Interview & Report

久保 嘉男

久保 嘉男 yoshiokubo (ヨシオクボ)

yoshiokubo デザイナー

00年Philadelphia University’s school of Textile & Scienceファッションデザイン学科卒業後、オートクチュールデザイナー Robert Danes氏のもと4年間ニューヨークでクチュールの全てのコレクションを氏と共に作製に携わる。帰国後 yoshio kubo 05年S/Sよりコレクションを発表。

Brand詳細を見る

開催が間近に迫る25S/Sシーズン、2年ぶりにyoshiokuboがRakuten Fashion Week TOKYOへ帰ってくる。20周年を迎える記念すべきタイミングで、ブランドの総決算と位置付けるコレクションを2024年9月4日に発表する。今回のショーもブランドらしい仕掛けに満ちているようで、どんな発表を見せてくれるのか今から期待が高まっている。そんなブランドを率いて活躍を続ける久保嘉男氏に、ショーへの想いやデザイナー目線のファッション・ウィークの楽しみ方について話を聞いた。

2022A/W、2023S/Sにby Rでショー発表後、2年ぶりのRakuten Fashion Week TOKYOへの参加になりますね。ショーへの思いを聞かせてください。

ショーをやるのが美学だと思ってここまで続けてきて、この7月で50歳になったんですよ。これまでパリ含め色々な会場でショー発表してきたけど、今回はかなり変わったことをしたいと思っています。ブランド20周年にあたる節目でもあるので、こんな見せ方が出来るんだと驚いてもらいたいと思っています。ランウェイショーにはもちろん伝統もあるけど、宇宙人の視点から見たら、人間はずっと同じことしてるなと思われてそうじゃないですか。20年色々やって来た僕だからこそ出来る面白いショーを今回やるつもりなので、公開を楽しみにしていてください。

yoshio-kubo_intervew2025ss

yoshiokubo 2023 S/S collection

9月4日のショー楽しみにしていますね!ブランド設立して20年、今のお気持ちは率直にいかがですか?

20年経ってもなお洋服が好きでブランドを続けていて、コレクションを作る度に「次はこんなもの作りたい」という気持ちをずっと持ち続けています。そして様々な挑戦をしてきて、今はもっと超越したものづくりをしたいという気持ちが強くなりましたね。鳥肌が立つような圧倒的に凝ったものづくりを目指しています。

2025 S/S コレクションの構想は?

これまで自分が作ってきた洋服の総決算のようなイメージで「守破離」をキーワードに、パフォーマンスとして遠くから見ても、近くで見ても面白いコレクションに仕上がりました。ディテールの掛け合わせで洋服を作っているので、自身の制作は家具や建築づくりに近くなってきたような感覚もあります。SNSや写真では伝わりづらいかもしれないですが、洋服として圧倒的なこだわりがあるんです。素材やパターンのレシピも独自なので、どう作られた洋服なのか?と頭を悩ませながら見てもらえたら嬉しいです。

久保さんにとってショーとはどんな意味を持っていますか?

日本のブランドはパリのメゾンとは違うから、アイデアと人脈を駆使してエンターテイメントなショーをするべきだと思うんです。今やSNS上で情報が垂れ流されているのでランウェイショーをマンネリ化していると感じている人も多いんじゃないですかね。僕はそうしたショーのあり方に一石を投じていきたいと考えています。

yoshio-kubo_intervew2025ss

yoshiokubo 2022 A/W collection

注目している日本ブランドはありますか?

実際にショーを見れてはいないのですが、DAIRIKU や、mister it. は熱量があって良いブランドだなと注目しています。動画や写真だけでも面白さが伝わりますし、M A S U は売り方、コミュニティの作り方も含めて才能を感じますね。会場に足を運ぶことはしばらく出来ていないですがファッション・ウィークは動画などで毎シーズンチェックしている方です。

久保さん的なファッション・ウィークの楽しみ方は?

職業柄ついモデルの対数とか気にしてしまうのですが、何が始まるんだろうという会場ならではのワクワク感や、ブランドが見せたいエンターテイメントに触れられるのが楽しいですね。ブランドは毎シーズン30体、セットアップで60型、ドロップしているものも含めたら100型程度をコレクションとして制作しています。1点良い洋服があっただけではブランドは成立せず、一括りの束で何度も自身のテーマを提案し続けるのがブランドです。その提案の連続性や、ショーのスタイリング、順番、色、音楽、間などブランドがチームとなって細部まで計算しているということを観ている方にも知ってもらえることが出来たら良いなと思います。わざと靴紐を解かせていたり、ネクタイの絶妙な長さ、カフスの捲り方、わざわざ説明しない部分にも命をかけて作っています。
また、箱根駅伝とか出場選手の過去を紹介する番組を観ると実際の応援に熱が入るように、コレクションを発表するに至るまでのデザイナーのプロフィールをテキストや写真など理解できるような仕組みがあれば、もっとブランドのことを追う方が増えるようにも思います。見たことないような切り口で作られた洋服を見ると、デザイナーの根元の部分を知りたくなって、ブランドのファンになっていくのかもしれないと考えています。自分も今まで失敗も成功もありますが、洋服を好きで作り続けている根本には誰かを面白がらせたいからというのがありますし、他のデザイナーの根本も皆それぞれにあると思うから僕としても機会があれば聞いてみたいですね。

久保さんが今ハマっていることは?

サウナとラジオですね。サウナは新しいブランド作るくらい好きなんです笑。横浜とか川崎とか目的地のサウナまで歩いて、サウナ入って、ビールとハイボール飲んでまた歩いて帰ってますね。その道中は歩きながらラジオを聴いています。ラジオは想像力が本当に高まるんです。服を作るために色々な情報収集を常々していますが、今は落語や吉本などのラジオが情報源になってます。小さい頃ラジオ好きだったこともありますし、父から落語のテープ集をもらったこともあります。僕の作風は自分のルーツをきっかけに成しているものが多いので、今はそういう意味もあってラジオにハマってます。おすすめは全75話を課金して延々ループして聴くほど好きな「土020」。紹介した僕に感謝したくなるくらい面白いので是非聞いてみてください!

ファッションにハマってくれる人を増やすために必要なことは何だと思いますか?

観ない人も多いと言われますが、、TV媒体でファッションのコンテンツがあったらいいんじゃないでしょうか。ファッション通信のようなファッション情報番組があることは重要で、なんでこのブランドが良いのかというディスカッションする場があったら面白いですよね。昔のasayanみたいな、ブランド同士が凌ぎを削るような感じで。ブランドは、自分たちにしかないものづくりという自負がないとダメだと思います。二番手じゃダメなんですよ。丸描いてチョンみたいな服に見えたとしても、至るプロセスや背景が唯一である必要があります。丸描いてチョンを皆がパクって蔓延してしまうようなリテラシーの低い世界ではなくて、真似しない、死ぬほど過去の作品を遡って誰の洋服も真似しないことが大切なんです。日本人は誰かが持っているものを欲しがる傾向がありますが、受け手も作り手も共にリテラシーを上げていくことが必要だと思います。

デザイナーとして今後の展望は?

もう少し裏方をやっていきたいですね。これまで様々なブランドをやったりサポートしたりしてきましたが、これからは自分のデザインが余生に残ることをしたいなと思っています。同時に、若いデザイナーが羽ばたけるような場所を作りたいですね。自分の経験や悩んだことをシェアして、知見やネットワークを活用し具体的にサポートできるプラットフォームを作りたいと考えています。

Interview by Tomoko Kawasaki
Photography by Daichi Saito

Go to Top