ヨシキ YOSHIKI 「YOSHIKIMONO(ヨシキモノ)」デザイナー/アーティスト
MBFWT 2016 S/S SPECIAL PROGRAM > YOSHIKIMONO FIRST COLLECTION
YOSHIKI氏は、ソングライター、ドラマー、クラシックのピアニストとして活動中。
これまでに天皇陛下の奉祝曲、愛知万博の公式テーマソング、ハリウッド映画のテーマソング、そして世界最高峰のゴールデングローブのテーマ曲まで作曲及びプロデュースしている、世界で活躍する偉大な音楽家である。
YOSHIKI氏率いるX JAPANは、これまでアルバム・シングルを合わせ3000万枚の売上げを誇り、55,000人収容の東京ドームを18回にわたりソールドアウトにした記録を持つ伝説のバンド。近年では北米・ヨーロッパ・南米・東南アジアを廻った公演がソールドアウトし、2014年には音楽の聖地ニューヨーク・マジソンスクエアガーデンでのコンサートを行い、大成功を収め、さらに2016年イギリス・ウェンブリーアリーナでもコンサートを発表、世界にその名を轟かせている。
【YOSHIKIMONO(ヨシキモノ)について】
アーティストYOSHIKI氏が創造するKIMONOブランド ”YOSHIKIMONO” は、実家が呉服屋だったYOSHIKI氏は、日本の伝統文化である着物を世界中に紹介したいという強い信念のもと、京都の老舗着物メーカー スコープココの加納圭悟氏との出会いにより、自らのキモノブランド「YOSHIKIMONO」を立ち上げた。
2011年3月に国立代々木競技場第一体育館で行われたアジア最大の音楽とファッションのコラボイベント「ASIA GIRLS EXPLOSION」で初めてお披露目となる。
2015年10月メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク東京において本格的にコレクションデビュー。
MBFWT 2015-16 A/W初日、メルセデス・ベンツ コネクションで行われたオープニングパーティにて。
「メルセデス・マイバッハ」で登場(2015年3月16日)
今年3月、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2015-16 A/Wのオープニングレセプションで、自身の着物ブランド「YOSHIKIMONO」で10月のMBFWT 2016 S/Sに参加することを表明したアーティストのYOSHIKI。コレクション発表まで1週間を切り、アーティストとして世界的に著名なYOSHIKIが、ランウェイでどんなクリエーションを見せるのかが注目されている。 コレクション発表直前のYOSHIKIに、呉服屋の長男として育った自身のバックグラウンドや、クリエーションにおけるこだわりなど、ファッションという切り口からさまざまな話を伺った。
MBFWT 2016 S/Sで、ご自身が手がける着物ブランド「YOSHIKIMONO」のコレクションを発表されますが、もともとファッション・ウィークについては、どのような印象を持たれていましたか。
ファッション・ウィークは、東京に限らず世界ファッション都市で開催されているものなので、まさにファッション界の中心的なイベントだと考えています。そうした場で自分のブランドのコレクションを発表させていただくことはとても光栄に感じています。
「YOSHIKIMONO」を始められた経緯を教えて下さい。
僕は呉服屋の長男として生まれましたが、このように音楽の道に進んだこともあって、僕の代で家業が途絶えてしまいました。それを何かしらの形で復活させたいという思いがあり、だいぶ前から企画を温めていましたが、知人を通して、京都で老舗の着物ブランドをされていた加納圭悟さんと出会ったことがきっかけとなり、本格的に取り組んでいくことになりました。
YOSHIKIさんは、着物のどんなところに魅力を感じますか。
子供の頃から母親が毎日着ていたこともあって、もともと着物は身近な存在でした。今、僕は海外に住んでいますが、日本から遠く離れた場所でたまに着物を見かけると非常に斬新に感じられますし、世界に誇るべき素晴らしい文化だと改めて思います。僕は伝統的な着物も好きですが、「YOSHIKIMONO」では、伝統も大切にしながら、そこからかけ離れたような表現もしていきたいと考えています。これまで僕が続けてきた音楽活動にも言えることですが、既存の枠から外れたものは時に批判を伴うものです。ただ、本来芸術というのはそういうものだと思っています。
音楽制作と服づくりに何か共通点を感じることはありますか。
そうですね。音楽やファッションといった分野だけではなく、芸術全般において一貫したこだわりというものが僕の中にはあります。だから、音楽にしても、着物のデザインにしても迷うことは少なく、すぐに「これ」と決められるところがあります。また、どんな分野においても、現実の世界と夢の世界を両方行き来できるようなものをつくりたいと考えています。現実だけを表現しても面白くないですし、幻想だけでは現実味がなく、人の心に触れられません。そのバランスがいつも大切だと感じています。
伝統と革新を融合させている点も、YOSHIKIさんのクリエーションにおける一貫した特徴と言えそうですね。
はい。僕はかなり前からクラシック音楽を続けていますが、ロックというのはその対極にあるものですし、昔から振れ幅の広い表現というものが好きなのだと思います。先ほどお話したように、「YOSHIKIMONO」においても、そのような表現をしていければと考えています。
YOSHIKIさんの音楽活動において、ファッションというのはどのような位置づけでしょうか。
とても重要なものですね。ステージ上では、照明や音響をはじめ、さまざまな要素が集まってひとつのものがつくられていくわけですが、その中でも自分たちが着る衣装には特にこだわりますし、できるだけステージ映えするようなものを着ようと意識しています。
これまでに影響を受けたミュージシャンのファッションや、好きなファッションデザイナーなどについても聞かせてください。
ミュージシャンでは、ダントツでデヴィッド・ボウイですね。以前、彼が来日した際に対談をさせていただく機会がありましたが、その時も非常に感銘を受けました。彼は、奇抜なファッションによって自分のイメージというものを形作ってきた人だと思いますし、彼から影響を受けたミュージシャンは数え切れないほどいるのではないかと思います。 ファッションデザイナーでは、アレキサンダー・マックイーンが大好きです。彼の反逆児的な精神というのは、パンク以外の何者でもないと思いますし、固定概念を破壊することにまったく恐怖心を持たずにデザインする姿勢には共感を覚えます。僕自身も、教科書的なものを壊していきたいという気持ちでずっと活動してきましたし、それによって、200年後にも聴かれるような未来のクラシックをつくっていきたいという思いを常に持っています。
プライベートのファッションについては、どのようなこだわりがありますか。
気合いを入れつつ、どこかゆるさを残すようなスタイルが好きですね。ファッションには自己主張がある方が良いと思いますが、上から下まで完璧に決まっているのは逆にカッコ悪いような気がするので、絶妙なラインをキープすることを心掛けています。また、これまでは海外のブランドの洋服を着ることが多かったのですが、最近は公私ともに日本のブランドのものを多く着るようになりました。ステージ上でもどこかで日本人であることを表現したいという思いがありますし、海外で長く生活をしているうちに、日に日に自分が日本人であるということを誇りに思えるようになってきたところがあります。
日本のファッションブランドや、東京のストリートファッションについてはどんなイメージを持っていますか。
日本人デザイナーの評価は、海外でも非常に高いと感じます。やはり、繊細な感性や東洋独特の雰囲気が支持されているのではないでしょうか。また、東京のファッションは、世界で最も刺激的だと思いますし、こんなに自由なファッションの感覚を持った都市は他にないのではないかと思います。
海外に進出している日本のファッションブランドも数多くありますが、海外に向けて発信していく際には、どのようなことが大切だと思われますか。
ひとつ面白い話があります。2010年頃に、北米7都市をツアーで回りましたが、当初はすべての楽曲を英語バージョンで演奏するつもりでした。ところが、アメリカのお客さんたちから「日本語の歌詞も聴きたい」というリクエストがあり、それからは意識的に日本語バージョンも少しずつ入れるようにしていったんです。僕としては、海外で演奏するからには英語バージョンにした方が良いと考えていたため、そうした現地の人たちの反応には非常に驚きましたし、それ以来、日本にしかないものを表現していくのは大切なことかもしれないと思うようになりました。
一方で、東京という場所で作品を発表していくことについては、何かお考えはありますか。
僕にとって東京で認められるということは、何よりも大切なことでした。それがあるからこそ、今、自分が日本の文化を背負って海外で活動できているのだと思います。20年ほど前にアメリカに拠点を移した時も、アメリカ人になりたいと思っていたわけではなく、日本人として、日本や東京を背負って活動しようと考えていたし、それは今も自分の誇りです。
最後に、来月発表するコレクションについて何か構想があればお聞かせください。
やはり僕はアーティストですし、ファッションに音楽というものは欠かせないものなので、ショー当日も音楽を演奏できればと考えています。事前にショーのための楽曲を用意していく予定ですが、即興演奏も好きなので、その場の雰囲気に合わせて演奏することもあるかもしれません。
Interview by YUKI HARADA