大木 葉平 Yohei Oki SHOOP (シュープ)
TOKYO FASHION AWARD 2020受賞デザイナー
大木 葉平
15歳で、スペインへ渡西。
マドリードのアート専門高校 Escuela de Arte N2で学び、マドリードComplutense大学でアートを専 攻し、絵画、版画、グラフィックデザインを学ぶ。
YYIOY名義で音楽制作やDJもしている。
ミリアン サンス
スペイン、マドリード出身。
マドリードのEscuela de Arte N2で、ファッションデザインを専攻。Isituto Europeo di Designで、 ファッション写真とスタイリングのマスタークラスを学ぶ。 マドリードの老舗セレクトショップEkseptionとMarc by Marc Jacobsでバイヤーとして経験を積み、 その後、SHOOPを立ち上げる。
[ Website ] https://www.shoopclothing.com/
[ Instagram ] https://www.instagram.com/shoopclothing/
[ Twitter ] https://twitter.com/shoopclothing
[ Facebook ] https://www.facebook.com/SHOOPclothing/
ファッション業界で経験を積んだスペイン出身のミリアン・サンス氏と、15歳でスペインに渡ってアートやデザインを学び、音楽活動にも取り組む大木葉平氏が手がけるユニセックスブランド「 SHOOP 」。異なる国籍、バックグラウンドを持つふたりの感性が融合したコレクションは国内外で高く評価され、Drakeをはじめミュージシャンの支持者が多いことでも知られている。東京とマドリードの2都市を活動の拠点とし、2020年10月には、 TOKYO FASHION AWARD の受賞ブランドとして、東京で初のランウェイショーも行ったSHOOPの大木氏をインタビューした。
ブランド立ち上げの経緯をお聞かせください。
SHOOPは、マドリード出身のミリアンが2011年に立ち上げたブランドです。彼女は子どもの頃からファッションデザイナーになることが夢で、服飾の専門学校に通った後、アパレル業界で経験を積んできました。一方で僕は15歳でスペインに渡り、芸術大学でアートやグラフィックデザインを学びました。SHOOPでは初期からグラフィックなどのデザインを手伝っていて、気づけばブランドの一員になっていました。
おふたりの役割分担はあるのですか?
基本的にはありません。街行く人から、映画、音楽、インターネットまで身の回りのさまざまなものからインスピレーションを受け、お互いにアイデアを出しながら洋服をつくっています。SHOOPが大切にしているのは、自分たち自身がワクワクできるものをつくること。誰も考えたことがないようなディテールや、これまでにありそうでなかった洋服をつくるということを心がけています。
国籍やバックグラウンドが異なる2人の感性の融合というのは、ブランドの重要なアイデンティティにもなっていそうですね。
そう思います。一方でもともと僕らには似ているところも多く、例えば音楽の趣味が共通しているんです。お互いに小さい頃からヒップホップに触れていて、音楽性はもちろん、ファッション、グラフィティやダンスなどヒップホップカルチャー全般から受けてきた影響は大きいですね。
SHOOPの洋服はミュージシャンからも支持されていますが、ファッションと音楽の関係についてはどう考えていますか?
ファッションと音楽はどちらも文化を構成する重要な要素だと思っています。例えば、パンクテイストを打ち出しているブランドのデザイナーがJ-POPを聴いているようなこともあって、それはそれで面白い現象ですが、音楽、ファッション、ある思想などがリンクしていないのが、違和感があり、自分たちとしては、かつての裏原宿カルチャーがそうだったように、何かしらの文化(ムーブメント)をつくっていく一員として洋服をつくっていきたいという思いがあります。
今年の10月に東京では初となるランウェイショーを行いましたが、こちらについても聞かせてください。
ショー自体はマドリードで3回ほど経験していたのですが、東コレは日本のデザイナーの登竜門とも言えるイベントですし、そこに参加できることは大きなモチベーションになりました。僕らは、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた頃にスペインにいて、およそ2ヶ月のロックダウンを経験しました。家から一歩も出れない日が続き、毎日数千人が亡くなっていくような状況の中で、「世界はどうなってしまうのか?」「なぜ自分は洋服をつくっているのか?」ということを日々考えていました。自分たちがつくっている洋服は嗜好品に近く、生きていくために必ずしも必要なものではありません。でも、好きな服を着ると人はワクワクしたり心が動いたりするんですよね。そういうことを考え続ける中で、洋服を通じて人生を豊かにしていくブランド、極力、環境破壊などにつながらない服づくりをするブランドでありたいと強く思うようになりました。今回のショーは、こうした自分たちの思いや考え続けてきたことを表現する場になりました。
ショーには、ファイナルホームの元デザイナー・須田伸一さんとともに手がけたカプセルコレクションも登場しましたね。
はい。「パンデミック後の洋服とは何か?」ということもずっと考えてきたのですが、文字通り洋服が「最後の家」になるというコンセプトは、ひとつの答えだと思うんです。そのブランドをつくってこられた須田さんとコラボレートできたことは大変光栄でした。
今回のように社会情勢をコレクションのテーマに反映させることはこれまでにもありましたか?
スペインで初めてショーをしたシーズンも、フェイクニュースやポスト・トゥルースという社会問題をコレクションのテーマにしました。ショー会場に、新聞社のオフィスのようなセットをつくったのですが、いま振り返ると、とても自分たちらしいコレクションだったなと思います。自分たちはコレクションを通じて、政治的な思想などを発信していこうとは考えておらず、あくまでも風刺としてその時々の社会問題などを取り扱っていくというスタンスです。
今後のブランドの展望についても聞かせてください。
この一年を通して色々な経験をしたことでブランドは成長できたと思いますし、さまざまな物事の本質について考えることができました。もともとSHOOPは、ルックブックの写真などをSNSに投稿していたところから注目された経緯があり、どんな場所にいても面白いものさえ発信できていれば、多くの人たちに見てもらうことができると思ってきました。ただ一方で、ファッションの世界ではリアルの場での人とのつながりというものも非常に重要ですし、今回の東京のショーでも想像以上の反響があり、このような状況の中でフィジカルの力というものを再認識しています。こうした経験を踏まえて今後について考えると、自分たちが本当に成長できる場所のひとつとして、東京というのはとても重要な拠点になると感じています。今後も東京でランウェイショーを続けることを検討していきたいですし、いつか日本を代表するブランドになり、その反響が東京から世界へと広がっていくようになると良いなと思っています。
Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto