Interview & Report

中田 優也 Yuya Nakata

中田 優也 Yuya Nakata POSTELEGANT(ポステレガント)

POSTELEGANT Designer

1988年岐阜県出身。2010年、Académie Internationale de Coupe de Paris 卒業。2011年 名古屋学芸大学卒業。2013年 文化ファッション大学院大学 主席修了。株式会社オンワード樫山に入社。2016年独立し、2017年、POSTELEGANTをスタート。

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2017年にブランドをスタート以降、着実に取引先を増やしTOKYO FASHION AWARD2019受賞後は、東京でのランウェイショーも初開催し、順調に成長を続けている「POSTELEGANT」。2022SSシーズンでは、2年半ぶりにファッション・ウィーク東京を舞台にプレゼンテーションを発表した。ルックを着用したモデルはわずかしか映らずコレクションの全容は見えない映像での配信は、もっと知りたいという欲を掻き立てられるとともに、ファッションのアプローチ方法についても考えさせられる、未来のファッション界への示唆に富んだものだった。発表の意図やブランドの現況について、デザイナーの中田 優也氏に話を伺った。

今回2019AWシーズンぶりに2回目のご参加となりましたが、参加を決められた経緯を教えてください。

ショー形式での参加だけでなく、デジタルでの配信でも参加OKになったことが大きかったですね。ポステレガントではここ数シーズン、コレクションのルック公開は、商品が店頭に並び始める直前に行っているので、ショーでの参加がマストとなるとルックの公開を先出ししなければならないというのがネックになっていて。映像作品での発表なら参加できるなと思い、今回参加を決めました。

ルックの公開タイミングを厳密にコントールされている理由は何でしょうか?

展示会を開催する際にバイヤーさんにはもちろんルックをお見せしているのですが、一般的に公開するタイミングは取り扱い時期に合わせて制限しています。自分たちのやりたいことを追求しものづくりをしていく中で、春に出したいものは春に見てほしい、なるべくオンタイムで届けたいという気持ちがあります。前から情報を見てしまうと商品ローンチまでの間に徐々に気持ちが薄れてしまうので、鮮度ある情報を見て、今コレほしい!と思っていただく楽しみを奪ってしまうと思っているんです。
また、コレクションをローンチ前に発表をする私たちのようなブランドはコピーされるスピードも本当に早くなっていて、自分たちがローンチする前に先にコピー品を出されてしまうようなこともあって。そうした中でブランド、お取引先様を守る意味もあって情報公開を制限しています。ショーをしていない展示会ベースの状態だから出来るコントロールでもあるので、今はそういう形を継続していますね。

今回公開された映像の意図や背景を教えてください。

コレクションのムードを伝えるための映像として制作しました。コロナ禍でデジタル配信をする際にショーのライブ配信映像としてランウェイ形式で発表するのはわかるのですが、映像作品としてランウェイ形式で発表することに関して個人的に違和感があって。自分だったらどんな映像にするかと考えて、間近に見られる臨場感が魅力のランウェイショーでは表現することができない、大地や波の動きなど風景や景色とコレクションのリンクを映像で表現することに挑戦してみました。服を見せることが目的なら4方向から撮影した写真がベストですし、映像の中で服を見せなきゃという思いがなかったので。
コロナ禍で各ブランドが試行錯誤して発表を続けていますが、インディペンデントなブランドが多い東京のファッション・ウィークはランウェイショーに縛られることなく、もっと多様な映像アプローチの中で発展して行ったら面白いのではと考えています。

2022SSコレクションのテーマはどのようなものなのでしょうか?

2022SSに限らず毎シーズン明確なテーマは設けていません。自分の気分に合わせて素材集めをしながらアイテムを決めて行ってコレクションを作り上げる流れです。今回は、アフリカやサバンナのような場所に行きたいという気分からスタートしました。アフリカやサバンナの土の色や水に映る質感だったり、現地のリゾートホテルでの時間だったりが着想源になっていますね。

10シーズン目を迎えたブランドのビジネス状況についても聞かせてください。

現在は国内で40弱のアカウント数があります。海外に関しては取引が始まっていたところパンデミックで一旦中止になっている状況です。ブランドスタート時からやっていることは変わっていませんが、ありがたいことにお取引先様の数が少しずつ増えてきて、出来ることも増えてきたという感じですね。
一度東京でショーをやらせてもらったとき、ブランドとしての認知が上がり、一般のファンの方もビジネスの引き合いも増え、ターニングポイントとなったと感じています。ブランドが拡大しとても良かったと思う一方で、洋服自体を触って、試着して評価してほしいという思いが生まれて。写真を見てジャッジするのではなく、実際の物体として見てほしいと思っていますね。
ポステレガントは大手のセレクトショップさんともお取引ありますが、地方の個店さんがとても多いんです。顧客さんの予約で完売してしまうこともあります。ほしいと思ってくださる方にきちんと届いて、ファッションブランドとして消費し尽くされないようにと、自分たちなりのPRやルールでやり続けて行きたいと思っています。

今後の展望についても聞かせてください。

ブランドをものすごく大きくしたいとかはなくて。しがらみを作らず、自分で全ての決定権を持っている会社の状態を維持していきたい。コレクションの作り方も出来た分を発表するというやり方ですし、数字が見えていても敢えてやらないこともあるし、ビジネスライクにならないよう、フレキシブルでいられるブランドで常にいたいと思っています。また、状況が良くなれば、海外市場にも展開を進めていきたいですね。

デザイナーとして挑戦してみたいと思うことはありますか?

触って試着してほしいと思うので、実店舗を持って直接商品に触れてもらう機会は作りたいですね。何かのついでに行けるような、都心の場所ではなくて、人里離れた場所で。洋服を買う、新しいものを見て楽しむ、ファッションを好きになるというきっかけを作れるような場所を、デザイナーとして生み出せたらと思っています。

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