岩井 良太 Ryota Iwai AURALEE(オーラリー)
FASHION PRIZE OF TOKYO 2019受賞デザイナー
1983年 神戸生まれ
2015年 自身のブランド「AURALEE」をスタート
2017年 青山に直営店舗をオープン
[ Website ] http://auralee.jp/
[ Instagram ] https://www.instagram.com/auralee_tokyo/
原料からこだわったオリジナルの生地と、時代の空気感が巧みに表現されたデザインで、業界関係者などからも高い評価を得ているAURALEE(オーラリー)。2015年春夏シーズンに生地問屋から派生したブランドとしてスタートし、2017年には東京・青山に直営店をオープンさせるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けている。2018年にFASHION PRIZE OF TOKYOの第2回受賞者に選出され、翌2019年にはパリでのコレクションデビューを果たすなど、名実ともに東京を代表するデザイナーの一人となった岩井良太氏にインタビューを行った。
岩井さんがファッションデザイナーを志すようになったのはいつ頃からですか?
学生の頃から洋服は好きでした。高校生の時に古着屋でバイトをしていたので、どちらかというと将来は自分のお店を持ちたいという思いの方が強かったですね。ただ、徐々に洋服をつくる方にも興味を持つようになり、大学を卒業してから服飾の専門学校の夜間に通い始め、その後ノリコイケというニットブランドでアシスタントとして働くようになりました。その後、別の会社であるブランドのデザイナーを務めてから、もともと素材が好きだったこともあり、生地問屋の社長の誘いで現在の会社に入りました。そして、2015年にその会社の新ブランドとしてオーラリーを立ち上げることになりました。
毎シーズンのコレクションはどのようにつくっていくのですか?
特定のシーズンテーマは設けず、生地の風合いや質感、色合い、あるいは染め、織り、加工の技術などから素材のイメージを膨らませていくところからスタートすることがほとんどです。綿やウールなど素材ごとに機屋さんを回って自分のイメージを伝え、やり取りを繰り返して生地をつくっていきます。うちはファーストシーズンからお付き合いを続けている機屋さんが多いのですが、日本の質の高いものづくりに支えてもらっていることは大前提として、仕事を継続しながら密にコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていくということを大切にしています。
原料を求めて海外まで足を運ぶこともあるようですね。
はい。カシミアやキャメルはモンゴルに、ウールはオーストラリアやニュージーランドまで見に行きます。訪れる場所は大体決まっているのですが、その場ですぐに商談をするというよりは、顔合わせをしに行く意識が強いです。結局、自分たちの仕事は人と人の関係性で成り立っていますし、ビジネスのことだけを考えれば相手にとっては僕たちよりも良い商売相手はたくさんいるはず。だからこそ、自分たちは良いものをつくりたいから、こういう素材を使わせてほしいという思いをしっかり伝えるようにしています。
上がってきた生地を洋服に落とし込んでいく段階ではどんなことを大切にしていますか?
すべてオリジナルで素材をつくっていることもあり、上がってくるものはいままでに見たことがないものなんですね。もちろん、素材をつくっている段階で並行して洋服のデザインも考えているのですが、実際に上がってきた生地が想定していたデザインと合わないことも少なくなく、その場合は素材に合わせてデザインを変えていきます。一貫してこういうつくり方をしているのですが、素材とデザインのバランスに関しては常に試行錯誤を続けていて、未だになかなか1回ではうまくいかないんです(笑)。
Photo by Shoji Fujii
Fillm by Yohei Haga
パリLycée Henri-IV HIGH SCHOOLで行ったAURALEE 2020 Spring & Summer Presentation
2017年には東京・青山に直営店をオープンしましたが、これによって何か変化はありましたか?
お店ができたことで、ブランドをまとまりとして見せていくという意識が持てるようになったことが大きな変化でした。ブランドの世界観を表現できる場が持てたことは大きかったですし、そういう意識を持つようになったことが、後々の自分たちの活動につながっていったところがありますね。
FASHION PRIZE OF TOKYOの受賞者として、2シーズンにわたって行ったパリでのコレクション発表もまさにブランドの世界観を表現する機会になりましたね。
そうですね。とはいえ、自分たちの洋服は強い個性があるわけではなく、上質でニュートラルなものが多いので、無理をして強度があるものを見せようとしても仕方がありません。背伸びはせずに、自分たちらしい表現をするということを心がけ、僕たちの考え方を理解してくれるチームをつくり、ブランドの雰囲気や姿勢、空気感に合う会場選びなどを行いました。例えば、3月に行った2019 A/Wコレクションのプレゼンテーションでは、ポンピドゥー・センターにあるアトリエブランクーシを会場に選んだのですが、これも彫刻家のコンスタンティン・ブランクーシの飾り立てずにものの本質だけを形にする作風が、自分たちのブランドにフィットすると考えてのことでした。
ブランドの今後の展望についてお聞かせください。
これからも質の高いものづくりを継続していくことが前提になりますが、その上で、ブランドの世界観の提案というところにより力を入れていきたいと思っています。今後も海外での発表は続けていくつもりですが、一方でいつもお世話になっている日本の方々に感謝を伝える意味でも、東京でショーをすることなども視野に入れていきたいですね。
Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto(インタビュー撮影)