Interview & Report

ラカム RAKAM

ラカム RAKAM introduced by A DEGREE FAHRENHEIT

THIS IS MY PARTNER vol.2

ラカムは毛織物の産地である愛知県一宮市を拠点に、刺繍工場として多様なニーズに応えてきた。デザイン力と刺繍のクオリティに更なる磨きをかけ、特許取得の「ムカラ刺繍」を武器に、その名を産地内外に轟かせている。

株式会社ラカム
愛知県一宮市/創業:1975年
事業内容:(熱接着)刺繍の製造、販売/従業員数:42名

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株式会社ラカム
チーフデザイナー 酒井 芳則氏

[紹介デザイナー]
A DEGREE FAHRENHEIT(エーディグリーファーレンハイト)
天津 憂
「酒井さんご自身もデザイナーなので、イメージの共有もスムーズに、新しいチャレンジをさせてもらっています。」

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時代とともに拡張する技

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1975年に創業した株式会社ラカムは、国内有数の繊維産地である愛知県一宮市に拠点を置く。毛織物の生産をする機屋だけでなく、ニット工場や加工場、縫製工場なども拠点を置く地域である。ラカムはそんな産地で、刺繍工場として生地への刺繍を生業に刺繍の技術を磨いてきた。

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そんなラカムをパートナーとして紹介したのは、A DEGREE FAHRENHEIT(以下ADF)。ADFのコレクションといえば、ランウェイを歩くモデルたちが次々と美しいドレープの曲線を描いてゆき、優雅な雰囲気に包まれた世界観が印象的だ。パタンナー出身である天津氏のパターンと素材へのこだわりを上品に映し出している。

「初めてお電話をいただいた時は、天津さんのエレガントでミニマルな世界観に弊社の刺繍でどんなお手伝いができるのか、という疑問がありました」と話すのはラカムのチーフデザイナー 酒井氏。

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両者は、4年前に尾州で開催された産地ツアーで出会い、初めての協業となったのは2013年1月、ベルリンのMercedes-Benz Fashion Weekで発表されたADFのコレクション。オーガンジーに施された美しい刺繍が披露されたが、これこそラカムの技であった。

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刺繍は、各クライアントが持ってくるデザイン案を刺繍用のデータに翻訳するところからはじまる。その際に、クライアントの意図を汲み取るのも刺繍屋の重要な役割である。時には仕様や技術面から逆提案することも求められる。そこから糸が重なり刺繍を形成する表現力や、仕上がりの表情の美しさなど、これらの要素を合わせて刺繍工場のクオリティとして評価される。

ラカムは今、刺繍技術とデザイン力、提案力から業界内で絶大な支持を得ている。

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生地に直接刺繍をする直刺繍が一般的だが、ラカムの最大の武器は、特許を取得している「ムカラ刺繍」という熱圧着タイプの刺繍方法だ。生地の上に熱で圧着するため、布の接ぎ目でも刺繍をのせることができること、生地の裏に刺繍糸が出ないことなど、多くの利点がある。そこに、ラカムが培ってきたデザイン力と刺繍のノウハウが合わさり、多様な特殊オーダーに応えてきた。

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「受注生産型でしたが、繁忙期以外のシーズンオフは機械がフル稼働しなくなってしまう。この問題を解消するために、熱圧着での刺繍小物を作り始めました」と酒井氏は当時を振り返る。

「熱圧着の刺繍をされている企業さんは他にもありますが、ラカムさんは素材や材料を独自開発しているので、熱圧着の刺繍でも柔らかく、剥離も起こさない。その技術の高さに、ぜひ使わせていただきたいと思いました」と天津氏。

ADFの特徴でもある薄く柔らかい素材に直刺繍をする場合、生地の裏に芯を貼ることが多く、生地が厚く固くなってしまう。そういう理由から、天津氏はこれまでADFのコレクションで刺繍加工は難しいと考えていたのだ。

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「刺繍の可能性を拡大していきたい」と語る酒井氏の言葉通り、ラカムの技術によりADFに新しい表現が加わった。

ADFのエレガントな服に、どのような刺繍が共生するのか。可能性を広げた両者の挑戦が楽しみだ。

 

Interview&Text:Shinya Miyaura (Secori Gallery)
Photography:Yohey Goto

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