Interview & Report

吉井 秀雄 Hideo Yoshii × 山口 壮大 Souta Yamaguchi

吉井 秀雄 Hideo Yoshii × 山口 壮大 Souta Yamaguchi HIDESIGN(ハイドサイン)

HIDESIGN Chief designer  × Fashion Director

[HIDESIGN]
企業向け制服のデザイン集団。
デザイン、パターンメイキング、裁断、縫製まで社内での一気通貫が可能な人材と設備を有する。

[山口 壮大]
1982年、愛知県常滑市生まれ。文化服装学院卒(第22期学院長賞受賞)。
2006年よりスタイリスト/ファッションディレクターとして活動開始。

HIDESIGN

[ Website ] https://www.hidesign-tokyo.com/

 

山口 壮大

[ Website ] https://souta-yamaguchi.com/

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2005年の創業以来、企業向けユニフォームの制作を手掛けてきたHIDESIGNが、2023 S/SにてRakuten Fashion Week TOKYO に初参加。これにあたり、さまざまなブランドのディレクションを手掛けてきた山口壮大氏のディレクションのもと、初のランウェイに挑む。HIDESIGN代表取締役社長でありチーフデザイナーの吉井秀雄氏と山口氏に、ショーへの意気込みを伺った。

デザイナー、パターンメイカー、縫製士、グラフィックデザイナーからなる「ユニフォームウェア」のデザイン集団「HIDESIGN」が、ショーに参加されるに至った経緯を教えていただけますか?

吉井氏:今年で18期目を迎えるHIDESIGNは、企業向けの制服に特化したデザイン会社です。我々のものづくりは制服を身に纏う方々の仕事や環境に合わせた服を作ること。最適なユニフォームを作るために現場へ赴き、繊密な現地調査を行い、最適解を導くことが我々にとってのデザインと捉えています。これまで企業単位で行ってきたデザインプロセスを都市生活に置き換え、ファッションのフィールドで発揮できればと思い、参加することになりました。

HIDESIGN

HIDESIGNのコレクション制作に山口氏をディレクターとして迎えられました。山口氏はHIDESIGNの魅力をどのようにとらえていらっしゃいますか。

山口氏:ファッションを創るデザインプロセスは通常、先行して世界観を作り、そこに実態を伴わせることを流儀としているのですが、HIDESIGNのデザインプロセスは逆で、先に実態が存在する。ワーカーの環境や状況があり、最適化していくことのみに徹底されている姿勢が魅力的に映りました。
現地に赴き、多角的な視点で労働環境を定量化し、数値に基づいて生地のスペックやパターンを設計される非常に実直なクリエイティブはブランドとして、とてもユニークな未来を描けるのではと思っています。

HIDESIGN

山口氏と一緒にものづくりをするうえで、HIDESIGNとして新たな発見などはありましたか。

吉井氏:毎日が驚きの連続です。今回のコレクションの指標として提言頂いた”グレーカラー“という言葉一つでも想像が掻き立てられました。我々がデザインを手掛ける企業制服は、いわゆる屋内外で肉体労働を基軸とする”ブルーカラー“とオフィスでの知的労働を基軸とする”ホワイトカラー“に分類されるのですが、その境界を曖昧にし、それぞれのユニフォームに内在する魅力を都市のライフワークの中で活かしていく理想を込めた言葉と受け取っています。未来に向けて可能性が広がる言葉だな、ととても気に入っています。

ユニフォームを作ってきた高い技術を持つブランドだからこそ、コレクションを制作する上で山口さんが難しいと感じたことや、新しく気付かされたことなどはありますか

山口氏:衣服をプロダクトとして捉えた強度の面で、ユニフォーム業界の基準値が高いことを実感しました。生地の品質から縫製の仕様まで、経済合理性を含めたプロダクトとしての強度を求められるユニフォームウェアに対して、装飾によって華やかに仕上げることがファッションウェアの魅力の一つでもあるので、接地点の設定は思考し続けています。
今回のコレクションに辿り着いた一つの接地点が、東レ株式会社が目下力を入れている、100%植物由来のテキスタイル開発です。
数百万mの規模感でテキスタイルを製造するユニフォーム業界では、石油由来のテキスタイルが強く問題視されており、更に、安全に数年間着用できるテキスタイルの強度を物理的に保つことが、高い難易度として存在しています。
この課題に対して挑戦する意味でも、東レ株式会社と密にコミュニケーションを取ることで、ユニフォームウェアとしての機能性をキープし、ファッションウェアとしての装飾性を保ちながら、植物由来に置き換えられるテキスタイルのクオリティを模索しました。
HIDESIGNの労働環境に最適化してデザイン設計という理念と、出来る限り想像力を働かせながら、地球環境にまで拡げていけると望ましいと思います。

HIDESIGN

今回のショーは、HIDESIGNとしてどのような位置づけになるのでしょうか。

吉井氏:ユニフォームウェアでは、案件別に数万着を数年単位で安心に着用できる設計を求められるため、素材から縫製仕様まで、安定供給できるソリューションが採用されるケースが多いですが、業界としてイノベーションも諦めている訳ではなく、実験的な開発は日々行われており、そしてそのほとんどは日の目を見ていないことが現状です。
今回のコレクションはこれらのイノベイティブな開発の一端を発信できる場としても位置付け、ファッション/ユニフォーム双方の業界にとって新たな価値を見出せる場に出来たらと考えています。

山口氏:ショーで発表するコレクションは、単純にユニフォームにファッション性やトレンド性を備えることではなく、新しい規格を模索し、提案するという感覚です。都市環境に最適化出来るよう設計された衣服に、ユーザーにとって必要なツールを自由に収納する様相がファッションとして成立すれば、機能が装飾へと変容し、HIDESIGNならではの美しさが描けるのではと思っています。

HIDESIGN

最後に、HIDESIGNとしての今後の展望をお聞かせください。

吉井氏:都市生活において服を選ぶ際、人を補助する為の機能が、装飾として情緒的に作用出来ればと思っています。ツールを持ち運ぶポケット。状況によってセパレート出来るスリーブ。天候によってアジャスト出来る着丈など、人と環境に特化したデザインを得意とする我々の一つ一つのアクションが、ファッションとして社会に繋がればステキだな、と。これまでの知見をしっかりとカタチに残し、ブランドとして提案出来たらと思っています。

山口氏:こうした想いとリソースを持ってらっしゃるチームは本当に稀だと思うので、社会において新しい価値を築いていけるようにできたらいいですね。物作りの川上に位置するメーカーが未来に対して提案したい想いをHIDESIGNが吸い上げ、未だ見ぬ価値としてコレクションの中で発表することは今回のコレクションでも手が届きそうな気がしています。次の課題は、その価値をエンドユーザーにまで届けること。今回のコレクションを経て、新たにチームに加わって頂ける方々に気付いて頂けたら、嬉しく想います。

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