Interview & Report

志鎌 英明 Hideaki Shikama

志鎌 英明 Hideaki Shikama Children of the discordance(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス)

TOKYO FASHION AWARD 2018受賞デザイナー

2005年より原宿でセレクトショップAcycleをスタート。同時にストアブランドの企画、生産をはじめキャリアスタート。ストアのダイレクションとデザイナーを6年間務める。2011年デザイナーの木戸・井ノ川とともにレーベルを立ち上げ、2013年より志鎌1人体制でブランドを継続しコレクションを発表。

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2005年に原宿に生まれたセレクトショップAcycle(エイシクル)の立ち上げに関わり、店舗のディレクションとストアブランドのデザイナーを務めた志鎌英明氏が中心となり、2011年にスタートしたChildren of the discordance(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス)。自らがシーンに身を置いてきたストリートカルチャーからの影響や、幼少期よりあらゆるジャンルに触れてきたという彼のファッションに対する圧倒的な知識や経験を背景にしたクリエーションは、国内外で高く評価されている。TOKYO FASHION AWARDの受賞デザイナーとして、ターゲットとする海外市場に大きくアピールした志鎌氏に、ブランドが目指す方向性を聞いた。

 

ご自身のブランドを始めるまでの経緯を教えてください。

僕は小学生の頃からずっとファッションが好きで、ストリートからモードまで幅広い洋服に親しんできました。将来もファッションに関わる仕事ができればと考え、セレクトショップのシップスで働くようになりましたが、ある時、原宿に新しい業態の店舗をつくるにあたって事業計画から任されたことがきっかけで、Acycleというショップに6年半携わることになりました。そこではオリジナルブランドもあったので、バイイングからものづくりまでひと通り経験でき、シップスには今でも感謝しています。ただ、大きな会社ということもあり、常に売上を求められる環境で服をつくっていましたので、自分が着たいか、着たくないかということよりも優先すべき仕事が多かったと思います。それで、プライベートでも着られるような洋服を友人たちとつくるようになり、それがChildren of the discordanceの始まりです。

 

毎シーズンのコレクションをつくるにあたって、明確なテーマは設定されていますか?

グラフィックやテキスタイルのデザインなどもすべて自分で手がけているので、毎シーズン色々なネタは集めていますが、シーズン全体のテーマのようなものはあまり決めていません。むしろ最近は、シーズンテーマにもとづいて洋服をつくるようなブランドになってはいけないんじゃないかとすら思っています。もちろん、ファッションというのは消費されていく側面がありますが、同時に決して安いものではないからこそ、一生着たいと思ってもらえる洋服をつくりたいと考えています。

 

服づくりにおいては、スケートボードやヒップホップなど志鎌さんが親しんできたカルチャーからの影響も大きいのですか?

特にこれまでは、そうした自分のパーソナルな部分を前面に出していくことで、ブランドのアイデンティティを発信していく必要がありました。ただ最近は、いつまでも自分が好きなものだけをつくっていても飽きられてしまうし、ブランドも成長できないと考えるようになりました。今、自分たちは、海外のラグジュアリーマーケットで戦っていこうとしていて、セレクトショップのバイヤーたちに、名だたるトップブランドの横に並べる商品としてピックアップされることを意識した服づくりをしています。だからこそ、自分が影響を受けてきたものや本当に好きなものは継続的に形にしながら、より広い視野を持って、デザインやシルエットを研ぎ澄ませていくことで、洋服としてのクオリティを高めていきたいと考えています。

 

TOKYO FASHION AWARDの受賞ブランドとして、2シーズンにわたってヨーロッパで展示をされたばかりですが、海外への発信についてはどんな意識を持っていますか?

海外での知名度がほとんどない僕らが大切にしなければいけないのは、他のデザイナーにはできないものを徹底してつくっていくことだと思っています。海外のバイヤーは、オリジナリティを重視する傾向が強く、たとえプライスが高くてもスペシャルなものであれば買い付けてくれます。実際に3シーズンほど取引をしている某有名セレクトショップで買い付けてくれているのは、ヴィンテージの洋服を解体・再構築してつくるリメイクラインだけです。バイヤーの間で、このブランドはこれだと噂になるくらいのものを築き上げていく必要性を感じています。

Children of the discordance showroom19ss
Children of the discordance showroom19ss
Children of the discordance showroom19ss

2018年6月にパリで行われたTOKYO FASHION AWARD「showroom.tokyo S/S 2019」の様子

 

今、お話に出たヴィンテージのリメイクラインに対するこだわりや思いをお聞かせください。

僕は、業界の中でもこんなに洋服を買ってきた人間はいないんじゃないかというくらい、本当に洋服が好きなんです。洋服に生かされてきたと感じているからこそ、リスペクトも人一倍ある。だからこそ、このリメイクラインでは、古着には極力ハサミを入れず、糸をほどいて解体するようにしています。一口に古着のリメイクと言うのは簡単ですが、一着つくるのに丸一日くらいかけているので、オーダーメイドに近い感覚です。こうしたつくり方のこだわりは今後も持ち続けていきたいと思っています。

 

TOKYO FASHION AWARDのプログラムの一貫で、この3月にAmazon Fashion Week TOKYOでランウェイショーも行いましたが、こちらについてはいかがでしたか?

ファッション好きの学生なども多く会場に足を運んでくれて、日本における認知度は高まったと感じていますし、SNSのフォロワーもアジアを中心に非常に増えました。やはりそれだけショーというのは見ている人が多いのだと改めて感じましたし、近いうちにもう一度やりたいと思っています。

Amazon Fashion Week TOKYO 2018 A/Wでのショーの様子(ヒカリエホール Bにて)

 

今後の展望についてお聞かせください。

TOKYO FASHION AWARDに関わったこの2シーズンの間で、自分が目指すゴールに向けて引いた道筋はそんなにズレていなかったという感覚があり、手応えをつかめました。海外の厳しい環境の中でブランドをどこまで成長させられるか、自分自身の可能性はどのくらいあるのかということを、今後も引き続き探っていきたいと思っています。また、海外で売っていくためには、パリでしっかり発表する場をつくるべきだということを現地のセールスチームなどからも言われているので、身の丈にあった形でそうした機会もつくっていきたいですね。

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2018年1月にパリで行われたTOKYO FASHION AWARD「showroom.tokyo A/W 2018」の様子

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto(インタビュー撮影)

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