青木 俊典 Shunsuke Aoki BODYSONG.(ボディソング)
TOKYO FASHION AWARD 2018受賞デザイナー
デザイン事務所で様々な経験を積み、独立後"BODYSONG."名義でのコレクションを発表。『インプロヴァイゼーション(即興性)』をキーワードとし、服だけでなくアートやデザインのプロジェクトを手掛ける。ミュージシャン、アーティスト等への衣装製作やコラボレーションワークも積極的に行っている。
[ Website ] http://bodysongbodysongbodysong.com/
[ Instagram ] https://www.instagram.com/bodysong_/
[ Twitter ] https://twitter.com/bodysong
2010年のブランド立ち上げ以来、『インプロヴァイゼーション(即興性)』をコンセプトに掲げ、インディペンデントな活動を展開してきた青木俊典氏率いるBODYSONG.(ボディソング)。インターネットカルチャーからの影響を思わせるハイブリッド感覚や、ファッション分野にとどまらない各界のクリエイターとのコラボレーションワークなどを通じて、独自の立ち位置を築き上げてきた同ブランドは、TOKYO FASHION AWARDを受賞し、初のヨーロッパでの展示、東京でのランウェイショーを行った。デザイナーとして次のステップに歩を進めている青木氏に、これまでの活動を振り返りつつ、今後の展望について語ってもらった。
BODYSONG.を立ち上げるまでの青木さんの経歴を教えてください。
中学生の頃からずっとファッションが好きで、服飾専門学校に通った後、ファッションの企業に就職しました。その会社では、便利屋のようなポジションで色々な業務に携わっていましたが、徐々に自分の手でつくることへの興味が高まり、個人的に洋服をデザインするようになりました。それを、当時新宿二丁目にあったCANDYというショップに置かせてもらっていましたが、おかげさまで買ってくれる方がたくさんいたので、せっかくならこれを仕事にしていこうと思い、自分のブランドを始めることにしました。
青木さんご自身はどんなファッションに影響を受けてきましたか?
僕が高校生の頃は裏原系のファッションが流行っていて、そこから受けた影響は大きいですね。また、コムデギャルソンやイッセイミヤケ、アントワープ系のブランドなども好きでした。僕は収集癖がかなり強く、自分が着られない女性用の服も集めていて、今でも実家に置いてあります(笑)。洋服というプロダクト自体が好きなところがあって、面白いデザインの服は見るだけでテンションが上がってしまい、手に入れなくてはいけないと思ってしまうんです。ただ、それは洋服だけに限らず、プロダクトや家具などデザイン分野全般に言えることかもしれません。
ブランドとして大切にしていることを教えてください。
ブランドのコンセプトに掲げている『インプロヴァイゼーション(即興性)』を一貫して大切にしています。例えば、Tシャツひとつとっても、従来の型にとらわれず、自分の手を動かしながらデザインを模索していくようにしています。最初の段階でアイデアやデザイン画は出すのですが、そこから方向性が変わることは多々ありますし、上がってきたサンプルをあえて切って別の形にしてしまうようなこともあります。生産の段階では工場が量産できるようなものに整えますが、最初の数シーズンは工場に出さず、自分の手でつくるということにもこだわっていました。
素材についても毎回ユニークな試みをされていますね。
そうですね。素材自体がもともと好きで、アトリエには生地が溢れかえっています(笑)。生地から自分たちで開発することが多く、普段はあまり洋服に使わないような素材も色々使っています。
ファッションに限らず、幅広い分野のクリエイターと積極的にコラボレーションされていますが、この背景にはどんな考えがあるのですか?
自分とは全く異なる考えを持つアーティストやデザイナーとコラボレートすることで、どんな結果が生まれるのかを見てみたいんです。例えば、BODYSONG.では毎シーズン2種類のルックブックを別々のチームでつくっていますが、基本的に僕は口出しせず、それぞれのチームに任せています。もともとディレクションが得意ではないということもありますが、BODYSONG.というブランドをどのように解釈してもらえるのかということに興味があるので、色々な人たちとつくり上げていくことが多くなったと思います。
TOKYO FASHON AWARD受賞ブランドとして、今年3月のAmazon Fashion Week TOKYOで初のランウェイショーを行いましたが、こちらについてもお話を聞かせてください。
これまでブランドとしてショーをやりたいと思ったことはありませんでしたが、今回このような機会を与えられ、せっかくやるならしっかり取り組んでみようという思いで臨みました。お話ししたように、これまで2つのチームで継続的にルックブックをつくってきたので、ショーに関しても同じチームで、延長線上にある表現に落とし込むことを意識しました。初めてショーをやってみて、その大変さを感じましたし、これを毎シーズン続けているブランドは本当に凄いなと改めて感じました。また、ショーをしたことによってこれまで接点がなかった方たちにもたくさん見ていただくことができ、概ね良い反応が得られたと感じています。
TOKYO FASHION AWARDのプログラムの一貫として、2シーズンにわたってヨーロッパでの展示もされましたが、海外展開についてはどんな意識を持っていますか?
以前、上海のファッション・ウィークに参加したことがきっかけで、上海では継続的に展示会を行うようになりましたが、それによって東京では得られなかった刺激をもらうことができ、年々海外への意識は高まっていました。当然、ヨーロッパでの発表も視野に入れていましたが、今回のショールーム展示は非常に良い機会になったと感じていますし、今後も継続的にヨーロッパで発表していきたいと考えています。
最後に、ブランドとしての今後の展望をお聞かせください。
やはり、海外でのビジネスをしっかり軌道に乗せたいという強い思いがあります。そのためには、海外のバイヤーに手に取ってもらうための方法をもっと模索する必要があって、クリエーション面はもちろんですが、営業力も大きな要素になるはずだと考えています。最終的には、海外のさまざまなお店に買い付けてもらうことが目標なので、今後もそこに向けて努力を重ねていきたいですね。
Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto(インタビュー撮影)