Interview & Report

小塚 信哉/梶浦 慎平

小塚 信哉/梶浦 慎平 SHINYAKOZUKA (シンヤコヅカ)

TOKYO FASHION AWARD 2024受賞/JFW DIGITAL GRAND PRIX 2024 特別賞

小塚 信哉 (Designer)
2013年Central Saint Martins College of Art and Design ファッション学部メンズウェア学科を卒業。日本に帰国後、2015 年より”SHINYAKOZUKA”を開始。

梶浦 慎平 (Director)
2008年 青山学院大学経営学部を卒業。学生時より伊勢丹新宿店リ・スタイル プラスに従事。卒業後は株式会社サザビーリーグ ロンハーマン事業部にて立ち上げからメンズバイヤーを務める。その後渡米し、ニューヨークにてカットソーブランド、V::roomにてブランドのセールスや生産に携わる。帰国後、2017年より「SHINYAKOZUKA」参加。

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国内メンズ市場において、独特の存在感を放っているSHINYAKOZUKA。物語性の高いコレクションが特徴で、東京のファッションシーンの中でも異彩を放つランウェイショーに心を動かされるブランドの一つだ。そうしたエモーショナルな表現が目立つ一方で、毎年30%増のペースで売上を伸ばしておりビジネス面も好調だ。そんなブランドのこれまで、これからについて、デザイナーの小塚氏、ディレクターの梶浦氏に話を聞いた。

ブランドを始めた経緯を教えてください。

小塚氏:僕がセント・マーチンズを卒業し帰国したタイミングで、パリのショールームからブランドを始めてみないか?と声をかけてもらったことからスタートしました。ブランドビジネスについて何も知らないところから立ち上げて、最初の5年間は正直地獄だなと思いながら続けてました(笑)

とはいえ、今年でブランドは10年目ですね。大変な5年間を抜け出せたきっかけは?

小塚氏:コレクションを「issue」という概念に変更したことが大きいと思います。ブランドを運営していくストレスで何もかもに楽しさを見出せなかった中で、僕が根本的に良いと思うものを素直に作っていく、という原点に戻れた時機ですね。クリエイションにおいて自分らしいものづくりをと考えたこともありますが、「自分らしさ」はデザイナー皆が追い求めているものであって、オリジナリティを求める姿勢には逆にオリジナリティがないなと矛盾を感じて。なので、今はとにかく自分にとって素直なものづくりを続けています。自分のためにものづくりをすることは、結果としてお客さまや会社にも良い成果を届けられると思っています。

ものづくりにおけるインスピレーション源は何でしょうか?

小塚氏:お酒飲んでいるとき、散歩しているときなど、リラックスしているときにアイデアや言葉が浮かびます。僕個人の好き嫌いではなく、ブランドとしての良し悪しで考えることも大事だなと思っているので、お客さまをがっかりさせない視点も意識しています。issueのコンセプトやムードがお客さまにしっかり伝わった上で売れるモノになったら最高です。

現在のビジネス概況も教えてください。

梶浦氏:国内は約50〜60店舗、海外はアジアを中心に20〜30店舗程度の取引先があります。売上は前年30%増を近年キープし続けています。

素晴らしいですね!ブランドの成長をどのように捉えていますか?

梶浦氏:昔は20代のお客さまが多かったのですが、今は幅広い世代の方にご愛用いただけています。トラフィックの多い店舗への展開を拡げるなど、以前より取引先様のバリエーションが増えたことが要因ですね。国内に関してはエリアバッティングがあるので、店舗を増やしていくことよりも既存店舗とのお取り組みを大事にしていくステージかなと現状を捉えています。また、同時に40、50代やウィメンズなど新規マーケットへの参入も検討しているところです。

東京で実店舗も運営されていますね。

梶浦氏:品番が多いブランドなので、お取引先店舗で商品を見ていただくのがお客さまにとって宝探しのような状態になっていて。そんな状態を解消するため、フルラインナップでご覧いただく場として店舗をオープンしました。23年度は店舗での売上が前年度の3倍となり、今ではECと半々程度まで伸びています。

海外展開における手応えはいかがでしょうか?

梶浦氏:ブランド立ち上げ時からパリでショールームを行っていて、実際に結果も出ているので手応えはあります。当初は国内、海外でのビジネスが半々程度のバランスで、現在は国内が伸びたので7:3くらいの割合です。海外に関してはマーケットやトレンドを見て提案しているMDがハマっていることもあり、シルエットやモノとしての評価が高い。今後は小塚が提案している世界観やコンセプトについても、海外でショーをやるなりしてこれからしっかり理解してもらえたらと考えています。

ランウェイショーはブランドにとってどのような意味を持ちますか?

梶浦氏:僕の立場から見ていても、ブランドとしての表現が最も出来ているのはショーだと感じます。あらゆる面において、ブランドの勢いやムードを伝搬できる力がショーにはありますよね。

小塚氏:ショーをやり始めてから、商品単品ではなくブランドとして見てもらえるようになった感覚があります。ショーには情景、音、モデルのパーソナリティ、そして服があり、ブランドとしてのアティチュードを最大限に表現できるもの。言葉に出来ないような熱量があり、毎回やって良かったなと思えます。また、ショーをやるようになってから、勉強のためにも他ブランドさんのショーも拝見するようになって。東京には個性的なブランドが多いので、その中で自分たちがどのようなポジションで一番を目指すのか考えるようにもなりました。

JFW DIGITAL GRAND PRIX 2024 特別賞

「東京発のブランド」ということを意識しますか?

梶浦氏:ブランドとして意識することはありませんが、洋服、生地を作ることが出来て、更に大きなマーケットとファッション・ウィークがあるという街は東京だけだと思います。パリにはファッション・ウィークはあるけど、生産の拠点はないわけで。日本で、東京で、僕たちが活動できることはとてもラッキーなことなので、ものづくりの街が途絶えないようにもっと頑張らないといけないなとは感じています。

最後に、ブランドとしての展望も聞かせてください。

梶浦氏:まずはブランドを続けることを目標としています。そのために、利益率を向上させて、投資のバランスを整えていきたい。未開拓のマーケットを取り込んでいくためにも、今後実店舗も増やしていく構想もあります。

小塚氏:僕はスパッと辞めたいですね(笑)。先を見るよりも、素直さにも繋がりますが、一つ一つのシーズンをissueを大事にしていくことをブランドの目標としていきたいですね。

Interview by Tomoko Kawasaki
Photography by Daichi Saito

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