Interview & Report

柳川 荒士 Arashi Yanagawa

柳川 荒士 Arashi Yanagawa 「 JOHN LAWRENCE SULLIVAN(ジョンローレンスサリバン)」デザイナー

TOKYO FASHION AWARD 2015 受賞デザイナー

ファッションに関わる前はプロボクサーという異例の経歴を持つ。全てにおいてテーラードが基盤にあり、伝統的な要素を取り入れたエッジの効いたスタイルを提案。繊細なクリエーションが魅力の一つである。2011-12 A/Wよりパリメンズコレクションへ発表の場を移し、国内外で活躍中。

独学で習得したテーラード技術をベースに、独自のカッティング、素材による先進的なスタイルを打ち出し、瞬く間に注目を集めた JOHN LAWRENCE SULLIVAN (ジョンローレンスサリバン)。 東京でショーの発表を続けた後、2011-12 A/Wよりパリに進出し、海外における存在感も着実に高まっている。 この2シーズンは、TOKYO FASHION AWARD(以下、TFA) の受賞ブランドとして、パリのショールームでコレクションを発表したデザイナーの柳川荒士に話を聞いた。

TFAの受賞デザイナーとして、先日パリの「showroom.tokyo」で発表した2016 S/Sコレクションは、70年代後半~80年代の音楽シーンにインスパイアされたものだったそうですね。

Cold Wave、Dark Waveなどと言われるアンダーグラウンドの音楽シーンをイメージしていますが、音楽だけではなく、 日常の中で触れたさまざまな要素が交じり合ってコレクションができているので、あまり限定的なイメージを伝えたくないんです。 だから、できればシーズンテーマやコンセプトはあまり言いたくない(笑)。ショーなどでも、コレクションの世界観を伝えるためにキャスティングや演出などを考えているので、 それぞれが自由に感じてもらえればと思っています。

JOHN LAWRENCE SULLIVAN 2016 S/S メンズコレクション

01_showroom.com
03_showroom.com

2015年1月(上)、6月(下)に実施された
showroom.tokyoより

2007 S/Sからしばらく東京でランウェイショーを継続した後に、2011-2012 A/Wからパリに進出されていますが、海外に発表の場を移した動機を教えて下さい。

やはりショーをしたいという思いが強くあります。それまで東京で8回ショーをして、良い評価もいただきましたが、より多くの人に見てもらい、 さまざまな意見を受け入れたいという思いがありました。パリでは、ジャーナリストたちがデザイナー同様に強い意思を持っていて、自分の判断で意見を発信できる人が多く、 こちらが本気でつくったものに対して、しっかりと向き合った反応が得られることは非常に刺激的です。バイヤーにしても日本の場合は、シンプルでカジュアルなアイテムを求められる方が多いですが、 海外ではショーやルックのビジュアルなどに興味を持ってピックアップしてくれるケースも多く、個性が強いアイテムが好まれる傾向があります。そういう点も海外の面白さだと思います。

 

ブランド立ち上げからすでに10年以上が経っていますが、日本のマーケットの状況に変化は感じますか。

パリに進出する当時は、日本にも個性が強いショップが多く、エッジのあるアイテムを探しているバイヤーも多かったのですが、 景気の後退とともに洋服が売れにくい時代になり、特にメンズは保守的な方向に進んでいると感じています。ただ、洋服が売りにくくなっていることは確かですが、ある意味、 今が普通の状態とも言えるし、ブランドのこだわりを理解してくれるショップと一緒に続けていくことができれば、問題はないと思っています。

テーラードがブランドの核になっていますが、どんなところに魅力を感じていますか。

堅苦しいイメージがあるテーラードですが、そのルールが魅力になっている部分があります。自分自身、何もないところから発想するよりも、 ひとつの基準があった上でそれを崩したり、振り幅を考えていくような服づくりしかできないところもあります。 自分のベースであり、メンズウエアの基礎中の基礎と言えるものが、テーラードだと思っています。

柳川さんは元プロボクサーというキャリアをお持ちですが、当時からファッションには興味があったのですか。

ファッションは子供の頃からずっと好きでした。姉がメンズファッション誌を購読していて、自分も見るようになって、そこに出ている人たちの真似をしてみたいと思ったのが、 中学1年生の頃です。それから、広島の地元のセレクトショップに通うようになり、お店の人たちから色々な話を聞かせてもらう中で、 ファッションへの興味が強まっていきました。そのお店はオーセンティックなアイテムを多く取り扱っていて、中学生の頃から革靴を集めたりするようになったんです。

 

自分で洋服をつくるようになるまでにはどんな経緯があったのですか。

オリンピックを目指してボクシングを続け、プロとしても4年間ほど活動した後に引退しましたが、そのタイミングで、 以前から興味があったロンドンに行ったんですね。カムデンマーケットなどに行くと、日本では考えられないような値段で革ジャンが売られているんですよ。 それをたくさん買って日本に戻り、友人が働いている中目黒の古着屋に場所を借りて、マーケットのように革ジャンを並べて売るということをするようになったんです。 やがて、自分でも洋服をつくってみようと思い、当時よく遊んでいたファッション業界の人たちに色々な人を紹介してもらい、ジャケット、パンツ、 ブルゾンの3型ほどをつくり出したのが、ジョンローレンスサリバンの始まりです。

2010年からはウィメンズもスタートしますが、メンズとの意識は違いますか。

基本的に自分がつくっているのでメンズの延長線上にありますし、世界観も共通していると思います。 自分のベースであるテーラードやスラックスなどをウィメンズに転換していくような意識で、あくまでも自分ができる範囲の中でつくっています。

JOHN LAWRENCE SULLIVAN 2016 S/S ウィメンズコレクション

ブランドとしては、今後も海外での発表を続けていく予定ですか。

そうですね。東京でショーを発表しながら成長してきたブランドなので、東京に対する愛はありますが、どうしてもスケジュール的に東京でショーをすると、 海外の取引先への納品が間に合わないという問題があります。今、海外のPRやショールームなどのチームを再編成しているところで、それが整ったら、 またパリかロンドンでショーをしたいと考えています。

 

 

 

 

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

Go to Top