Interview & Report

末安 弘明 Hiroaki Sueyasu

末安 弘明 Hiroaki Sueyasu KIDILL(キディル)

KIDILL Designer

2014年、KIDILL(キディル)をスタート。”KIDILL” とは、カオスの中にある純粋性を意味した造語。自身が90年代に体験してきたパンクカルチャーを軸に、現代の新しい精神を持った不良達へ向けた服を制作。

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2014年のブランド設立以降、デザイナーである末安弘明氏が傾倒するパンクやハードコアカルチャーなどを発想源にコレクションを発表し続けるKIDILL。独自性が高く、他に類を見ないブランドとして国内外でファンを獲得し、パンデミック禍にも関わらず海外での売上も順調に伸ばしている。
昨年度にはTOKYO FASHION AWARD 2022を受賞し、今後の更なる活躍が期待されるブランドについて、5シーズンぶりに現地に赴きパリで新作コレクションを発表したばかりという末安氏に話を伺った。

2014年のブランド設立以降、ブランドが成長していく上でターニングポイントはありましたか?

2017年にTokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門(以下プロ部門)、昨年TOKYO FASHION AWARD(以下、TFA)の受賞がビジネスとしてのターニングポイントになったと思っています。海外進出を漠然と考え始めていた2017年頃に、プロ部門を受賞し3年間の継続的な費用支援を受けられることになり、パリで展示会をスタートし、少しずつ海外アカウントを増やしていきました。TFAの受賞では、海外ビジネスを拡大するための具体的な海外支援を受けられることになり、海外市場に向けたブランドとしてステージが変わったように感じています。ブランドとして成長して行きたいタイミングで、二つの賞を獲得できたことが大きかったですね。

現在の海外ビジネス概況を教えてください

アメリカ、カナダ、中国、韓国、ロンドンなどに取引先があり、今回獲得した新規も含めると海外25アカウント程度です。売上高でいうと国内の方が多いですが、近いうちに逆転しそうです。パリファッションウィークの公式スケジュールにも入れるようになったことで、コンタクトが増えてコロナ禍でも国内外で新規取引先が増加しました。今回、パリ公式スケジュールで新人枠ブランドとしてですがファッション・ウィーク初日にフィジカルプレゼンテーションも初めて開催してきました。セールス、PR体制を整えていることもあり今季のコレクションも反応が非常に良く、既存店での受注額も新規アカウント数も増え、SS 22シーズンから150%増程度で着地する予想です。

どのようなプレゼンテーションを発表されたのでしょう?

KIDILLは、前シーズンのヘンリー・ダーカーのようにアーティストとのコラボレーションによってコレクションを製作することがこれまで多く、見る方によってはコラボレーションに偏っているようなイメージがあったように思います。SS23シーズンでは、そうしたイメージを覆そうと、デザイナーである自分の原点に立ち返り、パンクやロック、ホラームービーなど、自分が個人的にずっと好きなテーマからサイケデリックやパンキッシュなコレクションとして作り上げました。プレゼンテーションでも、アナログな80年代のホラー映画から着想した演出でゾンビを甦らせたりしています。

コレクションのテーマはいつもどのように決めてらっしゃいますか?

人との出会いや製作の中での自然な流れで決まっていくことが多いですね。デニス・モリスとのコラボレーションでは、まず彼と出会ったことから始まって、パブリックイメージリミテッドと繋がって。その後もずっと途切れずものづくりに繋がっていく。そういう意味では、今回パリに行ったことで、パリの日常、風景からインスピレーションを得たので、次のシーズンはこれらを反映したものになる気がしています。

今年3月には4年ぶりにファッション・ウィーク東京にTFA受賞者として参加されました。東京でのプレゼンテーションはいかがでしたか?

すでに1月にパリで発表したシーズンだったので、東京では22AWコレクションを発表するというより、ブランドに込めている自分の気持ちや姿勢を表現する集大成的な場にしたいと思って臨みました。ステージ上を花で埋め尽くして、コレクションピースを着用したPSYSALIA人という友人のロックバンドに演奏してもらう演出にしたのですが、KIDILLはパンクやロックなどの音楽と相性が良いので、ファッションの枠を飛び越えて表現できたこともあり、来場してくださったお客様は喜んでくださいましたし、とても良い機会になりました。

KIDILLはブランドとしてショップも長く運営されていて、様々な発信もされていますね。

ショップは在庫の倉庫として借りたスペースがそれだけだともったいないなと思ったので、恵比寿で週末だけオープンする4畳のマンション一室からスタートしました。その後、原宿に移転し、ショップとしての勉強を続けノウハウを貯めながら経営を続けています。直営の店舗だから出来る楽しみもあって、卸とは全く違う感覚でやっています。
ショップは、販売した金額が直接入りますし、ショップに助けられたことも度々あります。僕だけの目線ではなく、スタッフがブランドの良さをスタッフ目線でお客さんに伝えられるということにも価値を感じますし、実際に試着してもらうことで、洋服の良さを体感してもらえる場所として機能しています。個人的にはショップを持つことで自分もブランドもスタッフも全員の成長に繋がっていると思っています。

ショップ運営のみならず、末安さんご自身がバイヤーと一緒に撮影された写真をインスタグラムにポストされていたりとブランド独自の発信はいつもユニークで今後も更なる展開を期待しています!最後に、ブランドとして、デザイナーとしてこれから挑戦してみたいことを聞かせてください。

ブランドとしては、パリファッションウィークでKIDILLの強みを活かした表現が出来るようになりたいです。決して敷かれたレールの上を歩くのではなく、KIDILL独自のやり方でパリに挑もうと思っています。ビジネスとしても、知名度を上げて着実に売上を伸ばしていきたいと考えています。
デザイナーとしてはKIDILLを知らない層にもアプローチできるような企業コラボレーションをやってみたいと思ってます。ファッション感度は高く、良い意味でフラットな見方ができる人達にもKIDILLの要素が刺さる可能性があると思うので、チャレンジしてみたいと考えています。

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