Interview & Report

Akira Takeuchi / Tayuka Nakanishi

Akira Takeuchi / Tayuka Nakanishi 武内昭・中西妙佳

THEATRE PRODUCTS

武内昭は1976年生まれ長崎県出身、中西妙佳は77年生まれ神奈川県出身。武内、中西ともにエスモードジャポンで学ぶ。卒業後、武内はコム デ ギャルソンのパタンナーに、中西はサンエーインターナショナルの企画へと進む。2001年、ロンドンのセントラル・セント・マーティンズ卒業のプロデューサー、金森香(74年生まれ)と共にTHEATRE PRODUCTS(シアタープロダクツ)を設立。09年表参道に路面店をオープン。現在、渋谷パルコ、原宿ラフォーレ内(ストライプ バイ シアタープロダクツ)などにショップを構える。

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「洋服があれば世界は劇場になる」をコンセプトに、トレンドや新しさだけにとらわれることなく、誰の真似でもない唯一無二な世界観、自分たちにしか出来ないクリエーションを真摯に追求してきたシアタープロダクツ。来年はブランド創立10周年を迎える。東京を中心に多くのファンから共感を得ている服作りの源とは。デザイナーの武内昭さんと中西妙佳さんに伺った。

最新コレクションのテーマは「CAMOUFLAGE(カモフラージュ)」。20世紀初頭にフランスで活躍した画家エドゥアール・ヴュイヤールの絵画がインスピレーション源になっているそうですね。

中西:エドゥアール・ヴュイヤールの絵は以前からとても好きでした。今回、改めてヴュイヤールの絵を見ていた時に、ここに今自分たちが表現したい世界があるんじゃないかと思ったんです。膨らみを持たせて、表現することが出来そうだ、と。ヴュイヤールは日常の風景や、人がいる風景を頻繁に題材として取り上げていたようです。さまざまな色使いや、細かな柄によって成り立っていて、そこが面白いと感じました。そこから、カモフラージュというテーマにつながっていきました。

武内:人が入ることによって空間が出来る、空間に混ざって人が出来ている。それを何と表現するかと考えた時にも、カモフラージュという言葉が一番しっくりきたんです。

 

ヴュイヤールが生きた時代背景も意識しましたか?

中西:そこはあまり考えずに作っていました。コレクションを作っていく過程での、キーワードのひとつに “けだるさ” があって、シルエットや分量感、色使いなどで表現しましたが、その時代のムードにたまたま合致したのかもしれません。

そもそもデザインの工程において、武内さんと中西さんの間で役割分担のようなものはあるのでしょうか?

武内:分担は特に決まっていません。その時々によって違うし、コレクションごとに変わることもあります。

中西:ひとつ “何か” をポンと投げたら、お互いにいろいろとくっつけていく感じです。だから、相手があまり気にしないことを投げてしまうと、スルッと通り過ぎてしまうこともある。でも、この行程が重要で、自分の中でぼんやり思っていたことを相手に投げ、そのことを相手がまた投げ返してくることで、どの方向に進みたいのかが見えてきます。服は人が着てこそ出来上がるものだと思っているので、その服を着てどんな動きをするか、どこにいるかなどを想像しながら作っています。でも、日常にばかりとらわれていると、小さくまとまってしまいがち。お互いにやり取りを重ねながら作っていくことによって、着られる物でありながら、強いメッセージを持つ服を作ることが出来るような気がしています。

今回ランウェイの模様を3Dカメラで収録し、映像作品を製作するそうですね。

中西:3Dには前から興味があったのですが、特に今回のテーマを表現するのに適していると思いました。収録はパナソニッックさんの協力です。まだ完成していませんが、出来上がった映像がどのように見えるのか、とても楽しみです。

武内:3Dを楽しむという意味でも、こだわりのある演出ができたと思います。映像は12月10日から27日まで、表参道ヒルズの「PASS THE BATON GALLERY」でご覧いただけます。ショーで使ったはしごなど、すべての什器が「PASS THE BATON」のものなので、実際にショーで使ったセットも展示、購入することもできます。映像作品として完成したものは来年発表予定です。

毎シーズン、凝った演出が目を引きますが、
シアタープロダクツにとってランウェイショーとはどんな意味があるのでしょう?

武内:実はそんなにショーにこだわりはないんです。ただそこに自分たちが表現したい世界観があって、服があって、その服を着た時にどう見えるか、といったことを、より多くの人に伝えるためには、ショーが一番伝わりやすく、一番効果的というだけのことなんです。

 

ショー以外に、他ブランド、メーカーとのコラボレーションも頻繁に行っていますね。コラボはどういったきっかけでスタートするのでしょう?

武内:今シーズンは長崎の陶器メーカー、協立陶器と組んでいます。コラボレートのきっかけは、自然に生まれてくるんです。協立陶器はいつもお世話になっている生地屋さんの紹介でした。

中西:毎シーズン、テーマを強く反映させた生地を作ってもらっています。ある時、電話がかかってきて、「陶器に興味ある?」と聞かれ、「あります!」と即答しました。

武内:長崎出身なので、波佐見焼はとても身近なものでしたが、後で知ったんですが、実は自分の出身地の地元にあるメーカーでした。実際に会いに行ってみたら、共通の知り合いがいたり、うちの父も知っていたりと、本当に近いところにありました。

シアタープロダクツのルーツに迫りたいのですが、お二人が服に興味を持つようになったのはいつ頃ですか?

中西:物心がついた頃には、洋服を作りたいと思っていました。母は洋裁が趣味だったので、服を作ることに馴染みがあったのかも知れません。毎日、自分で服を作るということはありませんでしたが、お絵描きが大好きでした。小さい頃、女の子の絵を描いて遊んでいたのですが、私の場合、その絵の女の子が着る服がとにかく重要でした。今思うと、そこが最初かもしれません。服は買うことも出来るし、作ることも出来ると無意識に知っていたようです。

武内:今思えば多分、中学校1年生の時ですね。学校の文化祭で観た演劇がすごく衝撃的で、自分もいつかこういうこと絶対やりたいって思ったんです。表現は違うんですが、自分がイメージしたことを、形にして、発信していくという意味では変わりがないように思います。服に興味を持ったのは、学校主催のセミナーで立体裁断の1日体験という授業に参加して、とても楽しかったことがきっかけになったと思います。

中西:私は神奈川の伊勢原市出身。今でこそヴィンテージも好きですが、昔はそういうものを探すということ自体、思いつかなかった。東京は近いけど、すぐには行けない中途半端な距離(笑)。初めて原宿のセールに行ったのは高校生1年生の時だったかな。

では、お二人にとって、今の東京はどんな場所ですか?

武内:ファッションを素直に受け止めている街。メーカーをやっている立場としては、すごく恵まれた環境だと思いますね。

中西:東京の多くのものがよその国からきたものに影響されていますよね。そういった日本独特の洋風文化は無意識にものづくりに反映されていると思いますし、そのことはとても意識しています。

お二人が今ハマっていることや、注目していることはありますか?

武内:僕は那須にハマっています。昨年から弊社の金森が実行委員長となり、那須で「スペクタクル・イン・ザ・ファーム」というイベントを行っていて、今年も11月27日、28日に行う予定です。今年は那須大学と組んで、大学の校舎や体育館、校庭を使って、いろんな人がライブやパフォーマンスをします。今年は去年より規模もぐんと大きくなっているので、ぜひ足を運んでみてください。

中西:私は「PASS THE BATON」です。プライベートでも行きますし、仕事のつもりで行ってもいつの間にか気分はプライベートになっちゃう。アトリエからも近いので頻繁に行ってしまいます。クリエイターでは、今回コレクションの音楽を一緒に考えてくださったミュージシャンの蓮沼執太さんも素敵な出逢いでした。

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