ヘンリー・ホランド House of Holland デザイナー
DHL Exported 受賞者インタビュー
【 プロフィール 】
ヘンリー・ホランド / House of Holland デザイナー
ロンドンカレッジ・オブ・プリンティングのジャーナリズム修士課程卒業。
2006年に「ファッション・グルーピー」スローガンをプリントしたTシャツによりファッションの舞台で一躍脚光を浴び、2008年、ファッション・イーストでの2シーズンのショー発表後にロンドン・ファッション・ウィークにてソロでショーを発表し、ファッション評論家から賞賛を浴びる。
2012年1月には2シーズンのファッション・フォワード・スポンサーシップを与えられている。
DHLがIMG Fashionと共同で、デザイナーの世界進出を支援するプログラム「DHL Exported」を立ち上げた。ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、東京の各ファッション・ウィークでのコレクション発表の機会が与えられる同プログラムには、世界各国から計150組を超える応募が集まり、各都市の審査員会による厳正な選考の結果、計4組の受賞者が決定。そのうち、2014年10月、2015年3月に開催されるMercedes-Benz Fashion Week TOKYOでのコレクション発表の機会を勝ち取ったのは、英ブランド「House of Holland」のデザイナー、ヘンリー・ホランド氏。栄えある受賞を機に来日した彼に、日本のファッションの印象や、東京進出にかける思い、来るべきショーの構想などを伺った。
日本にいらっしゃるのは何回目になりますか?
4回目ですが、いつもあまり時間がなく、東京以外にはまだ行ったことがありません。本当は色々回ってみたいと思っているのですが・・・。東京はとても大好きな街で、ストリートカルチャーからインスピレーションを得ることも多いですし、日本の文化はとてもユニークだと感じています。
東京のファッションの印象を教えて下さい。
素晴らしいと思います。特にメンズファッションは世界的に見ても優れています。「UNDERCOVER」や「visvim」など非常にユニークなスタイルを持っているブランドが多いですし、ショップも「1LDK」はじめ、ワクワクするようなインディペンデントなお店が多く、とても面白いですね。また、建築も非常に素晴らしい。
「House of Holland」は日本でも人気ですが、その反応をどのように受け止められていますか?
日本の人たちは、私が表現しようとしていることをよく理解してくれているように感じています。私は日本のファッションが大好きですし、その方たちが自分たちの洋服を選んでくれているのは非常にうれしいことですね。
今回の「DHL Exported」で東京を選ばれた理由もその辺りにあるのですか?
そうですね。私たちのブランドに、東京という街と共鳴する点があることは明らかです。私たちは、大胆な色使いや遊び心のあるプリントなどをよく用いますが、こうしたアプローチは日本の方たちのスタイルと共通するものだと感じています。今回グランプリに選ばれたのはとてもエキサイティングなことですし、1度だけではなく、2シーズンにわたって東京で発表の機会をいただけたことは、私たちのビジネスの大きな弾みにもなるはずです。
東京のファッション・ウィークにはどんな印象をお持ちですか?
まだ実際に見たことはないのですが、最近は、Instagramなどのソーシャルメディアを通してその様子を見る機会が増えていて、非常に成長しているのだろうと感じています。
「House of Holland」が拠点としているロンドンと、東京のファッション感覚に何か違いを感じることはありますか?
まず、ロンドンと東京というのは、ストリートからさまざまなカルチャーが発信されてきた点や、洋服を着ることでその人の個性、アイデンティティを表現している点など、共通するところが多いと感じています。一方で、違いを挙げるとすれば、いくつかの点において東京のファッションの方がより極端だと言えるかもしれません。これはあくまでも個人的な意見ですが、伝統から大きく離れた部分に東京の面白さがあるように感じています。
ボーダーレス化が進んでいる現代ですが、活動の拠点となる場所とクリエーションの関係性についてはどのように考えていますか?
グローバルな時代ではありますが、周囲の環境からは必ず影響を受けるものですし、自分が活動している場所とつくる洋服には明らかに強い関係性があると感じています。必ずしもそれが目に見える部分にハッキリと表れるわけではないですが、感性の部分やアプローチの仕方などには影響を及ぼしているはずです。例えば、私はロンドン北部出身で、現在もロンドンで仕事をしていますが、現地の人たちは自分を少し卑下するようなユーモアや皮肉、ある種の生意気さのようなものを持っていて、そうした感覚は私の作品にも反映されています。そうした特定の観点からつくられたものをグローバルに展開していくということが大切なのだと思います。
ところで、ヘンリーさんは音楽雑誌のエディターをされていたそうですが、そこからなぜファッションの世界に転身したのですか?
もともと私はクリエイティブな人間で、物を書くことと同じようにファッションも好きでした。はじめは、セレブリティの名前を使ったジョークのようなTシャツをつくり、友人らに着てもらうところからスタートしたのですが、現在のように活動が広がっていったのは、良い機会に恵まれ、そのチャンスをしっかり捉えていくことができたからだと思います。
音楽とファッションの関係については、どのように考えていますか?
両者には非常に密接な関係があり、特にイギリスではその傾向が強く、ファッションが音楽を牽引することもあれば、またその逆もあります。私自身、リアーナやケイティ・ペリーなどミュージシャンの友人が多いのですが、彼らが自分たちの洋服を着てプレイしてくれることもありますし、彼らとコラボレーションする機会をつくりやすい状況にあると言えます。
大胆なグラフィックや柄、遊び心のあるタイポグラフィなどが「House of Holland」の大きな特徴ですが、これらをミックスしていくクリエーションからは、ヘンリーさんの出自でもある編集的な感性が垣間見えます。
あまり考えたことはなかったのですが・・・確かにその通りかもしれません。言葉を扱って何かを書く時でも、洋服をデザインする時でも、最終的な作品にいたるまでに多くのエレメントをつくり、それらを編集していくというプロセスは同じです。その時に大切になるのは、勇気を持って自分が信じることを実行するということです。自分のアイデンティティや、表現しようとしていることから外れてしまうようなアイデアは、自信を持って排除していけるようなブレのない意思決定というものが必要だと感じています。
今後ブランドとして目指していることがあれば教えて下さい。
現在、ビジネスとして軌道に乗ってきたので、今後もこれを維持しながら、さまざまな国や地域に進出していければと考えています。ハンドバッグなどのアクセサリーラインも新たに立ち上げましたが、今後はシューズやメンズウエアなども広く展開していきたいですし、満足のいく商品ラインアップが揃えられるようになった段階で、直営ショップも出していきたいと思っています。
最後に、今年10月と来年3月に東京で発表されるショーへの意気込みを聞かせてください。
今回、東京でショーを発表することが決まったのは、コレクションの構想を固め、生地やプリントの発注をした後だったのですが、東京で発表する際にはスタイリングをアレンジしたり、新しい作品を加えたりしながら、エクスクルーシブな形で皆さんにコレクションをお見せできればと考えています。
INTERVIEW by Yuki Harada
新しいクリエーションが生まれるお手伝いを |
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「DHL Exported」は、今後国際的な活躍が期待される若手デザイナーの世界進出を支援するグローバルプロジェクトです。以前より、日本のデザイナーの海外展開を支援する「DHLデザイナーアワード」をファッション・ウィーク期間中に行っていましたが、それがこのようにグローバルなプロジェクトに発展したことは、私たちとしてもこの上ない喜びです。 「DHL Exported」公式サイト http://dhlexported.com/ |