Interview & Report

森川 拓野 Takuya Morikawa

森川 拓野 Takuya Morikawa TAAKK (ターク)

FASHION PRIZE OF TOKYO 2020受賞デザイナー

文化服装学院卒業後、
( 株) イッセイミヤケ入社
企画デザイン担当を経て独立。
自身のブランドTAAKK を立ち上げる。

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素材と技法にこだわる独自のクリエイションが評価され、「TOKYO FASHION AWARD 2017」に選出、パリやニューヨークでの展示会を経て、2019年には「FASHION PRIZE OF TOKYO 2020」を受賞した、TAAKK(ターク)。翌年には、ブランドとして初めてパリでランウェイショーも行い、国内、海外市場共に成長を続けている。Rakuten Fashion Week TOKYO 2021SSでは、フィジカルショーのトップを飾り話題をさらったTAAKKを率いるデザイナー・森川拓野氏に、ショーの反響やコロナ禍のご自身の心境、ブランドの展望などについて話を伺った。

今回のコロナ渦はブランドにどのような影響がありましたか。

ブランドとしては大きな影響や変化はありません。それまでと変わらず、良い服を作って、お客さまにちゃんと届けるという、ファッションブランドとしての本質を追っています。

環境を意識したクリエイションに取り組まれていますが、インスピレーションやものづくりに変化はありましたか?

コロナ前に、ファッションブランドが皆一気にサステナブルだと言いだしたことにとても違和感がありました。大企業がやるならともかく、僕たちのように小さなブランドがエコを目指すのは単なる自己満足のような気がして。口先だけのリサイクル、サステナブルを進めるのであれば、そもそも生産自体をやめたらいいのにと。捨てられることのない良い服を作ること、服の価値を伝えて届けること、当たり前のことを僕たちは今も続けています。

TAAKK 2021 S/S collection runway show

3月実施予定がコロナウイルスの影響により中止になり、10月のRakuten Fashion Week TOKYO会期中に「FASHION PRIZE OF TOKYO 2020 WINNERS’ EVENT」として改めて開催されました。今回のランウェイショーは、どのような意識で取り組まれたのでしょうか?

10月のタイミングでもイベント開催そのものに対するネガティブな空気感が世の中にあったこともあり、足を踏み入れるだけでも楽しい気分になれるようにと新宿御苑を会場に選びました。ランウェイショーはとても素敵なものですし、服を作って、服に込めた想いを伝えていくことはとても大切なので、海外含めて今後も何かしらの発表を続けていこうと思っています。

今回のショーで発表された、ルネマグリットにインスピレーションを得たコレクションについて教えてください。

今に限った話ではなくて、ルネマグリットが昔から好きです。発想の逆転によって、当たり前の日常を新鮮に見せてくれますし、違和感がデザインのヒントを与えてくれます。コレクションの中は最後の方に登場するルックのような、シャツではなく、ジャケットをタックイン、カマーバンドを付けているスタイルですね。典型的なメンズの発想からは違和感があるもの。リネンからシャツに変わるジャケットも、お互いの機能がドッキングしている特殊なファブリックを使いました。メンズが日常的に着る洋服は、生地を着るものだと思っているんです。ファブリックをつくることはデザインすることと同義だと。意味のあるファブリックを作っていきたいから、番手や織機について常に勉強しているし、自分の意志を工場に理解してもらえるようにコミュニケーションし、毎シーズン数多くのサンプルを織ってもらっています。

これまでも「手紙」をテーマにした動画を制作されるなど、「届ける、伝える」ことに対して、とてもこだわりを持ってらっしゃいますよね。

そうですね、どういうことを考えて服を作ってきたか、しっかり丁寧に伝えていきたいと思っています。デジタルで便利で、ZOOMだけで繋がる世の中はつまらないような気がして、取引先にも工場にも、一言だったとしても手書きで言葉を伝えるようにしています。2021春夏コレクションの発表では、ランウェイショーの翌日にインスタレーションを開催し、半年かけてチームみんなで作ってきたものを実際に触って見てもらえる場面を用意しました。ショーだけでは伝わらない服の細部やこだわりを丁寧に伝える方法として行ったのですが、ご来場いただいた方々にはとても喜んでもらえましたし、実際やってとても良かったと思っています。 一般のお客様に対して、もっともっと僕たちの服を好きになってもらうために卸先の店頭に立つこともあります。決して着やすい服を作っているわけではないので、丁寧に伝える努力をすることが必要だと思っています。感動した気持ちは周囲に伝染しますよね。SNSで簡単に、ボタン一つで情報は拡散しますけど、5年後、10年後に残る大事なことや情報は気持ちが伴わないといけない。ブランドとしても、一人の人間としても、もっともっと伝える努力を続けていきたいですね。

TFW、プライズと受賞され、今後のご活躍を期待される立場かと思いますが、率直な今後の展望をお聞かせください。

今後もファッションブランドとしての当たり前のこととして、もっともっと良い服を作っていきたいですね。シーズンごとの型数を増やすことは考えていませんが、10年、20年残るような、人々を驚かせるようなファブリック、服を作っていきたい。良い服を作ることで、今回のプライズのように周囲や世界が変わっていきますし、クリエイションを貫き通すことがビジネスに繋がり、ブランドとしての規模も大きくなっていくと思っています。TAAKKは、スタッフやチームの皆が家族のように携わっているファミリー感の強いブランドなんです。これからも、このガチャガチャした感じを大切にしながら僕たちらしいパッケージングで面白いものを生み出して行きたいと考えています。

Interview by Tomoko Kawasaki
Photography by Yohey Goto

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