INTERVIEW 08/28/2025

東京は今最も新しい才能に出会えるファッション・ウィーク!そう語る業界レジェンド二人が期待する26S/S注目ブランドとは?MIDWEST 大澤武徳氏×繊研新聞 小笠原拓郎氏

株式会社ファッションコア ミッドウエスト 代表取締役社長 / 繊研新聞社 編集委員

東京は今最も新しい才能に出会えるファッション・ウィーク!そう語る業界レジェンド二人が期待する26S/S注目ブランドとは?MIDWEST 大澤武徳氏×繊研新聞 小笠原拓郎氏

国内外のファッション・ウィークを飛び回り日本を代表するファッションジャーナリスト、小笠原拓郎氏。独自の選美眼、イベントで国内ブランドを取り扱い、熱狂的なファンを抱える老舗セレクトショップ MIDWEST を率いる大澤武徳氏。25A/W会期に引き続き、ファッション業界のレジェンド二人に前会期を振り返ってもらいつつ、今期の注目ブランド、業界動向について話を聞いた。

ショーを見ていただきましたRakuten Fashion Week TOKYO 25A/Wを振り返り、率直な印象を聞かせてください。

大澤氏_東京のファッション・ウィークはすごく活気がありますよ。次々と新しいデザイナーがデビューするファッション・ウィークって東京が今一番だと思います。パリ新しいブランドが時折登場しますが、ミラノはほとんどなく、ロンドンも昔のように若手デザイナーが次々出てくるような状況ではありません。そういう意味で東京は新鮮に感じます。とはいえ、クリエイションのクオリティに納得できるブランドがその中でどれくらいあるかっていうと疑問ではありますが、ファッション・ウィーク全体の勢いはあって、何が出てくるのかなというドキドキ感はありますね。ロンドンはなぜ新しいブランド出て来なくなったんでしょう?

小笠原氏_ファッション業界全体の問題点でもありますが、若手が自分のブランドでデビューしなくなっていますよね。大きい会社に入ってクリエーションチームの一人として飯を食べていく、そういうキャリアが主流になっているんです。パリの若手で僕自身とても期待していたデザイナー「Duran Lantink」は、この4月にゴルチェのクリエイティブディレクターに決まりました。彼が自分のブランドを継続するかはわからないですが、他企業のクリエイティブディレクターを何年かやって巨額の退職金もらって、デザイナーとしてのキャリアを終えるみたいな、そういうキャリアアップが蔓延っています。それは現在のファッション業界における世界的に大きな問題であると思いますね。日本の場合は、大きい会社に勤めた後でデビューするデザイナーも結構多いですし、そういう方を含めて自分のブランドでビジネスしていきたい人たちが他国に比べて多くて、この点はとても可能性があると思いますね。

会期前に注目されていた3ブランドのショーはいかがでしたか?

小笠原氏_僕が挙げたのは「Chika Kisada」「yoshiokubo」「TELMA」。Chika Kisada は、着実にクリエイションがステップアップしていると感じましたが、彼女らしい毒がもっと詰まっても良いのかなと思いました。エベレストにまで行って何を見せてくれるのかと注目したyoshiokuboは、思っていたショーとは少し違っていましたね(笑)。TELMA のショーは、クオリティの高さは光っていましたが、厳しい言い方をするとドレスの作り方、見せ方に現代の女性像との違和感を覚えました。

左からChika Kisada、yoshiokubo、TELMA

大澤氏_僕が挙げたブランドは「FETICO」「VIVIANO」「Tamme」。26S/Sではby Rにてショーを行うFETICOは、前回のショーに関しては僕自身新鮮さを感じなかったけれど、今また新しいファンが増えてきていますし、次のタイミングで何か変えて来そうな気がしているので引き続き注目しています。VIVIANO はらしさを継続できているショーでしたし、メンズラインが店舗でも評判が良くて、いい意味で性別問わず着てみたくなるようなコレクションに昇華されてきましたね。Tamme はブランドの見せ方としてショーでの表現が向いていると思うので、今後も継続してショーをやってほしいですね!前回見た中でも、RIV NOBUHIKO にもやってほしいと思います。

左からFETICO、VIVIANO、Tamme、RIV NOBUHIKO

小笠原氏_Tamme のショーは面白かったのですが、クリエイションとしては、もっとエッジが立っていかないといけないと思いました。センスは良いのですが、小さくまとまってしまうのは良くない。今回は残念ながらショーを行わないようですが、彼のようなブランドこそショーで服だけではない服の奥にある今の時代への視点をみせてほしかった。
FETICOChika Kisada は今まで日本人デザイナーが避けてきた、女性の身体に正面から向き合い身体をどう美しく表現するかというアプローチを行っていて、やっとそういうデザイナーが日本からも登場したなと思ってみています。ただし、このアプローチは西洋デザイナーが得意としてきた分野であり、クリエイションにおける自分の中での比較対象はアズディン・アライアになると思うんです。両ブランドともアライアを超える美しさであったり、身体と服の新しいバランスを提案することができるのか問われています。そうじゃないと世界では評価されない。

Tamme 2025 AW collection

最近注目されている日本ブランドはありますか?

小笠原氏_若手ではないですが、今日展示会に行ってきたばかりのKiminori Morishita。インドの職人3人が数ヶ月かけて手がけた29万の刺繍シャツなど、失われつつある手による技術力に対する目の向けた方やプロダクトの尖り方が素晴らしい。60歳で引退する人も多い中、61歳からまた燃えて「次もすごいの作るから!」と楽しそうに話してくれました。

国内のみならず、26S/Sシーズンのコレクションで気になったトピックは?

小笠原氏_完成されたエレガンスではない、あるデザイナーはインティメイトと表現していましたが、完璧なバランスではない表現に新鮮さを感じました。肌着をキーワードにしているブランドもいくつかあって、日本の股引に似た肌着のようなアイテムをハーフパンツから出すスタイリングなど目を引きました。The Rowのようなエレガントで美しいものを作るブランドがそういうバランスを見せていたり、SETCHUはウォッシャブルカシミアのボクサーショーツを作ってヒップハングでのぞくような感じにしていたり。部屋着や肌着を取り入れた親密さが気になりましたね。

大澤氏_僕はパリで見たdoublet. が今シーズン特に記憶に残っています。日本でもあの感じで一度ショーをやっていましたが、まさかあれをパリで、更にパワーアップしてやるとは・・・。今回のショーで、海外バイヤー、ジャーナリストからの評価が一段高くなったのではないかと思いますね。

Rakuten Fashion Week TOKYO 26S/Sで期待するブランドを教えてください

小笠原氏_実は今まで厳しい見方をしてきた「HARUNOBUMURATA」に注目しています。The RowやJil Sanderのようなデザインをしたいのかなと思っていたのですが、前回のショーでは自分らしさが出てきたように思え評価を変えました。今回どんなコレクションを見せてくれるのか楽しみです。先ほども名前を挙げましたが、世界に通用するデザインが求められる「Chika Kisada」や「FETICO」がどんな変化を見せてくれるのかも期待しています!

HARUNOBUMURATA 2025 AW collection

大澤氏_僕は審査員として選ばせていただいた「mukcyen」。当店でも取扱いのある「Chika Kisada」。常に時代感を読むのが上手い森川くんがデザイナーを務める「HUMMEL 00」ですね。

大澤さんには今年度よりJFWが主催するNEXT BRAND AWARDの審査も担当していただきましたが、いかがでしたか?

大澤氏_審査員は初めての経験でしたが、応募デザイナーの皆さん熱量の高い方が多く僕も勉強させてもらったように思っています。また、もっと多くのデザイナーが応募したら良いのにと率直に思いましたね。

審査にはどのように臨まれましたか?

「海外でも活躍できる、海外デザイナーが出来ないような視点を持ったブランド」そういうポイントで審査しました。今回の受賞ブランド「mukcyen」はファーストシーズンから弊社で取扱いしているブランドですが、デザイナーのオリジナリティ、世界観を大事にし続ければ海外で成長できるでしょう。サイズの問題も出てくるとは思いますが、海外の方がむしろ伸びる可能性もあると思っています。店舗での売れ方を見ていても、日本のお客様はデザイナーを好きでブランドを応援したい方も多くいらっしゃいますが、海外のお客様は純粋に洋服を見て「他にはない感じ!」とラック前で足を止めて選ばれていますね。

MIDWESTで海外のお客様に人気のブランドは?

mukcyen 以外ですと Chika KisadaODAKHAtanakadaisuke ですね。まだ取扱いはしていないのですが、pillings も前回ショー拝見してオリジナリティの高さに魅力を感じました。直近東京の店舗でTAAKK のイベントを開催したばかりなのですが、新しく始まったウィメンズ含めてとても調子が良い。素材使いやテクニックに魅了される方が多く、プロパー消化率も非常に高いです。デザイナーの「伝えたい想い」も深いですし、パリでのショーも日本バイヤー探すのが難しいくらい海外バイヤーが並んでいます。中国版InstagramのREDでも熱心に発信していて、コツコツ続けることと新しい挑戦を重ねること、双方がかみ合っているから上手く行っているブランドだなと思って見ています。

pillings 2025 AW collection

大澤さんの目から見て、今日本のブランドに必要なこととは?

物価が上がり、日本ブランドの商品も値上がりしていますが、良いものを買いたいと思うお客様は増えています。背景にあるものの良さを僕たちもしっかり伝えていきたいですし、デザイナー自身も店頭に立ってリアルなコミュニケーションをしてもらえたら嬉しいですね。また、これだけ気候が変化して来ているので、デリバリーのタイミングを考慮した商品MDを検討するのも有効かもしれません。6月、7月にAW立ち上がりとしてアウターを打ち出すのは、この環境下では厳しく、Tシャツやバッグ等の小物類の方が動きは早い。12月納品で気の利いたニットやダウンベストがあっても良いと思いますし、今すぐ着用できるアイテムで次のシーズンカラーだったら欲しいという売れ方があり、こうした消費者目線のアイテムを用意することでビジネスが上手く回っていくこともあると思います。

Takenori Osawa / Takuro Ogasawara

大澤 武徳 / 小笠原 拓郎
大澤 武徳
株式会社ファッションコア ミッドウエスト 代表取締役社長
1968年5月10日生まれ。
創業48年を迎えるセレクトショップMIDWESTの2代目。
東京、名古屋、大阪に店舗を構え国内外のバイイングやデザイナーとの交流による独自の別注やイベントを行なってきた。

小笠原 拓郎
1966年、愛知県生まれ。92年にファッションビジネス業界紙の繊研新聞社に入社。95年から欧州メンズコレクションを取材する。2002年から欧州とニューヨークのウィメンズコレクションの取材も担当するなど、30年近くにわたり世界中のファッション事情を考察し執筆している。これまで見てきたファッションショーの数は1万5000を超え、まさに日本で一番たくさんのファッションショーを見てきたファッションジャーナリスト。そのキャリアを通じて培った審美眼から生まれる批評が、読者からの高い信頼を得ている。