Interview & Report

大三 DYSUN

大三 DYSUN introduced by Motohiro Tanji

THIS IS MY PARTNER vol.2

福島県伊達市は、かつて繊維産業において、関東と北陸地方とをつなぐ役割を果たしてきた。特にニット産業が盛んであるこの地域で、大三は古くからの技術を守りつつ、新たなクリエイションを築き上げている。

株式会社大三
福島県伊達市/創業:1967年
事業内容:ニットの製造・卸業/従業員数:25名

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株式会社大三
代表取締役社長 三品 清重朗氏

[紹介デザイナー]
Motohiro Tanji(モトヒロ タンジ)
丹治 基浩
「作りたいものを追い求め、大三さんに出会いました。2シーズン目からずっと支えてもらっています。」

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現場で描く、唯一無二のクリエイション

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Motohiro Tanjiのコレクションを支えるニットメーカーの株式会社大三は、ニット製造が盛んな福島県伊達市に拠点を置く。
大三は、昭和42年にメリヤス加工業から事業を始め、現在はニット製品の企画・開発から製造、小売業に至るまで、多岐に渡り事業を展開している。

幅広いニーズに応えられる製品づくりを目指し、工場内には3ゲージから12ゲージまでのフルジャカード機とホールガーメント機を保有。さらに、縫製の内製化を積極的に進め、現在は95%の内製化と国内のニットメーカーの中でも、とりわけ高い内製化率を誇る。

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「下請け工場や内職さんの高齢化が進んでいる。養ってきた技術力を若い世代に継承していくために、内製化を進めることにしました」と大三の三品社長は語る。

大三は、単に内製化を進めるだけではなく、技術を若いスタッフに継承していくための工夫も怠らない。

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一つの製品に対し、裁断から本縫い、リンキングまで社員一人ひとりが生産工程の全てに携わることができる仕組みをつくっている。自ら製品を完成させられるシステムをとることで、ものづくりの楽しさを通して技術を習得できるようにしているのだ。

新卒採用も積極的に行い、社員の半数を占めるのは20代の若者たちである。

大三の取り組みは糸染めの工程にもおよび、近年は地元福島の特産品を作る工程で不要となった柿の皮や桃の枝を利用し、草木染ニットの商品開発にもチャレンジしている。

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将来的には、2011年の震災により影響を受けている福島の農家とも連携し、藍染めの原料となる蓼藍といった染料の原料づくりからのものづくりも視野に入れているそうだ。

「日本の工場だからできる、地域に根ざしたものづくりをしていきたい」

という、三品氏の言葉は大三の徹底したものづくりへのこだわりを表している。

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代々と受け継がれてきた技術だけではなく、現代に最適な形で独自のものづくりを発展させ継承させていくための知恵や工夫が、三品氏から生み出されるアイデアの節々から感じられる。

Motohiro Tanjiのデザイナー丹治氏との出会いは、そんな“ものづくりへのこだわり”が導いたものなのかもしれない。

丹治氏が描く複雑な編地に対応できる工場として、他の工場を通して両者は出会うことになった。

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「最初に丹治くんの編地を見た時、確かに複雑なものでした。手間はかかりそうでしたが、ものづくりとして面白そうだと思い依頼を受けることにしました」

と、橘内課長は当時を振り返る。

丹治氏と大三の編地作りは二人三脚で行われていて、シーズン毎に丹治氏が直接イメージ画を持って工場を訪れ、幾度も打ち合わせを重ね、最終的な編地を形成していく。

「丹治くんほどニットを勉強しているデザイナーは珍しい。だから、作り込むという作業ができる」と三品氏も橘内氏も嬉しそうに語る。

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丹治氏も大三の最大の魅力を「イメージした通りに編み立てる、その表現力」と答える。

工場とデザイナーの理想的な関係を築いている大三とMotohiro Tanji。

互いにニットを知り尽くしているからこそ成せるあうんの呼吸で、糸は彼らが思い描く立体美を形成していく。

 

Interview&Text:Shinya Miyaura (Secori Gallery)
Photography:Yohey Goto

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