Interview & Report

清水 則之 Noriyuki Shimizu

清水 則之 Noriyuki Shimizu Name.(ネーム)

TOKYO FASHION AWARD 2016 受賞デザイナー

文化服装学院卒業後、いくつかのブランドでパタンナーとして活躍。2010年(2011 S/S コレクション)に「Name.」をスタート。自らパターンを手掛け、類を見ない独自性を表現し続ける。

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パタンナー出身のデザイナー清水則之が、代表兼ディレクターを務める海瀬亮とともに2010年にスタートしたブランド、Name.(ネーム)。繊細なパターンワークや独自の素材使い、ひねりの効いたディテールなどによって時代の空気感を巧みに表現したメンズウエアで支持を集め、2016年にはTOKYO FASHION AWARDを受賞。初の海外展示や国内でのショー発表を経験するなど、着実に成長を続けるブランドのデザイナーを取材した。

まず、ファッションに関わる仕事をしたいと考えるようになったのはいつ頃からですか。

昔からファッションは好きでしたが、特に高校生の頃に、アンダーカバーから大きな影響を受けました。その当時は、若い人たちでもTシャツを着ればカッコ良くなれると感じさせるような等身大のアプローチが新鮮で、デザイナーの高橋盾さんが同郷で身近に感じられたこともあり、自分もファッションの仕事をしてみたいと考えるようになりました。将来は自分のブランドを持ちたいという目標を掲げて文化服装学院に進学しましたが、自分は手先が不器用だったので、在学中は挫折感を味わうことが多かったですね(笑)。

卒業後はどのような仕事をされていたのでしょうか。

しばらくは就職せずにフリーターのような状態でしたが、地元のセレクトショップのオーナーの誘いで東京出張についていくようになり、色んなブランドを知りました。その中で特に気になるレディスブランドがあり、そこで手伝いをするようになりました。デザイナーがパタンナー出身だったこともあり、パターンを深く教わり、その後いくつかのブランドでパタンナーを経験し、26歳頃からフリーランスで仕事を受けるようになりました。

パリで行われたshowroom.tokyoの様子
上2枚:2016年1月開催/下2枚:2016年6月開催

自分のブランドを起ち上げることになったきっかけは何だったのですか。

パターンの受注をしていたブランドで、企画面のサポートもすることになったのですが、しばらくしてその会社が倒産してしまったんです。そのブランドに携わっている時に、色々と話す機会が多かったのがいまの会社の代表の海瀬なのですが、彼が自分の会社を起ち上げることになり、僕がデザイナーとして参加することになって生まれたのが、現在のブランドです。その当時は服づくりの工程やコストなど、パターン以外のことはあまり把握していなかったので、そういう部分を勉強しつつ、自分ができる範囲内で人の目に止まるアプローチというものを考えながら、デザインをするようになりました。

洋服をデザインする上で、パタンナーとしての経験はどのように活かされていますか。

例えば、平面のデザイン画だけでは見えてこない線というものがあるのですが、そうした立体的なものの捉え方など、パタンナーならではの視点でデザインができることは自分の強みになっていると思います。僕はレディスのパタンナーからスタートしているのですが、現在のブランドの核になっているメンズにはパターン上のルールがたくさんあることが自分にとっては新鮮で、力を入れているスリーピースのセットアップは、パターンのルールを学んでいく上で取り組みがいがあります。このアイテムは少しずつアップデートを続けていて、生地や工場が変わる度にミリ単位でパターンを変えています。お客さまがその違いにどこまで気づかれるかは分かりませんが(笑)、こうしたこだわりはパタンナーを経験してきたことが影響しているのだと思います。

毎シーズンのコレクションテーマはどのように決めていくのですか。

最初から明確なテーマを設定することはなく、生地づくりから始めるケースがほとんどです。僕らはオリジナルの素材をつくることが多いのですが、明確なイメージを持って生地屋さんに行くというよりは、その生地屋さんが持っているアーカイブや加工技術などを見せてもらいながら、何かしらのきっかけを見つけ、そこから自分たちが欲しいと思う風合いや色をお伝えしながらオリジナルの生地をつくっていくようなイメージです。生地ができてから洋服のデザインを考えていき、全体の7割程度が固まった段階でシーズンテーマを設定します。

ショー形式のコレクションを発表した2016年秋冬シーズンは、どのようなテーマを設定していたのでしょうか。

このシーズンは、TOKYO FASHION AWARDの受賞デザイナーとして、パリのショールームで展示をすることが決まっていたので、さまざまな素材をパッチワークでつないだコートなど、海外のバイヤーの目を引きやすいデザイン要素を意識的に盛り込んでいた部分がありました。そうしたアイキャッチなアイテムと、これまでにブランドが取り組んできたシンプルなアイテムを対比させていくイメージで「アンビバレンス」というテーマを設定しました。この直後に海外からコンタクトがあるなど、ショー形式で発表したことでこれまでにない反応を得ることもできました。

ブランドとして初の海外展示も経験されましたが、今後の展望について教えて下さい。

TOKYO FASHION AWARDの受賞によって、海外での展示や国内でのショーなど漠然とやってみたいと考えていたことに取り組むことができ、非常に良い経験になりました。僕らのブランドはまだ経験が浅いスタッフが多く、身近にアドバイスをしてくれるような人も少ないため、みんなで一緒に考えながらさまざまなことに取り組んでいるため、今回の海外出展や国内でのショーも実際にやってみて初めて分かったことがたくさんありました。今後もこれまで同様にタイミングや縁を大切にしながら、これまでに経験してきたことにしっかり肉付けをしていきたいと考えています。

 

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

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