大野 陽平 Yohei Ohno YOHEI OHNO(ヨウヘイ オオノ)
TOKYO FASHION AWARD 2017受賞デザイナー
愛知県小牧市出身。文化服装学院に入学後。文化ファッション大学院大学を経て、英ノッティンガム・トレント大学に留学。帰国後の2014年12月に「YOHEI OHNO」を立ち上げる。2015AWコレクションにてデビュー。独特な素材使いやミニマルで構築的なシルエットで、新感覚のラグジュアリーウェアを表現する。
[ Website ] http://yoheiohno.com/
[ Instagram ] https://www.instagram.com/yohei_ohno/
[ Facebook ] https://www.facebook.com/Yohei-Ohno-497909973578090/
工業製品などの人工物から着想を得たフューチャリスティックな質感や色彩を、洋服というキャンバスの上で表現する独自のクリエーションで注目されているウィメンズブランド・ヨウヘイオオノ。ブランド設立わずか2年で TOKYO FASHION AWARD 2017受賞デザイナーに選出され、パリで2シーズンにわたるショールーム展示、さらに東京でのランウェイショーを経験したデザイナーの大野陽平氏は、近年メキメキと頭角を表している期待の新鋭だ。ファッションデザインに対する独特のスタンスや問題意識を持ち、どこか哲学者然とした雰囲気を漂わせる新世代デザイナーにインタビューを行った。
ファッションデザイナーを志したのはいつ頃からですか?
僕は愛知県の田舎の方の出身ですが、名古屋の高校に進学した際、市内から通っている都会の男子たちに比べて自分の格好はダサく、それを色んな人にダメ出しされて、彼女からも私服がカッコ悪いと言われ、パルコに買い物に連れて行かれるほどでした(笑)。そうしたコンプレックスからスタートして、徐々にファッションに興味が湧き、また親しい友人が文化服装学院に入学したことなども重なり、ファッションの勉強をすることになりました。うちは父が美術教師で、祖父が和菓子職人というものづくりの家系でもあったので、自分でも何かをつくりたいという思いも以前から強かったのだと思います。
ご自身のブランドを立ち上げるまでの経緯を教えてください。
文化ファッション大学院大学に在学中、コンテストで賞を獲り、1年間イギリスに留学しましたが、そこではボンディングした生地をレーザーで裁断し、仕立てが要らないプロダクトのようなウエアをつくっていました。これを市場で売ってみたらどんな反応があるのかが知りたくて、自分のブランドを始めてみることにしました。特に将来の計画も立てずに始めたこともあり、その後、割とすぐに普通の洋服をつくるようになりましたが(笑)、数シーズンを経て、ウエアラブルなプロダクトというものが自分のテーマであり個性だということに気づき、徐々に客観的にブランドのあり方も見えるようになってきました。
これまでに影響を受けたブランドやデザイナーは?
洋服をつくり始める前は、自分が着るということが前提だったので、UNDERCOVER(アンダーカバー)やNUMBER (N)INE.(ナンバーナイン)などが好きでした。ウィメンズのデザイナーでは、ニコラ・ゲスキエールに影響を受けています。バレンシアガが2007年頃、メタリックな甲冑のようなレギンスを履いたモデルが登場するSFのようなコレクションを発表したのですが、これが自分にとっては衝撃的でした。それまで、パリコレというのは自分とは無縁のきらびやかな世界だと勝手に思い込んでいたので、そこに男子の好きなものが登場したことが衝撃で(笑)。それがきっかけでウィメンズのデザインをしたいと思うようになったんです。
ウィメンズのデザインはどんなところが魅力なのですか?
僕は服づくりを俯瞰してとらえているところがあり、自分が着たい服をつくるということではなく、もう少し研究的な視点を持って取り組んでいます。自分が着る服、あるいは女性に着てほしい服ということになると、どうしても自分の良し悪しが判断基準になってしまいますが、それよりも興味があるのは、こういう服をつくったら女性はどう思うのかという部分なんです。いくら男性が合理的に突き詰めてつくっても、女性がそれをカワイイと感じなければ成立しないというのが、ファッションの面白さだと感じています。ファッションの世界は時代ごとにスターデザイナーがいたり、シーズントレンドがあったり、なんとなく正解らしきことはありますが、それがすべてではないし、明確な答えを言語化できないところも魅力的です。
服づくりのアイデアはどんなところから得ているのですか?
多くの人が自然を見て美しいと感じるのと同じように、僕は人工物に惹かれるところがあります。例えば、地下鉄のタイルの組み合わせや、光が当たっているコンクリートの質感などに自然と目がいきます。特に海外に行くと、日本人の自分からしたら理解できないような配色の建物などがありますが、そうしたものが記憶として残り、コレクションに反映されることも多いです。先日パリのショールームで発表した2018年春夏シーズンのコレクションでも、色と質感にフォーカスしました。色と質感のマッチングを吟味しながら素材を選び、インダストリアルでフューチャリスティックなブランドの個性は残しつつ、そこにオーガニックな要素を共存させることにトライしました。
2017年1月にパリで行われたTOKYO FASHION AWARD「showroom.tokyo A/W 2017」の様子
今年の3月にはTOKYO FASHION AWARD 2017の受賞ブランドとして、東京で初のランウェイショーも行いましたね。
今回初めてショーを経験して、自分ひとりではできないことでも、演出家やスタイリストなどのスタッフ、さらに学生インターンなど、多くの人たちの手助けによって実現できるということを実感できました。また、ショーをしたことで海外からの問い合わせがあり、新規の取り引きも決まるなど、国内外から反響がありました。最近は、ショーをすることをあまりポジティブに捉えない人も増えているようですが、ブランドごとに状況や環境は違うので一概には言えないことだと思っています。確かにショーはお金がかかるし、費用対効果という点ではあまり良くないかもしれませんが、それでも今回のような反響があることは事実ですし、今はブランドとしてもポジションをしっかり確立するべき時期なので、今後も継続していきたいと考えています。
Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto