的な技法をベースに、ロマンチックで幻想的なコレクションを展開。Rakuten Fashion Week TOKYO 2022AWにてブランド発足後、初となるランウェイショーに挑む田中氏に、参加への意気込みやブランドを通して伝えたいこと、デザイナーとしての今後の展望など伺った。

刺繍をはじめとする装飾が印象的ですが、刺繍に興味を持ったのはいつごろからなのでしょうか。

インテリアを制作する高校に通っていたのですが、卒業後の進路を迷っていたとき、アレキサンダー・マックイーンが亡くなった直後のコレクションとジバンシィのオートクチュールが掲載されている雑誌を見て、直感的にこれをするしかないと思ったのがきっかけです。自ずと刺繍にも興味が湧いて、どうやって作っているんだろうって追求していったという感じですね。インテリアでもデコラティブなものをよく作っていたのですが、ファッションを軸にしたときに表現したいことが明確になり、自分のやりたいことが溢れてくるような感覚になりました。卒業作品展ではハンガーラックをテーマに、そこにかける洋服を作って作品にしたくらい、創造意欲に満ちていましたね。

「自分の中にいる、まだ見ぬ自分と出会えますように。」というコンセプトに込められた想いを教えていただけますか。

tanakadaisukeのブランドは日常に寄り添う服とは少し違っていますが、日常と離れつつもtanakadaisukeの服を着ていただくことで新しい自分に出会ってもらえたらいいなと思っています。ブランドをはじめる前も刺繍作家や衣装デザインをやっていたのですが、自分が好きなモノづくりや作りたいなと思うものは、どこか少しロマンチックだったり幻想的だったりするので、ドリーミーな服も含めて世界観を楽しんでいただけたら嬉しいです。魔法少女のような要素は今触れておきたいテーマでもあります。コンセプトもそこに近いものがあるので”ちょっと変身して出会える自分”のような服作りをしていきたいなと思っています。

クリエーションにおけるインスピレーションは、どのようなことから刺激を受けますか。

小さいころから「おジャ魔女どれみ」とか「カードキャプターさくら」とか「セーラームーン」など魔法少女のアニメを見ていたので、アニメから影響を受けることは多いですね。ただ、より多くの方に手にとっていただける服を目指しているので、フォーマルさとのバランスを大切にしています。可愛らしい装飾とフォーマルさの両軸があることでより変身した感覚を際立たせることができるので、わざとフォーマルブラックといわれる生地を使って、ドリーミーな服を着てこなかった方にも手にしていただける服作りをしています。一方で、白・黒・クリスタルビーズなどの流行りすたりがなく、長く愛用してもらえる装飾も継続して作っていきたいですね。これは刺繍作家として活動してきた強みだと思うのですが、何ができて何ができないのか、工程のすべてを把握しているので、表現の限界と可能性を突きつめることができると思っています。なので、できる限り自分の作りたいものを形にしていきたいです。

2021年にコレクションをスタートされましたが、コロナ禍やSDGsなどを意識されることはありますか。

デビューする少し前に、チェリー刺繍や紐をリボンにしたマスクを発表したことが皆さんに知ってもらうきっかけになりました。Twitterで注目していただいて話題になり、Instagramを見てくれる方が増え、その時に自分の役割ってこういうことなんじゃないかなって感じました。夢を見られるモノといえばいいのかな、ファッションの世界でもそこを担えるんじゃないかなって。コロナ禍でなくても、機能性や今必要とされているものを題材としながら、デザインで表現できるところは追求していきたいです。

SDGsについては特に意識して生地を選んだりということはしていませんが、在庫を積まないというのがパッチワークスの方針で、ほぼ受注生産というかたちをとっています。またセールも行いません。ブランドの価値を守ることはtanakadaisukeの服を手にしてくださった方の価値も変えないことになる。それが長く愛用してもらえることにもつながると思っています。

コレクション発表後、初めてとなるショーとしてRakuten Fashion Week TOKYOを選んだ理由と、参加するにあたって挑戦したことがあれば教えていただけますか。

いつかショーをしたいと思っていたんですが、文化服装学院の先生や広報の方が声をかけてくださったことが参加するきっかけになりました。ショーをやってみない?手伝うよっていってくださったので、今なのかなと思って。それまでは実力をつけてからじゃないとと思っていたのですが、自分の世界観を突き通してみようと背中を押してもらった感じですね。

2021年のコレクションは最初の名刺のようなものでしたが、おそらく今回も初めて知ってもらう方が多いと思うので、より濃い印象を与えられるようなショーになると思っています。自分の中にあるロマンをお伝えできたらいいなと。これまではルック撮影がメインだったのでモデルは多くても2人でしたが、今回は20人以上を起用しています。コロナ禍ということもあり1ヶ月前にはモデルが決まっていたので、作品を作りはじめる前から、このモデルにはこんな服を着せたいって盛り上がっていました。このモデルがこれを着るならこの装飾とか、よりこだわった作品作りができました。こうした経験はショーならではだと思うので、いろんな人に似合う服ということを知っていただけたら嬉しいです。また、優しさと強さ、可愛さとかっこよさのような両軸が一つの服の中にあるのがベストだなと感じています。例えば前は首が詰まっているような凛としたストイックな印象でも、後は大きく開いていてセクシーな洋服だったり。そうした二面性をショーで立体的に見せることができるので、そのあたりも楽しみにしていただけたらと思います。

最後に、デザイナーとしての今後の展望とショーをご覧になる方に向けてのメッセージをお聞かせいただけますか。

まだまだやりたいことができていないと思いますが、デザイナーとして今できることを続けていくことが大切だと思っています。ただ、今は自己完結しているものが多いので、いろんな人を巻き込んでモノづくりができるといいですね。自分だけの世界じゃなく、もっと広げていきたいです。そして自分の世界観を譲らずに、ドリーミーな服を着ない人にどうすれば着てみようと思ってもらえるのか、挑戦していきたいです。

ショーでは、自分が歩んできたカルチャーを装飾やフォルムに詰め込んでいます。同世代の方はアニメなど好きなものが共通していると思うので、”これってあのモチーフなんじゃない?”って見つけてもらえたら嬉しいです。また、自分が作家だからということもありますが、一着に対して多くのビーズやリボンなどを使用しています。一つ一つの刺繍が複数の素材やアイテムで構成されているので、こだわって作ったものを楽しんで見ていただけたら嬉しいです。

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